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土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDを見てなんやかんやいうブログ

「第18回 東京03単独公演「明日の風に吹かれないで」」(2017年2月22日)

2016年7月から10月にかけて、全国15ヵ所(全33公演)を巡った単独ツアーより最終公演の模様を収録。結成十五周年を目前に控え、もはや円熟の粋に達している東京03の安定したパフォーマンスを楽しむことが出来る。結婚式の最中に花嫁を奪われてしまうという悲劇を笑いに変えようともがき苦しむ元新郎の姿を描いたオープニングコント『新郎と友人』、平社員の提案を突っぱねた主任が部長のまったく同じ内容の提案をあっさりと受け入れてしまうダブルスタンダードな態度を言及される……かと思いきや……『同意見』、漫画家になる夢を諦めて実家に帰ろうとしているのになかなか電車が来てくれない男が最後に残そうとした言葉にアシスタント仲間たちの批判が飛び交う『夢破れて』など、人間の見栄や建前などが複雑にこんがらがった状況を巧みに笑いへと昇華させている。

その中でも『蓄積』の展開には驚かされた。自宅でタコ焼きパーティを開く準備をしていた飯塚だったが、買い出しに出かけた角田はまったくケータイに出ようとしないし、ゆったりと遅れてやってきた豊本は「銀だこ」を買ってきてしまうし、誰もきちんとやってくれない。とうとう我慢の限界に達した飯塚は戻ってきた角田のことをビンタした挙句、突っ伏して号泣してしまう。豊本の証言から状況を把握した角田は、自分に手をあげた飯塚のことを言及し始める。しかし飯塚は「今日だけじゃない! 長年の蓄積だよ!!!」とこれまでにもさんざん苦労させられてきたことを訴え、二人に対して“怒りの蓄積”を理由に更なる暴力に打って出る……。共感せざるを得ない状況から巻き起こる不条理な展開に、笑いが止まらない。随所に見受けられるアドリブも最高だ。だが、なによりも目を見張ったのは、さんざん暴れ回った飯塚に角田が終盤で言い放つ、とんでもない台詞である。本当にとんでもない台詞なのだが、まったく理解できないわけではないニュアンスなところが、実に恐ろしい。なるほど、逆の立場からしてみれば、そのように捉えられなくもない。……だが、それでもやはり、とんでもない。

毎回、完成度にムラがあるオークラ担当の長尺コント『海の見えた家で』も、今回は上々の出来。会社を辞めて田舎にマンションを買ったという角田に、「海の見える家を買ったから、来いよ!」と誘われた飯塚と豊本の二人。ところが、わざわざ東京から二時間かけてやって来た二人が目の当たりにしたのは、海が見えていた筈の景色を塞いでいる工事中のマンションだった。それなのに角田は、まるで今でも家から海が見え続けているかのように振る舞おうとするので、その姿に飯塚は段々と恐怖心を抱き始める。これまでの東京03が長尺コントで見せていたような、複雑な三角関係が織り成すナンセンスな人間ドラマとは違い、うっすらと緊張感溢れる空気が漂う様がたまらない。普段はコメディアンとして着実に笑いを生み出している角田さえ、その本音をブチ撒ける場面で錯乱する姿は完全にシリアルキラーのそれであった(なのに笑えるところが角田のどうしようもないほどにコメディアンたるところ)。御都合主義的なキャラクターに仕立て上げられた豊本の扱いを惜しいと感じなくもなかったが、後味の悪くないスッキリとした秀作だった。……次の公演では、きっと豊本もイジられる対象になるのだろう。楽しみである。

これらの本編に加え、特典映像として10月7日から9日にかけて開催された東京での追加公演(全五回)の終演後に行われた“おまけ公演”の模様が収録されている。今回のおまけ公演は「千秋楽までに「東京03っぽくない」新作コントを一本完成させる」という企画モノ。三人が一本のコントを完成させるまでの行程を舞台上で再現しようという試みである。とはいえ、そこは芸人がやることなので、マジメなドキュメンタリーのようには進まない。飯塚と角田がファミレスでネタを考えている姿を再現している隣で豊本が自宅で愛犬と戯れている様子を再現したり、オークラが考えてきたネタ案を読みながら本気のトーンで笑い合ったり、豊本が過去にイベントのために書いたという台本を演じてみたり、素の状態に近い彼らの和気藹々とした姿を楽しむことが出来る。ショートネタブーム時に作った短い歌ネタ、飯塚の結婚式の披露宴で角田が熱唱したマジ歌など、彼らの歴史を感じさせられるワンシーンもあり、03ファンには垂涎の内容といえるだろう。角田とオークラによって語られる音楽担当・カンケとのエピソードも素晴らしい。

これまで数々の名作を世に送り出してきた東京03による、紛うことなき「最高傑作」である。是非、ご賞味を。

■本編【108分】

「キャスト紹介「明日のリコーダー」」「新郎と友人」「オープニング曲「明日は風が吹くみたい」」「同意見」「どこにでもある昔話」「夢破れて」「新設定」「後継者」「Life Of Many Colors」「蓄積」「チクセキマン 結婚式での出来事」「プロポーズの返事」「約束しよう。」「海の見えた家で」「エンディング曲「僕等が留まっている理由」」

■特典映像【87分】

「明日の風に吹かれないで」特別追加公演「愛を歌うミュージシャンの葛藤」

■音声特典

東京03によるコメンタリー(特典のみオークラが参加)」