白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「R-1ぐらんぷり2017」直後の鬱屈を吐いてみる。

「面白いって、なんだろう?」。お笑いを真面目に見るようになって十数年、今頃になって、そんなことを真面目に考えてしまった。優勝した芸人のことは嫌いじゃない。ネタも笑った。優勝したことそのものに関しては不満もない。でも、何かが、しっくりきていない。その理由はなんだろう。自分が好きな笑いが評価されなかったからだろうか。確かに、レイザーラモンRGルシファー吉岡、マツモトクラブがさほど評価されなかったことは、私の心をひどく冷たくさせた。でも、笑いの量に関していえば、最終決戦に進出を決めたファイナリストたちのネタの方が多かった。そして、私の思考は、最初の疑問へと戻ってくる。「面白いって、なんだろう?」。笑えればいいのか。それだけでいいのか。これが漫才であれば、それでいいとも思えるだろう。漫才は他の演芸に比べて圧倒的に笑いに特化した演芸だからだ。事実、歴代のM-1王者を見ても、NON STYLEパンクブーブーのように笑わせることだけに特化したコンビの名前が刻まれている。だが、R-1ぐらんぷり、もといピン芸の世界において、笑わせることだけに特化したパフォーマンスばかりが評価されて、独創的な切り口や卓越した表現方法などがおざなりにされてしまうというのは、どうなのだろう……と、ここまで考えたところで、「別にいいんじゃないですか? 笑いに特化したパフォーマンスが評価されずに、重厚な演芸ばかりが評価されるというのも、それはそれで不健全というものですよ」という反論が自分の中に浮上してきたので、成程と納得することにした。