土曜深夜の視聴覚室

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「バカリズムライブ「類」」(2016年11月23日)

バカリズムライブ「類」 [DVD]

バカリズムライブ「類」 [DVD]

 

2016年6月23日から26日にかけて草月ホールで行われたライブを収録。

「類」というライブタイトルを見て、最初に思い出したのはラーメンズのコント『無類人間』だった。『無類人間』は、用途を与えられないと何をすればいいのか分からなくなってしまう人たちを描写した社会派コント『無用途人間』の設定を更に掘り下げたネタで、"哺乳類”“男性類”などといった“類”を与えられることで生物としてのアイデンティティを確立していく人たちの姿を描いている。ラーメンズのブレーン・小林賢太郎とは旧知の仲であるバカリズムのことなので、ひょっとしたら彼らを意識して……というのは、些か勘繰り過ぎというものだろう。

そもそも、このライブタイトルは、「類(るい)」ではなく「類(たぐい)」と読むらしい。ライブのプロローグで、バカリズム自身がそう説明している。音読みではなく訓読みである。……だからなんだといえば、だからなんだという話なのだが。ところで、このプロローグというのが、なかなかに挑戦的である。何がどう挑戦的なのかというと、この男、ライブについてやたらと自画自賛を繰り返すのである。まず、ライブタイトルである「バカリズムライブ「類」」の素晴らしさについて語り、ココ・シャネルの名言を引用しながらオシャレなチラシについて語り(DVDのパッケージと同じヤツ)、シンプルな舞台美術から漂う孤高感について語り……これでもかと図々しくも喋り続ける。『キッズ・リターン』の名台詞とともにツッコミを入れたくなるが、言うまでもなく、これもまたバカリズムの意図するところである。ここから更に、「類」に関する話へと展開するのだが……まあ、その辺りは、実際に見てもらうとして。

肝心のコントだが、これがまぁーっ……小憎らしいほどに面白い。ここ数年で一番面白いライブになっていたのではないだろうか。確認はしてないけれど。そう思わせられている時点でバカリズムの勝ちである。敗北者である我々は、ただひたすらに腹を見せる服従のポーズのまま恍惚の表情を浮かべるしかない。……いや、そもそもの話、勝負ですらないのだが。

一本目のコント『友達の類』。これがいい。実にいい。端的に説明すると、“リア充”を憎んでいる非リアな友人に、自分がリア充であることを告白するコントである。わざわざリア充であることを友人に告白するというシチュエーションだけでもナンセンスで面白いのだが、その理由が「後ろめたさ」からきているというのが、また面白い。要するに、自らが友人が憎んでいるリア充であることに後ろめたさを覚え、その罪を告白し、謝罪しているのである。でも、実際にやっていることだけを見てみると、まったくの無害。この落差が、現実におけるリア充が抱かれている嫌悪感への風刺として、上手く表現されている。そこにあるのは、単なる僻みでしかない……と、結論付けさせようとしておきながら、思わぬオチで印象が大逆転。一本目に相応しい、分かりやすくてパンチの効いたコントである。

これ以降のコントも、なかなかに素敵なネタが続いている。手品師が手品ではなくトークを披露し続ける『手品の類』、「会社を辞めたい」と願い出た社員が上司に辞めたい理由をプレゼンし始める『上司の類』、革ジャンにサングラスという典型的なロックシンガーが自身の方向性の紆余曲折を自作の楽曲とともに振り返る『反逆の類』など、どのコントもなにやら人を食ったような内容のものばかり。これらのコントの幕間を埋める映像も完成度が高い。学校教師に扮したバカリズムがとある基準で出席を取る「教師の類」、昔話に似ている自身のエピソードを紹介する「類物語」、サッカーボールと様々な関係にある人たちのドロドロとした関係性を描いた「ボールは誰の何の類」など、コントにも引けを取らない完成度の映像が作られている。地味に「思い出の類」が好きなんだよなあ……ほぼバカリズムの顔芸みたいな映像だけど……。

ただ、本作を語る上で、忘れてはならないのは、やはり最後のコント『40LOVE~幸福の類~』だろう。このコントの主人公は、恋人も妻も持たない独身男・オカバヤシテルヒサ。40歳を過ぎて、出会う機会も少なくなってしまった今、彼はもはや結婚することを諦めてしまったという。しかし「幸せ」そのものを諦めたわけではなかった。彼は「幸せ」になるために、物理的な結婚を諦めて、精神的な結婚をすることにしたのである。それは、とどのつまり、「想像で作り上げた妻とともに生活する」ということだった……。このライブが行われていた頃、まさに40歳の独身男性だったバカリズム。このコントに反映されているのは、彼の思想、信念なのかもしれない。そして、それは事実、とても楽しそうに見えた。想像で作り上げた妻との慎ましくも愛おしい日々。だが、ふとした瞬間、その想像上の日々は脆く崩れてしまう。その空虚感、哀愁たるや。このコントを、バカリズムがどのような気持ちで作り上げたのか、まったく分からない。ただ、まさに当事者である彼の、なんともいえない凄味のようなものがじわじわっとにじみ出ていた、実にオソロシイコントであった。

特典映像は無し。だが、充実感はスゴい。あと、RAM RIDERが手掛けたオープニングテーマ『そういう類の歌』が、コントライブのテーマソングとは思えないほどにムチャクチャ格好良いので、そこもしっかりと味わってもらいたい。いや、マジで、RAM RIDER氏、あれ音源化しませんか。

■本編【95分】

「プロローグ」「オープニング」「友達の類」「教師の類」「手品の類」「類物語」「上司の類」「おまけコーナー こんな上司はいやだ!(見せそびれたやつ)」「正義の類」「ボールは誰の何の類」「背徳の類」「類物語」「反逆の類」「思い出の類」「40LOVE ~幸福の類~」「エンディング」