白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「じわじわチャップリン」(2017年2月11日)

「チューリップの歌」。幼稚園の先生になりたかったというかんざきが、きちんと子どもたちを楽しませるための曲を歌えるかどうかを確認してもらおうと、相方の川口に『チューリップの歌』を聴かせるのだが、その音程が何処かおかしい。大きなズレではなく、原曲と少しだけ違っている(マイナーアレンジ?)という微妙なズレが、ほのかな違和感を生み出していて、たまらなく面白い。しかし、このネタが凄いのは、そんな微妙なズレの面白味を最後まで貫いているところにある。その異様な音程に対して確固たる自信が無ければ、とても成し遂げられる所業ではない。実際、面白かったのだが、とはいえ同じボケを延々と繰り返しているだけと捉えることも出来るので、観客にどう評価されるのかは最後まで分からなかった。合格していて一安心。あと、これは完全に余談だが、かんざきの『チューリップの歌』の妙な引きの強さに終始戸惑いの表情を浮かべていた川口が、最後に「どうもありがとうございました」と言って客席に頭を下げる直前に一瞬だけ凄いドヤ顔を見せていたのが、ちょっとだけ面白かった。

 

「引っ越し」。二週勝ち抜き。引っ越し当日、ワンルームだと思って住んでいた部屋に別の部屋があったことが発覚する。リアルタイムで観賞している際に「傑作だ!」と感動し、後になって録画で確認した際にも「やっぱり傑作だ!」と感心させられたネタである。パソコンやファックスのような複雑な機能を持つ電化製品に起こりがちな「うっかり見逃していた機能を発見したときの驚き」を、上手く自宅に置き換えて表現したコントだ。金子によって部屋が発見されるまでの流れもさることながら、部屋を発見した際の阿諏訪のリアクションが素晴らしい。あまりにも驚くべき事態に遭遇したとき、人間は即座にリアクションを取ることが出来ないものなのだなあと、しみじみと思わせられた。「俺、前室みたいなところで、八年居たのー!?」というコメントも最高だ。向こうの八畳、失くした財布の発見、東京湾の花火と、だんだんと部屋の輪郭が明確になっていくのも良い。惜しむらくは、オチを少し急ぎ過ぎたように感じたところか。少し間を空けて、じわっとオチの言葉を口にしていれば、もうちょっと魅力的なオチになっていたと思う。それにしても……点数が低い! こういう想像力を引き立てるタイプのネタは一般ウケしづらいのだろうか。三週連続勝ち抜きでチャンピオン大会出場決定。

 

【ふきだまりコーナー】

インポッシブル、えんにち、ワールドヲーター、カミナリサンシャイン池崎、下村尚輝、すゑひろがりず、ばーん、なすなかにし、センサールマン、ペコリーノ、プラス・マイナスが登場。「あま~いギャグ」というテーマの元、カミナリ、すゑひろがりず、インポッシブルがギャグを披露した。すゑひろがりず、緊張からか甘噛みしていたが、本ネタはめちゃくちゃ面白いコンビなので、早く本戦に登場してもらいたいところ……。

 

「大きなカブ」。「オジンオズボーン」を「イジンイジビーン」と本場の発音で喋ることの出来る篠宮が、そんな本場の発音で『大きなカブ』のストーリーを語り始める。『大きなカブ』のストーリーをなぞるように展開しているシンプルな漫才が、「イジンイジビーン」システムによって包み込まれることで、まったくの混沌世界に変貌を遂げている。その意味の無さ、バカバカしさがたまらなく面白いのだが、発言の意味がよく分からない状態で同じような作業が延々と繰り返されているため、中盤辺りで飽きがきてしまう。高松のツッコミが上手くフォローしているが、説明が入ってしまっている時点で、序盤の破壊力はすっかり弱まってしまっている。実に勿体無い。このどうかしているとしか思えない発想自体は悪くない(むしろ好き)ので、何かしらかの改善を施してもらいたい。まあ、そこまで固執するようなシステムかというと……うん。

 

「ものまね大連発」。お馴染みの「ものまね芸」。今回の放送では「誇張しすぎたPPAP」「誇張しすぎたパッション屋良」「ヒロシ」「誇張しすぎた麒麟の川島」「誇張しすぎた長嶋監督」を披露した。やっていることは基本的にいつもと同じ。見て、大笑いして、すぐ内容を忘れさせてくれる、素晴らしき意味の無さ。特に、最後の最後に登場した、誇張しすぎた長嶋監督は凄かった。じんわりと錯乱しているようにしか見えない。あと、最初は目を閉じているのに、途中から目を開けるところが、地味にたまらないんだよなあ……。

 

【今週のふきだまり芸人】

イヌコネクション「初バイトにイタズラ」

インポッシブル「ゾンビ映画

 なすなかにし「じゃんけん」

 

次回の出場者は、えんにちオジンオズボーン(一週勝ち抜き)、てんしとあくま(一週勝ち抜き)、ハリウッドザコシショウ(一週勝ち抜き)。