白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「TRENDY ANGEL WORLD TOUR “JapeeeeeN!!”」(2016年10月26日)

M-1グランプリ2015」覇者、トレンディエンジェルが2016年4月から8月にかけて全国八か所(全九公演)を巡った全国ツアーより、8月14日に銀座ブロッサムで開催した千秋楽の模様を収録。

優勝直後の全国ツアーということで、全体的にお祭り騒ぎの様相を呈している。オープニングではバックダンサーを率いた斎藤司が歌と踊りのパフォーマンスで持ち前の美声を響かせて、観客を大いに盛り上げてみせる。普段はツッコミのたかしも、この時ばかりは野暮な気持ちを脱ぎ捨てて、クールに踊るダンサーたちとともにリズムに乗りまくる。まさに一世一代の晴れ舞台といったところ。

その後も、バラエティに富んだ企画が満載だ。様々な分野で活躍する“サイトウさん”と斎藤さんが舞台上で女子高生の間でブームとなっている「斎藤さんゲーム」を再現したり、斎藤さんの秘められた過去が明らかになってしまうドキュメンタリー「斎藤さん母校へ帰る」が上映されたり(割と感動できる内容だから油断ならない)、思わぬタイミングで彼らの出世作である『ハゲラップ』が始まったり……ポップで楽しく、ご陽気に。そんな彼らの魅力を存分に堪能できるラインナップとなっている。

だが、トレンディエンジェルの魅力を最も体感できるのは、やはり漫才だ。本編では四本の漫才が披露されている。「子どもがなりたい職業としてYouTuberが上位に選ばれている」という話題から、二人がやってみたかった職業の話を始める『将来の夢』。裁判所前での「勝訴」、痴漢冤罪の現場、裁判長に無実を訴えかける弁護士……などなど、法律に関するネタのアラカルト『裁判』。斎藤さんが「おかあさんといっしょ」に対抗、新しい子ども向け番組を企画する『斎藤さんといっしょ』。「医者になれば自分で自分を治療できる」という理由で斎藤さんが医者を志す『医者になりたい』。いずれのネタも、普段と変わらぬ確かなキレ味を見せている。

とりわけ時事のブッ込みぶりには舌を巻いた。お得意のハゲを活かしたボケや斎藤さんのナルシストギャグが炸裂している流れに、キングオブコメディ高橋、高知東生福山雅治吹石一恵夫妻の家に侵入したコンシェルジュなどなど、ニュースで話題になった人たちの名前をさらりと投げ込んでくる。この時事ネタの雑な放り込み方にこそ、トレンディエンジェルの漫才が如何に軽妙洒脱であるかが表れている。どんなことを言おうと、どんなことをやろうと、彼らは無責任にそれを笑いへと昇華してしまうのだ。芸人の地位が無闇に向上してしまっている昨今、トレンディエンジェルは漫才師として正しい道を歩んでいるといえるだろう。

ちなみにコントの出来は……ご愛嬌ということで、ひとつ。

個人的には、たかしの魅力がもうちょっと引き出されていれば完璧だったのだが(全体的に、斎藤さんに寄せ過ぎていたように思う)、その辺りはきっとリリースされるだろう次回作に期待したい。優勝後の祝賀パレードとしては百点!

■本編【90分】

「オープニング」「漫才:将来の夢」「“サイトウ”さん→斎藤さんへMESSAGE」「コント:コンビニ」「“サイトウ”さん→斎藤さんへMESSAGE」「漫才:裁判」「コント:ピクつく言葉」「斎藤さん 母校へ帰る」「コント:GTO」「続 斎藤さん 母校へ帰る」「漫才:斎藤さんといっしょ」「続続 斎藤さん 母校へ帰る」「斎藤さんゲーム」「漫才:医者になりたい」「エンディング」