土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDについてなんやかんやいう

「M-1グランプリ2016」準々決勝敗退者・感想文(2016年11月7日・大阪)

準々決勝を見た人向け。東京予選はこちら

「婚約破棄」。ガンで余命半年の男がウソをついて恋人との婚約を破棄するという本を読んで感動した田邊が、池田に「お前に出来るか?」と問い掛ける。基本的にはボケ→ツッコミ→軌道修正→ボケと丁寧な漫才コントが展開されているが、だんだんとウソをついて婚約を破棄するという設定に苦しみ始める池田と、そんな池田に檄を飛ばす田邊の熱量の高いやりとりがたまらなく面白い。また、だからこそ終盤のドイヒーぶりが笑える。

「めがねが欲しい」。「めがね欲しいなと思ってる」「三つぐらいあった方がええかな」という石井に対し、「顔も三ついるってことやね」といってのけた安田が、両サイドをどんな顔にするか考案する。不条理な設定を拒否することなく受け入れる展開にシュールを期待させられたが、実際は芸能人二人と石井の組み合わせで笑わせる大喜利色の強い漫才。悪くはないが、これほどトリッキーな設定を掲げていながら、分かりやすい笑いに落ち着いてしまっていいのか?と。ただ、二人のローテンションなやりとりは好き。

「謝るように説得する」。小学生だった頃にケンカした女子が謝る前に転校してしまったことを後悔しているという岡下、もしもタイムマシンがあれば当時の自分に謝るように説得するのに……。真っ直ぐ小学生時代にタイムスリップせずに、まず博士が開発しているタイムマシンに勝手に乗り込むくだりから始めるという映画のような展開から始まるところがいい。無駄な要素なんだけど、だからこそ内容に厚みが出る。かといって、肝心の小学生時代の描写もおざなりになっていなくて、ちゃんと描かれている。笑いの密度という意味ではビミョーかもしれないけれど、世界観はかなり良かった。あと、なんとなくアルコ&ピースと合いそうな気がする。

  • ラニーノーズ(よしもと)

「外国人ミュージシャンのライブに通訳を置く」。外国人ミュージシャンがライブで喋っている内容を大半の客は理解していないだろうから、ちゃんと楽しめるよう横に通訳を置いてみる。英語の歌詞を直訳することで、本来の意味とは違った翻訳になってしまうズレをテーマにしたネタ。正直、まったく同じことをカバーでやっているミュージシャンが既にいるので、新鮮味はない。ただ、ミュージシャンのジャマをするように、通訳がグイグイと入ってくるところはちょっと面白かった。……でも、セクシー=壇蜜はちょっと無難なところを狙い過ぎじゃないか?

「値切り」。値切り交渉に来た客に対応する家電量販店の店員を描いた漫才コント。自分に対して気があるような態度を取る客(木尾)に心を奪われてしまった店員(吉田)が、言動次第でどんどん金額を変えてしまう。ネタとしてはあまりにもありがちで、新鮮味も深みもないが、ベタな笑いを丁寧に演じることでしっかり笑いはもぎ取っている。とんでもない直球といえるのかもしれない。あと、客との会話の中で、店員がしれっと漏らす本音を漏らしているくだりがちょっと面白かった。

  • 見取り図(よしもと)

「魅力的な大人になるために」。女性にモテるために魅力的な大人になりたいという盛山にリリーが様々な助言をするのだが、内容がどうかしている。純然たるしゃべくり漫才。助言内容のすっ飛び具合もさることながら、盛山の雑なツッコミも印象に残る。モヒカンの女性を紹介されそうになって「女はどこもモヒたらあかんように育てられとんねん!」の言い方よ。終始、そういう感じで全体的に万遍無く面白いのだが、逆に山場と呼べるような場面が見受けられなかった気も。

  • マユリカ(よしもと)

「お年寄りとお話し」。腕の骨を折って入院していたときに隣のベッドにいたおばあちゃんと仲良くなったという中谷に対して、自分も同じ状況だったら同じことが出来ると豪語する阪本が、本当に仲良くなれるのかコントで確かめる。優しいおばあちゃんに言動が気持ち悪いヤツが絡んでくるという理不尽な漫才コント。ただ、阪本の気持ち悪さが、周りが見えていないヤツというか、他人との距離の取り方が分かっていないヤツというか、とにかく妙に説得力があるダウナーさがとてもいい。

  • からし蓮根(よしもと)

「コワい人とぶつかったときの対処法」。コワい人に絡まれることを恐れて“歩く行為”をやめたいという松本が、パッと逃げればいいという杉本の助言を受けて、コワい人とぶつかった状況をシミュレーション。ありがちな設定・ありがちな構成なのに、ナナメ上へと突き進むボケに目を奪われる。センスの方向性は「だよね~」のスタイルを始める前の風藤松原に似ているかも。そんなボケを受け止める杉本の熊本訛りの残ったツッコミも印象的。「警察署を大爆笑で揺らしたいとや?」のとんでもなく深い味わいを見よ。たまらんな。

  • ジュリエッタ(よしもと)

「ピンチの状況でも楽しめ」。最近、楽しいことがないという井尻に対し、思春期こじらせてそのまま大人になったような藤本が自論をレクチャーする。正直、ネタの内容は殆ど頭に入ってこなかった。全体の軸となるべきテーマが曖昧だったからだ。では、面白くなかったのかというと、これがなかなか面白かった。常に妙なテンションで喋り続ける藤本のキャラクターが漫才全体を支える屋台骨としての役割を担っていたためだろう。もし、ちゃんとした軸を作ることが出来るようになれば、もっと面白くなるに違いない。ただ、軸を作った途端に、この藤本のキャラクターが控え目になってしまう恐れもあるが。難しいところだなあ。藤本は元「ソーセージ」。

「誕生日にディナーへ」。奥さんの誕生日に夜景の見えるレストランのディナーへ連れていく。奥さんはどういう人か、どういう店に行くか、どういうサプライズを準備するか、そういった要所要所でボケを組み込むベーシックなスタイルの漫才。このコンビならではのセンスをぶち込むというようなことは一切せず、シンプルに笑いを取っていて、確かに面白いのだが、M-1で見る漫才としては些か物足りない。この方向性は、キングコングNON STYLEが極みの領域に到達してしまった感があるので、あえてそこへ突入するのはなかなかの茨の道。頑張ってもらいたいところではあるが、果たして。

  • ミキ(よしもと)

準決勝進出。

  • デルマパンゲ(よしもと)

「3」。最強の発見をしたという迫田によれば「3+0=4」になるという。果たして、その方程式とは。本来ならば、モノの数を表現するためだけに用いられる数字を図形的に解体し、再構築するという不可思議な漫才。例えば、数字の意味では「8」の半分は「4」だけど、「8」を真っ二つにすると「3」のカタチになるから「4=3」になる……と言い張ってみせる。一見、それはムチャクチャな発想なのだが、図形的に数字を解体して本来の意味から脱却させるという手法は本来の意味に捉われない子供の発想に近く、まったく理解できないこともないレベルに留まっている。だから、観客は完全に置いていかれることなく、とはいえムチャクチャなことを断言している迫田の方法論で笑いが起きる。しかも、それをホワイトボードやスケッチブックなどで描くことなく、口頭での説明だけで成立させている。これはもう、とんでもないことをやっていると言わざるを得ない。偶然の産物なのか、それとも他のネタもこれほどにとんでもない内容なのか、私は知らないが……いずれにせよ彼らが要注意コンビであることには違いない。いやー、凄い。本当に凄い。

  • 吉田たち(よしもと)

「休みの日の過ごし方」。双子だからと休日も一緒に過ごしていると思われがちだが、それぞれまったく違った過ごし方をしているらしく……。基本的には、休みの日に古着屋へ行くことが多いというゆうへいに対して、カッコつけているのではないかとこうへいがイジるやりとりで構成されている。そのやりとりの随所に双子ならではのボケが盛り込まれているのだが、これが割とありがちな双子ボケではなく、ちょっと見せ方を工夫した双子ボケになっていて、非常に面白かった。特に『君の名は』と試着のくだりは「ああ、確かに!」と妙に納得しながら笑った。その流れからの、ちょっと予想していなかったオチにまた大笑い。

  • ラフ次元(よしもと)

「プロポーズ」。そろそろ結婚を考えている空が、プロポーズのタイミングやお父さんへの挨拶の方法を既婚者の梅村から別のモノに置き換えて教わる。例えば、プロポーズまでの「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」の流れを、「ハンバーガー」「チーズバーガー」「ビックマック」と表現してみせる。この梅村の例えだけでも非常に面白いのだが、その構図を理解できずに、間違った例えを出してしまう空もまた面白い。なんなら、例えに入る前の段階だけでも、そこそこ面白い。地の喋りがしっかりしているからだろう。ここは普通にゴールデンタイムのネタ番組でも十分に通用しそうなので、今のうちに各テレビ局は抑えておいた方が良いのではないかと思う。余計なお世話。

「鼻とメガネの気持ち」。メガネがズレたときに鼻の動きだけで元の位置に戻そうとする人がいる。その時のメガネと鼻の気持ちになってみよう……と、一応はテーマを書き記したが、結局はいつもの天竺鼠である。従来の漫才のイメージを踏み台にした、徹底的ナンセンス。なにせ、いきなりセンターマイクには辿り着けないし、双子の姉妹だと大胆な嘘をつくし、相方からのフリを完全に理解しているように説明しておきながらそのフリには対応できないし、もうハチャメチャだ。しかし、何が恐ろしいって、結成十三年目でここまでハチャメチャなことが予定調和になっていないところが恐ろしい。実際問題、ハチャメチャな川原のボケは常に的確に面白いし、それに新鮮に驚く瀬下もしっかりと機能している。このまま最期まで突っ走り続けるのだろうか。……否、突っ走り続けてほしい。

  • プラス・マイナス(よしもと)

「イメージでパンパンゲーム」。兼光が趣味で作ったゲーム「イメージでパンパンゲーム」を二人でやってみる。ゲームの中にモノマネのきっかけやボケが組み込まれているのだが、肝心のゲームのリズムが微妙にズレていて、笑いに集中できない。後半は兼光のモノマネショー。正直、漫才と呼べる代物ではなかったような気もするが、この噛み合わないムチャクチャさこそ彼らの持ち味という気も……いや、うーん……。

  • 馬鹿よ貴方は(オフィス北野)

ウルトラマン」。ウルトラマンが好きだという新道とウルトラマンを自称するファラオが、ウルトラマンバルタン星人になって戦う。三回戦の『蕎麦屋』を見たときはどうなることかと思ったが(悪い意味で自由過ぎ)、こちらはちゃんと面白くて安心した。ウルトラマンに扮したファラオの自由なボケがたまらない。特に後半、ちょっとドラマ性のあるシーンを強引に押し込んできたのには笑った。なんだその伏線回収は。あと、忘れてはならないのが、ディティールの細かさ。ウルトラマンバルタン星人の戦闘シーンに突入すると必ずファラオが『ウルトラマンの歌』を歌い、新道がバルタン星人の鳴き声を真似る。この細かい描写が、ネタそのものの面白さをより引き出している。いい漫才だった。面白さの点では落とされるわけがないから、落選の理由はきっと円谷プロの版権関係だろう。いや、知らんけど。

準決勝進出。

準決勝進出。

「ロボットを買う」。ラストイヤー。ロボットを買いに来たヤナギブソンが店員のお~い!久馬に薦められたのは、リモコンによるボタン操作で動く浅越ロボ。大喜利的なボケで小まめに笑いを取る久馬のリモコンボケ、説得力のある動作性で笑いをもぎ取る浅越の動きボケ、それらを的確に処理するヤナギブソンの三者三様の魅力がのびのびと。後半の便器のくだりが下品になっていないのも凄い。「明日や! 明日の分やねん、それは!」には笑った。ただ、これは完全にコント。

  • 武者武者(よしもと)

「寿司屋の大将」。お寿司屋さんの漫才コント。軽いギャグを挟みながらもスパッと漫才コントに突入したので「すわっ、サンドウィッチマンばりの漫才コントが始まるのかっ!?」と期待したのだが、いざ始まってみると、リズムよりもねとっとしたボケに軸を置いたネタで少し残念。とはいえ、珍奇な発想から繰り出される不条理なボケは、なかなか面白かった。特に、水槽からブリを出して、寿司にして出すまでのくだりが好き。何処を切ってもバカバカしい。

  • ロングコートダディ(よしもと)

「スカイダイビング」。初めてスカイダイビングに行くことになった堂前が、その前に練習をしておきたいからと兎にコントを持ちかけるのだが、兎もスカイダイビングの経験がないので、なんとなくのイメージだけでシミュレーションしてみることに。近年、漫才において「○○の練習をしたい」と言えば、ごくごく自然に漫才コントが始まるのがセオリーになっているが、このコンビの場合、どちらもスカイダイビングの経験がないために「どうしよう……」と途方に暮れるシーンを挟み込むことで、いわゆる漫才コントではなく本当に練習を始めるような流れに持ち込んでいる。そして実際に、オーソドックスな漫才コントのようなこなれたやりとりは繰り広げられず、漠然としたスカイダイビングのような情報だけで練習を乗り切ろうとしている。漫才コントのようなことはしているが、その実、まったく違うことをやっているわけだ。だからこそ、取るに足らないようなボケも、「二人ともスカイダイビングのことをよく知らない」ことを補強していて、なんだか笑える。そのくせ、いざスカイダイビングを始めると、レクチャーの中で出たボケを再度出すという構成の笑いを見せてくるから、油断ならない。いい漫才だった。他のネタも観てみたい。

  • センサールマン(スパンキー)

 「寝る子に本を読み聞かせる」。これから眠ろうとしている子どもに本を読み聞かせる父親になりたい。童話「うさぎとかめ」を競馬実況風に読み上げる。愛植男によるリアリティ溢れる実況読み上げと山崎仕事人の妙に年齢を感じさせる味わい深いツッコミがなかなかに魅力的だったが、この設定でやるのであれば、漫才よりもコントの形式の方が良かったのではないかという気もする。山崎仕事人が眠ろうとしている子どもである必要性をあまり感じられなかった。かなり好きなタイプのネタではあるのだが。

準決勝進出。

  • てんしとあくま(よしもと)

「輪唱」。歌の輪唱が苦手だという川口のために、かんざきが「森のくまさん」「かえるのうた」などを歌って練習に付き合ってくれようとするのだが……。かんざきの歌う「森のくまさん」「かえるのうた」が原曲とはニュアンスが違っているというボケを軸とした漫才。このニュアンスの違う「森のくまさん」「かえるのうた」の完成度が非常に高い。もし、ありきたりな芸人が同じようなネタを作ろうとしたとしても、ここまで惹きつけられる漫才にはなっていなかっただろう。ただ、楽曲のクオリティに対し、漫才としては少し物足りない。とある曲調にアレンジされた「かえるのうた」を面白く消化され切っていない気がする。そういう意味で、ちょっと勿体無い。

  • トット(よしもと)

中西保志「最後の雨」」。中西保志の楽曲「最後の雨」の歌声が重なる部分が一人では上手く歌えないので悔しいという桑原が、二人でならば気持ち良く歌えるだろうと相方の多田を巻き込んで歌おうとする。先のてんしとあくまと同様、実在する楽曲を軸とした漫才。ただ、こちらは楽曲そのものではなく、楽曲をきっかけに二人が揉める姿を描いている(無論、その楽曲に「最後の雨」をチョイスしているあたりに、絶妙なセンスは感じさせられるが)。しょーもないテーマでしょーもないケンカが始まってしょーもないぶつかり合いをするという、しょーもなさが面白い。また、タイミングに異常に固執する桑原、注意され過ぎて苛立って歌わなくなってしまう多田、それぞれが本当にそういうことをやりそうな見た目をしているのがいい。ただ、火のついたケンカに、これといった落としどころがなかったことだけが残念。

  • ヘンダーソン(よしもと)

「神様」。神様になった子安が、様々な困っている人たちを助けようとする。漫才コントの設定としてはそれなりに独創的(むしろ古典的?)。それでいて内容は分かりやすくて面白い。いい漫才だ。ただ、神様のコントが始まるまでの、いわゆるフリの段階に時間をかけ過ぎている。中村が子安のことを神様だと思っていたとか、宗教の勧誘はお断りとか、そういったやりとりも確かに面白いのだが、漫才コントがメインのネタだと、それらが長めのアイドリングに見えてしまう。それだけが少し残念。

「応援演説」。政治家に立候補しようと考えている肥後は、相方の大須賀に応援演説をお願いしようと思っているのだが、当の大須賀は大勢の前に出ることが不安で仕方ない。大勢の観客の前で漫才をやっておきながら、大須賀が「大勢の前に出ることが不安で緊張している」ことを前提としたネタをやるという感覚がよく分からない。その違和感が終始残ってしまって、まるで楽しめなかった。ただ、終盤の仕掛けから察するに、このネタは本来はコントで、その台本を強引に漫才に置き換えてしまったため、このような妙な状態になってしまったのだろう。だから、コントとして見ると、それなりに面白い。とはいえ、もうちょっとどうにかならんかったのか。

  • 学天即(よしもと)

準決勝進出。

  • ミルクボーイ(よしもと)

「田舎に住んでみたい」。生まれも育ちも都会だったから将来は田舎に住んでみたいと考えている内海に、田舎に住んでいたという駒場が地元がどういう感じだったのかを説明する。都会育ちの内海が、駒場の語る地元が田舎か田舎じゃないかを判断するという、ちょっと性格の悪さが浮き出たネタ。正直、漫才というよりは【田舎あるある】【田舎ないない】で構成された一言ネタなのだが、内海の「ほな田舎やないか!」「ほな田舎ちゃうやないか!」という相槌に味が染み込み過ぎていて、フォーマットがとてつもなく明確なのに、ネタを見終えるまで完全に漫才として認識してしまっていた。れっきとした漫才師が喋れば、それが漫才のカタチを取っていなくても漫才になってしまうんだなあ、と一人で納得。いや、面白かった。

  • 金属バット(よしもと)

「プリクラ」。来る日も来る日もプリクラを撮るために四百円を払っている生活に嫌気がさした小林が下した決断とは。有り得ない行動が有り得ない状況を生み、更に有り得ない行動を起こさせてしまう蓄積タイプのネタ。後半のナンセンスな展開には確かに笑ったのだが、その流れを崩さないようにするためか、友保のツッコミが少し控えめに。このコンビは三回戦の動画もチェックしていたのだが(知り合いの漁師から貰った海の幸を台無しにするというネタだった)、そちらの方は小林のボケと友保のツッコミがしっかりと噛み合っていたのだが。恐らく、より決勝を意識した漫才を考えた結果として、今回のネタになったのだろうが……それが裏目に出てしまったのではないか。まあ、それでも、十二分に面白い。

  • 尼神インター(よしもと)

「桃太郎」。「桃太郎」がやりたいという誠子に嫌々付き合わされる渚だったが、その演技は真に迫っていて……。あまりにもグダグダな「桃太郎」の芝居に一体何が始まったのかと冷や汗をかいたが、それからの驚くべき展開に腹を抱えて笑った。いや、正直なところ、こういうコンビの関係性を描いたネタはこれまでにも幾つか見たことはあるのだが、女性の感情の起伏を演じることに長けている誠子の圧倒的なポテンシャルが設定の面白さを何倍にも膨らませている。これが漫才として評価されることはないだろうが(客イジりしてるし)、尼神インターはコンビとして独自の路線をしっかりと歩めているのが本当に凄い。ブレずに突き進んでほしい。

「娘からの手紙」。いつか娘には結婚式でお父さんお母さんにあてた感謝の手紙を読んでもらいたいと思っている大林の気持ちを理解した西森が、大林の娘になって手紙を読んであげる。手紙をテーマにしたネタだが、一方的に手紙を読み上げる訳ではなく、娘が手紙を読み上げているという設定なので、大林がツッコミを入れることで内容が変わるようになっている。……細かいことではあるけれど、こういうところで印象が大きく変わったりするから油断ならない。肝心のネタは流石。笑いの取り方にソツがなく、ちょっとだけ「メッキ」の説明に固執するところに西森の町工場芸人としての気質を感じたりもして、なかなか楽しめた。ただ、M-1で披露する漫才としては、ちょっと弱い。後半、西森が「○○ショック!」という言い方にラップ的に固執するくだりがあり、そこでの畳み掛けに勝負をかけてきたのだと思うのだが、その割にスピード感に欠け、物足りず。ここは基本的にペーソス感の強いコンビなので、もっと味わいを重視した漫才をやっていった方が良いのではないかという気がするが……それだとM-1には勝てないか。難しいな。

  • 和牛(よしもと)

準決勝進出。

  • 大自然(よしもと)

準決勝進出。

  • ネイビーズアフロ(よしもと)

「バカップル」。バカップルが楽しそうで羨ましいという羽尻のために、皆川が古風で賢い羽尻にとって理想の女性を演じてデートに出かける。男が古めかしい言葉遣いの女性に翻弄される……という形式は、なにやら古典落語の『たらちね』を彷彿とさせる。一応、こちらはまだ、かろうじて何を言っているのかが理解できるレベルに努めているが。基本的には、彼女の古めかしい言葉遣いと複雑な言い回しによる違和感の面白さだけで構成されているのだが、次々に新鮮味のある言葉を持ち出してくるので、なかなか飽きさせない。とはいえ、やはり同じパターンのボケばかりが続くので、どうしても物足りなさを覚えてしまう。テーマから外れないように、意識しながら台本を書いたのだろうが、それが裏目に出てしまっているように思う。

「再結成」。もう芸人を引退してしまったトキの元へ、かつての相方である田崎が再結成を持ち掛けに行く。解散後、アメリカへと渡ったトキが、トウモロコシ畑を営んでいるテキサス野郎になっていた……という設定がもうバカみたいに面白い。また、このバカみたいな設定を、忠実に表現しているのだからたまらない。トキは如何にもテキサス野郎を思わせる口調になっているし、家までは農薬を撒くためのヘリコプターで移動してるし、一つ一つの描写がいちいち楽しい。あまりにも自由過ぎて、こういった賞レースではまず間違いなく評価されないタイプのネタではあったが、藤崎マーケットがこういう芸風になったのは喜ばしいことだと思う。いやー、めちゃくちゃ面白かったなー。

「木崎との生活」。ナルシストな木崎が木崎との生活を夢見ていたであろう全ての人々のために、木崎との生活を演じたコントを始める。宅急便で送られてきた木崎とそれを何の疑問もなく受け入れるバカ女子大生の生活を櫻井がツッコミ続けるというスタイルの漫才。東京予選でナルシストのボケに軸を置いた某コンビの漫才に物足りなさを覚えていた身としては、もはやナルシストの域を逸脱して純然たる狂人と化した木崎によるカップル描写でスッキリ。そうそう、これくらい振り切れていないと。例えば、「そうと決まれば……!」の動きの無駄さ。実にたまらない。木崎の声が汚いダミ声なのも良い。掛け合いを重視するM-1では評価されない漫才だろうが、面白かった。

  • ギャロップ(よしもと)

「自分の治したいところ」。林のハゲを中心に展開するしゃべくり漫才。自らの身体的特徴をネタに取り入れている漫才師は数多く存在しているが、ここまで面白い角度から切り込んでいる漫才師は他にいないのではないだろうか。それほどに面白かった。しかも、その切れ込みから、更にまた別の角度に切り込み、そこからまた別の角度に切り込み……話が展開するたびにメチャクチャに面白い笑いが溢れ出てくる。05年のブラックマヨネーズを彷彿とさせるほどの爆発力。ここまで、準々決勝で敗退した漫才師のネタを全て観てきたが、一番落とされた理由が分からないのはここだと断言できる。それくらいスゴい漫才だった。合格組の漫才を見たら、まだ納得できるのだろうか……。

  • 霜降り明星(よしもと)

準決勝進出。

準決勝進出。

  • アキナ(よしもと)

準決勝進出。

準決勝進出。

 

こちらからは以上です