土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDについてなんやかんやいう

「じわじわチャップリン」チャンピオン大会(2016年8月13日・20日)

  • インディアンス【40】

「好きな人」。最近、木村に好きな人が出来たという話題をきっかけに、プロポーズや結婚の話へ。通常回でも披露されていた田渕のボケが木村を無視して暴走するスタイルの漫才だが、これまでに比べて明らかにボケを詰め込み過ぎている。そのためか、間やリズムが崩れている箇所や、早口過ぎて何を喋っているのか聞き取りにくい箇所が幾つか。チャンピオン大会ということで、ちょっと緊張して気合が空回りしてしまったのかもしれない。ただ、終盤の結婚行進曲のくだりは笑った。「コッペパン、カレーパン、食べてお腹パーンパン!」

 

「ほっそりイリュージョン」。鎖を首に巻き付けたり、箱の中に入った人間が消えてしまったり。通常回の感想でも書いたように、手品というジャンルは基本的にお笑いの中でも少し特殊なポジションに位置しているため、今回の様に芸人同士で競い合う場ではどうしても評価されにくい。とはいえ、彼らは頑張っていた。冗長になりかねない箱を使った大掛かりなマジックの中に小ネタを混ぜ込み、笑いを上手く取っていた。アシスタントのおだじがいなくなったように見せかけて反対側の扉に捕まっているくだりなんか、視覚的にも面白かった。ただ、まあ、こればっかりはしょうがない。

 

「喧嘩」。たくさんの舎弟を抱えているヤンキーの櫻田とタイマンを張りに来た菅原が口上を述べていると、いきなり唇を奪われて……。番組内では櫻田と菅原のキスがマイナス要素とされていたが、単純にコントの内容不足だったように思う。「ケンカ最強と言われている男の武器が口づけ」という設定そのものの不条理さだけで乗り切ろうとしたのだろう。事実、キスに至るまでの流れは非常に丁寧で、だからこそ最初のインパクトは強かった。その後の逆にキスを欲しがる流れも適切。「俺はだいぶビックリしたけど……」「キスってのは本当に好きな人とじゃないとしちゃいけないんだぞ!」「なぜ予想から外した!?」など、森本のツッコミも冴えていた。ただ、最後にもう一度、ドカンとくるものがあってほしかった。それが出来るトリオだとも思う。

 

  • 平野ノラ【32】

「集大成」。観客から五十音を募集、それをバブリーにしていく。観客が介入している時点で営業ネタ以外の何物でもない。ネタの本数も少なく、勝利を意識しているようには感じられなかった。……まあ、平野ノラの現状を思えば、ここで勝負する必要性はないのだが。或いは、本当に、もう本当に、ネタが底を尽きてしまったのかもしれない。それはそれとして、平野のネタの見せかたに対して、観客席の土田が反応していたシーンが少しだけ気になった。そういうイジりが許されるキャラクターではあるのだが、わざわざ拾うほどのところでもなかったので、受け流してしまった方が良かったのではないだろうか……。

 

  • マツモトクラブ【42】

「弔辞」。自分の葬式で弔辞を読む友人のボケぶりにツッコミを入れる。シンプルなボケ(マツモトクラブ)に対して感情のこもったツッコミ(音声)が入る姿は、まさに漫才のそれ。普段、どちらかというと視点に工夫を凝らしたコントを演じているイメージの強いマツモトクラブに、こんなネタがあるとは思ってもみなかった。そんな軽快な内容なのに、オチがちょっと渋みのある味わいになっているところが憎らしい。スマートでカッコイイ。それなのに「してやったり」感が残らない。この絶妙なバランスがたまらない。「フザケたことなんて出来ないものですね……」という一言も、オチを思うと、少しグッとくるものがあったりして。いやー、いいコントだった。

 

【今週のふきだまり芸人】

サイクロンZ「ショートコント:バッティングセンターみたいな寿司屋」

 

  • 全力じじぃ【31】

「感動したこと」。通常回と同様、漫才のていをなしたショートコント。ネタ自体は安定していたし、ブリッジも「いらっしゃい!」のくだりを連発するという「ひょうき~ん!」なボケが非常に面白かった。しかし、スベることを前提としたTポイントカードのくだりがさほど笑いに繋がらず。更に、最後の最後のスカシボケ「ひょうた~ん!」が蛇足となって、完全に勢いを止めてしまっていた。チャンピオン大会なので、これまでやらなかったことを思い切って仕掛けていこうという気持ちは理解できなくもないが、どうして「ブリッジをイジる」という中盤あたりで処理すべきことを最後にやってしまったのか……。あそこは普通に「ひょうき~ん!」か、きちんと「ひょうた~ん!」を処理すべきだった。

 

「視力検査」。とても目のいい転校生の視力検査。いい。かなり好き。前半は視力検査をテーマとした大喜利的な展開でじっくりと笑いを組み立てていき、その流れを後半で一気にグチャグチャにブッ壊していく。……まあ、厳密にいえば、透視能力のあたりで既にブッ壊れていたような気もするが。後半はただただ下らなくて、ずっと笑っていた。「酸素!」「二酸化炭素!」「硫黄!」から「パン!」への流れの意味の無さ! ネタの内容そのものの可笑しさもさることながら、遠山演じる教師の力強い演技も笑いに繋がる大きな要因となっていた。エネルギッシュだったなあ……。

 

 「昭和にありそうなCM」。脳みそ夫が考案した「昭和にありそうなCM」の数々を披露する。「ミソヤマの薄切りハム」「赤まむし」「ふりふりスーパーグレープ」の三本を披露していた。どうしてチャンピオン大会に小ネタ集みたいなパフォーマンスを選んだのか。とはいえ、観客の冷たい反応に対して、慌てながらも状況を笑いへ昇華する珍しい姿が見られたので、結果的には良かったような気もする。「今日はお通夜ですか?」の、あの妙に味に染みた言い方が妙に面白かったなあ。それにしても、脳みそ夫って下ネタもやるんだな……。

 

「友達」。教室で買ったばかりの漫画を読んでいる男が、急に爽やかな同期生に話しかけられる。ここまでストレートに爽やかイケメンを肯定しているネタ、初めて見たような気がする。芸人は物事を斜めに捉えがちだから、こういうタイプの人間のことを裏があるように描いたり、或いは、イケメンには裏があるだろうと考え過ぎてしまう人間のネトネトした姿を描いたりしがちだが、そういった捻りも何もなく、ただただストレートに爽やかイケメンを肯定的に描いている。これが凄い。ネタそのものは緊張と緩和で進行している。通常なら相容れない二人が重なることで生じる緊張と、それを軽やかに乗り越えていく爽やかイケメンの発言による緩和。後半は流石にコント的な処理を施していたけれど(とはいえ「This is a pen」は流石にセンスが古すぎるが)、なかなかに見応えのあるネタだった。現実にこんなヤツがいたら、まず付いていかないけれど。こんなん絶対に宗教の勧誘やで!(偏見) あと、きょんは器用だ。

 

「強盗犯」。10年間追い続けてきた強盗犯と取調室で対峙することになった刑事が、まるで追っかけのようなリアクションを取り……。「刑事と強盗犯」の関係性を「有名人とその追っかけ」に置き換えるという、ななめ45°が得意とするスタイルのコント。スターのように振る舞う強盗と、そんな彼の一挙手一投足に興奮するベテラン刑事の下らなさ。「スリーデイズ」「ソロデビュー」「ポスター」などなど、ワードの使い方も巧み。丁寧に、確実に、笑いを刈り取っていく姿はまさに職人芸といったところだろう。ただ、だからこそ、起爆力に欠ける。コントそのものは確かに面白いのだ。でも、その上で、更に大きな爆発が欲しい。ワードが噛み合う上手さの先を見せてほしい。……これが今回、40点に届かなかった理由なのかもしれない。

 

結果、「じわじわチャップリン」初代チャンピオンはラフレクランに決定!

 

【今週のふきだまり芸人】

ハブサービス「殆ど全てを忘れてきてしまった○○」