2015年11月から2016年2月にかけて東京・大阪・福岡・愛知・広島・岡山・宮城・神奈川を巡った単独公演の全国ツアーより、神奈川での最終追加公演の模様を収録。ブログにも書いたけれど、これは岡山公演を観に行ってきました。最近、岡山駅前に出来たイオンモール岡山の五階にある、「おかやま未来ホール」って会場で。同じ階に楽器店とか本屋とか無印良品とかがあるから、開演時間までの微妙な待ち時間を無理なく消費することが出来たのは有り難かったっけ。イオンが地方を侵食している現状には危機感を覚えるけれど、やっぱり、どうしても便利なんだよなあ。この問題に消費者としてどう向き合っていくべきなのか……って、違う話になってきた。そうじゃなくて、今回は東京03の話だ。
鑑賞直後、ブログにも書いたけれど、ここ数年で一番面白い公演だったんじゃないかしらん。いや、いちいち比較してないけど、一つもマイナスになる部分がなかったというか。……まあ、ここでいうマイナスっていうのは、放送作家のオークラが担当している長尺コントのことなんだけど。オークラが書いているコントって、なんか当たり外れが大きいんだよね。しかも、大抵の場合、色恋沙汰が絡んでくるから、つまらなかったら余計にシラけちゃう。東京03の舞台でそういう昼ドラめいたグチョグチョしたものは別に見たくないんだよねえ……。でも、今回は凄かった。『許せる心』。冒頭から惹きつけられたもんね。喫茶店のマスターを演じている角田が、客席に背を向けたままゆっくりと語りに入るシーン。たまらなかったねえ。角田の安定した喋りの美味さも勿論あるんだけれど、やっぱり台本の良さだよ。まあ、やっていることは、いつもの色恋沙汰だったんだけども(笑) とはいえ、面白かったなあ。特に笑ったのは、興奮している角田に飯塚があることを仕掛けるシーン。きちんと作り込まれているコントに、ああいう遊びになる要素が含まれていると、なんだかほっとする。オチも良かった……けど、DVDに収録されているバージョンは岡山公演の時より分かりやすくなっていて、そこが少し残念な気もしたな。分かりやすく改変した分だけ、ちょっとスマートではなくなっていたから。
ここまでオークラの話ばっかりになってしまったけれど、通常のコントもちゃんと面白かった。コンビニに入ってきた怪しげな男が何かをしでかす前に防犯用のボールをぶつけてしまったバイトの戸惑いぶりがたまらない『防犯』、ケガで入院している友人のことを普段は名字で呼んでいるけれど思い切って名前で呼んでみようと試みた男がとんでもない目に合う『20年来の友人』、会社の先輩女性社員に思い切って告白した男が「告白出来た」ことにコーフンしすぎて返事を聞こうともしない『5年分の思い』など、共感とナンセンスが混ざり合ったコントが揃っている。興味深いのは、本公演のコントに使われているシチュエーションが、過去の東京03のコントを彷彿とさせるところだ。『防犯』は「キングオブコント2009」でもやっていた『コンビニ強盗』を思わせるし、『20年来の友人』の三人の配置は「爆笑オンエアバトル」初出場の時に演っていた『ストリートミュージシャンのお見舞い』に似ている。女性に告白した後の状況を描いた『5年分の思い』は旅の初日に告白してしまう『温泉旅行』のようだ。……まあ、単純に似ているだけなんだろうけど。とはいえ、これらのよく似たコント同士を比較すると、今の東京03が如何に進化しているかがよく分かる。以前よりも確実にフクザツで、だけどナンカイではない、多くの人が笑えるコントを生み出している。
個人的なお気に入りは『旅の達人』。とある工場に勤めている三人の男たちが韓国料理店で飲み会を始めるのだが、飯塚が韓国料理を好き過ぎて韓国に行ってきたという話の流れから、新人の豊本が工場で勤め始める前にオマーンに行っていたことが発覚する。そこから角田が「どうしてオマーンを選んだのか?」と豊本を追及していくんだけれど、個人的にハマったのは、そこから更に先のところ。「どうしてオマーンを選んだのか?」という表面的なテーマに気を取られて、恐らく観客の多くがスルーしていただろう小さなところを蒸し返し、それなのに、そんな小さいところを容易に観客に想起させられる凄さ。ちょっと技術の凄さを感じてしまった。で、このコントで、ちょっとキツい扱いで終わってしまう豊本をフォローするように、豊本がオマーンでの旅行をウザいテンションで語る幕間映像『豊本オマーン旅行記』が始まる、このバランス感も素晴らしい。今思ったことだけれど、今回は全体的にバランスが良かったような気がするな。
これらの本編に加えて、特典映像として追加公演の終演後に行われた『角田のやりたいこと公演』『飯塚のやりたいこと公演』『豊本のやりたいこと公演』が収録されている。まあ、『第15回東京03単独公演「露骨中の露骨」』を鑑賞した人なら分かるだろうけど、角田は相変わらず歌っているし、飯塚はコントをやっている。ファンとはいえ、どんだけ好きなんだよ!とツッコミを入れずにはいられない。ちなみに、飯塚のコントは『ウレロ』の飯塚脚本回で劇団ひとりと演じたコントの再演なので、番組のファンはチェックした方が良いかもしれない。なんなら、劇団ひとり版と比較してみるのもいいかも。でも、一番面白かったのは、「プロレスの面白さを伝えられれば」という気持ちがある豊本によるプロレスクイズ。クイズそのものの面白さもあるんだけれど、なにより、罰ゲーム要員として呼ばれたあの人物が素晴らしかった。……ただ、これはさっきもタイトルを挙げた『露骨中の露骨』を先に観ておいた方がいいかもしれない。あのパフォーマンスを知って、副音声でパフォーマンスの裏で起きていた事件を知って、それから観ると、とても面白いと思う。まあ、別に観なくてもいいけど。
ちなみに、東京03は現在、第十八回単独公演【明日の風に吹かれないで】を開催中。2016年7月の東京公演を皮切りに、京都、愛知、長崎、福岡、熊本、北海道、大阪、岡山、広島、長野、福井、宮城を巡っている。勿論、私は岡山公演を観に行くつもりである。楽しみだなあ。
■本編【104分】
「キャスト紹介「Mikaiketsu」」「同期会」「主題歌「時間が解決してくりました」」「旅の達人」「豊本オマーン旅行記」「防犯」「強盗ルミノール団」「20年来の友人」「ピンと来ない恋の歌」「角田の秘密」「ダメ人間証明クイズ・いや違うんですよ」「5年分の想い」「ピンと来ない楽団「口に出せた思い」」「許せる心」「エンディング曲「時間に解決された感」」
■特典映像【72分】
「角田のやりたいこと公演」「飯塚のやりたいこと公演」「豊本のやりたいこと公演」
■音声特典
東京03によるコメンタリー