土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDについてなんやかんやいう

「Perfume 6th Tour 2016 COSMIC EXPLORER」(2016年6月5日)の記録

以前に書いた記事があまりにも感覚的だったので、当日のちゃんとした記録を。

事の起こりは今年四月から五月にかけて敢行した大阪旅行。現地の居酒屋で合流したイシダドウロ氏から「徳島でのPerfumeのライブのチケットが一枚余っているんだけど、菅家さん行く?」と誘いを受けたのである。丁度、Perfumeの新曲『FLASH』に激しい感動を覚え、同曲を収録したアルバム『COSMIC EXPLORER』を聴き込んでいた私にとって、この誘いはまさに渡りに船だった。

↑最強の名曲である。

ただ、正直なところ、チケット代の7,500円には少し戸惑った。いくら社会人とはいえ、ポンッと出せる金額ではない。会場が徳島というのも不安材料だった。私の住んでいる地域から徳島まではなかなかの距離だったし、なにより私自身まったく徳島に馴染みがなかったからだ。その上、ライブが開催される日が日曜日である。開演時刻は午後4時と早めだが、場所のことを思うと、何時に帰宅できるか想像もつかない。ことによると、午前様になってしまう可能性すら考えられる。そんな状態で迎えなくてはならない月曜日からの一週間を思うと……とはいえ、単身で音楽ライブに乗り込むという経験が皆無に等しい私が、今後自力でPerfumeのライブに行くなんて、とても考えられない。こうして、不安と好機を天秤にかけた結果、優柔不断な私としては珍しく即決に等しいスピードで了解の旨を伝えたのであった。

そして迎えたライブ当日。

午前11時に目覚める。おかしい。9時には起きるつもりだったのだが。予定よりも遅めの起床、即ち寝坊である。幸い、開演時刻までにはまだ十二分に余裕があった。とはいえ、なにせ徳島県にはまったく行ったことがないので、到着にどれほどの時間が必要なのかがさっぱり想像できない。というわけで、焦るほどではないにしても、それなりに急ぐ感じに身支度を済ませて、そそくさと十年来の付き合いがある愛車に乗り込み、出発した。

当日のライブの会場となったのは、徳島市内にあるコンベンションセンター「アスティとくしま」。5,000席を擁する施設だという。何年か前に、『オードリーのオールナイトニッポン』五周年記念イベントを観に行ったのだが、その時の会場に使用された東京国際フォーラム・ホールAがここと同じぐらいの席数になるらしい。公式サイトによれば、当日は混雑が予想され、会場内の駐車場を利用するのは非常に困難である……とのことだったので、徳島駅の近くにある駐車場を利用し、駅とアスティとくしまとをつなぐバスの臨時便を利用することにした。

自宅から徳島駅へと向かうルートには、香川県を横断する「高松道」と徳島・高知の山中を抜ける「徳島道」の二つの選択肢があった。どちらの道からでも同じくらいの距離を走ることになるようだったが、今回、私は「徳島道」を利用することにした。というのも、徳島道の途中にある吉野川パーキングエリアで販売されている、徳島県の名物“とくしまバーガー”を食べたかったからだ。美味いかどうかは問題ではない。とにかく食ったという事実が重要なのだ。ところが、出発から一時間後、雨のそぼ降る吉野川パーキングエリアに到着して、驚いた。何処にも売られていないのである。ラーメンやうどんを取り扱っている店はあるのだが、肝心のハンバーガーを売っている店がない。うーん、どういうことなのか。仕方がないので、ここでは徳島ラーメンを食べた。値段は一人前だがボリュームがイマイチという、いかにもパーキングエリアらしいバランス感であった。ちなみに、後で調べてみたところ、とくしまバーガーを販売していた「ハイウェイレスト エトランジェ」は現在、閉店中だという。リサーチ不足だったか……。

その後は、ひたすら徳島道を東へ進む。二車線区間が多いのには辟易した。高速道路の概念を無視して、マイペースに走行する車を追い越せない辛さよ……。

そんなこんなで徳島インターチェンジへ。高速を降りたら、真っ直ぐに徳島駅へと向かう。大した距離ではなかったので、あっという間に駅周辺に到着した。そこから少し離れた場所にある「新町地下駐車場」で駐車。イシダ氏に渡そうと持参した地元の名物とまさかの荷物の時のためのエコバッグを持って、駅前へと向かう。相変わらず天候は曇り空で芳しくなかったが、幸いにも雨は降っていなかった。

徳島駅に到着。今度はちゃんとした徳島ラーメンを食べようと思い、駅ビルの中にある有名な徳島ラーメンのお店を訪れる。券売機にお金を入れようと財布を覗くと、万札しかない。うーむ、これでは食券を買えないではないか。何処かでくずさなくては。近場にあった宮脇書店ヴィレッジ・ヴァンガードなどの売り場を覗くも、欲しいモノが見つからない。お金をくずすためとはいえ、無駄な買い物はしたくないのである。

仕方がないので、近隣のコンビニにでも行ってみようかと駅ビルを出ると、バス乗り場に行列が出来ているのを発見する。これはもしや。列の最後尾に立っているお兄さんが持っているプラカードを見ると、そこには「アスティとくしま臨時便」という文章が。おおっ、これか……と、最初は呑気に眺めていたのだが、ふと、あることに気が付いた。現在の時刻は午後2時半ごろ。開演時刻は午後4時を予定。残り一時間半。バス乗り場には長蛇の列。残り一時間半。長蛇の列…………一時間半……これ、ここで乗らないと、下手すれば間に合わないのではないか? 突如、不安に襲われた私は、居ても立っても居られなくなって、すぐさま行列に並んだ。幸い、バスの運賃程度の小銭は持っていたのである。そして、思っていたよりも早く列は進み、並び始めてから二台目にやってきたバスに乗ることが出来た。……こんなに簡単に乗れるのであれば、もう少し徳島駅の周辺を見て回っても良かったかもしれない。

バスを降りると、すぐさま沢山の人だかりが目に飛び込んできた。全員Perfumeを観に来たのだろうか。徳島工芸村という区域を抜けると、目的地であるアスティとくしまが見えてくる。席数から巨大な施設を想像していたのだが、外見はさほどでもない。ここでイシダ氏と合流。挨拶もそこそこに、物販コーナーへと案内してもらう。色々なグッズが販売されていたが、どれもこれも手を出せるほどの予算はなかったので、タオル(分かる人には分かる手触り)とパンフレット(三人の写真とインタビュー付)を購入する。

この時点で時刻は午後3時。開演まで一時間近くあったが、ライブ前で気持ちが高揚していたのか、どうにもこうにも落ち着かなくなってしまったため、とっとと会場に入ってしまうことに。イシダ氏がチケットを入口で手渡すと、何かの機械で新しいチケットが印刷される。「ここで初めて席番が分かるんですよ」とイシダ氏が解説してくれた。転売対策なのだそうだ。座席表で見たところ、二階席の真ん中あたりになるらしい。

(そんなにステージから離れていない場所だといいなあ)と思いながら会場に入った途端、目の前に広がっている光景にただただ驚いた。照明を落として、薄暗くなっている空間のド真ん中に、まるで一階席を三つにぶった切るようにしてステージが広がっている。デカい。とにかくデカい。それでいて、とっても近未来的な輝きを放っている。そんなステージを会場中に広がっている靄が包み込む。なんという非日常的な世界観。本当にここは徳島なのか。完成された舞台美術に、ただただ圧倒されてしまった。

午後4時開演。以下、鑑賞中の大体の心境。

あ、始まった。出るのかな。出ないのかな。そろそろ出てくるかな。フリが長いぞフリが。あ、来るぞ来るぞ。溜めるなあ。そろそろ来るか。来た、来た来た。ホンモノだ。ホンモノが出てきたぞ。うわーっ、キレキレ。凄いなダンス。あっ、えっ。この曲、もう歌っちゃうのか。感動する間が無かったぞ。いやー、でも、これは凄いな。光線も飛ばしまくりだ。おっと、MCだ。なんだこりゃ。凄くゆるいぞ。ああ、でも、なんていうか、さっきのパフォーマンスのギャップで、めちゃくちゃ萌えるな。かしゆか阿波踊りだ。「やっとさー♪」って、もう超可愛いな。萌え死ぬなコレは。ていうか、あ~ちゃんメチャクチャ喋るな。広島弁ゴリゴリだ。それなのに喋りがゆるふわってどういうことなんだ。バランス感どうなってんだ。それで、メチャクチャ客イジってるぞ。面白いなあ。楽しいなあ。で、またパフォーマンスだ。うわーっ、キレキレだ。ステージ見ればいいのか、モニター見ればいいのか、悩むな。出来れば生の姿を目に焼き付けたいな。あ、ジャンプ! ジャンプ! 衣装チェンジだ。かしゆかの衣装の丈どうした。短すぎて、なんだかネグリジェみたいになってるぞ。エロいなあ。かしゆかエロいなあ。いやー、エロいわあ……。あ、最後の挨拶。うわーっ、尊い。存在が尊い。どうか幸せになってほしいわあ、三人とも……。

午後6時40分ごろ、終演。

鑑賞後、イシダ氏の車に乗せてもらって、近場の居酒屋でちょっとした感想を言い合う時間を設けるが、こちらはもう完全に心ここにあらず。通常、お笑いライブを観終わった後は、良かれ悪かれ、これでもかと言葉が溢れてくるものなのだが、今回は何も出てこなかった。出しようがなかった。なにせ、ライブの最中に自分がやっていたことといったら、ただただ感動するばかりだったからだ。こんなにも自分の感受性が真っ白になってしまうことなんて、これまで一度として経験したことがなかった。ミュージシャンのライブやアイドルのイベントに参加している人の気持ちが分かったような気がした。なるほど、確かにこの感覚に、性的欲望が入り込む隙間はない。自分を空っぽにして、ただひたすらに心を解放する。まさに「救済」である。それに対して、私たちは「信仰」と「崇拝」で応える。なんと不気味で純粋な世界であろう。

食後、イシダ氏に駐車場まで送ってもらった私は、徳島道の二車線区間を思い出し、高松道から帰る道を選んだ。テンションが上がっていたため、最初は国道で帰ろうとしていたのだが、高松辺りで諦め、そこからは高速道を利用した。アホのテンションで行動なんてするもんじゃない。

午前0時帰宅。お疲れ様でした。