土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDを見てなんやかんやいうブログ

「THE NEW YORK ~Love&Peace~ベスト・オブ・ニューヨーク」(2016年3月2日)

2015年11月21日、12月4日にルミネtheよしもとで開催されたベストネタライブの模様を収録。

ニューヨークはよしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属するお笑いコンビである。山梨県出身の嶋佐和也三重県出身の屋敷裕政によって2010年に結成された。ともにNSC15期生にあたり、同期にはおかずクラブ、横澤夏子、デニス、マテンロウ、鬼越トマホークなどがいる。ちなみに、屋敷は同志社大学出身なので、レイザーラモンHGカズレーザーメイプル超合金)の後輩ということになる。

ニューヨークの芸風を一言で表せば「偏見」だ。ある種の職業に就いている人たちに対して、あまりにも偏った考え方に満ち満ちた言葉をぶちまける。例えば、『スピード違反』というコントでは、二十歳でハマ―を乗り回している中卒の男に対して一方的に「テメェ“オレオレ詐欺”やってんだろォ!」とブチ切れる。『同僚』というコントでは、コンパで知り合った女と結婚しようとしている同僚を「あんなエロいコンパで知り合った女と結婚すんな!」と引き止めようとする。時には、実在する芸能人の名前を挙げて、とことんネタとして消化することも。『有名人に声をかけられたら』という漫才の中で繰り広げられるスリリングな妄想は色々な意味で危なかった。

これらのネタの根底に流れているのは明確な差別だ。しかし、にも関わらず、ニューヨークのネタはこの上なく笑える。何故ならば、彼らが舞台上で描いている差別的な視点は、私たちが抱え込んでいるものでもあるからだ。日ごろ、公然ではなかなか口に出来ない差別的な感情を、ニューヨークはコントや漫才を通じて笑いへと昇華する。平等という大義名分の名の元に抑えこまれた感情をむき出しにさせられる。以前、立川談志が「非常識を肯定しているのがスポーツと芸能である」と語っていたが、その意味ではニューヨークのネタは芸能として実に正しいカタチを取っているといえるのかもしれない。

無論、差別的な視点をそのままネタに反映したとしても、笑いに変えることは出来ない。常識的な思考に捉われている人間の心を開放するには、その薄皮一枚一枚を丁寧にめくっていくためのプロセスが必要だ。ニューヨークはそれがとても上手い。根底から湧き上がってくるモノが差別的な感情によるものだと気付かせながらも、笑わざるを得ない状態へと誘導してくれる。例えば、『DJ』というコントでは、「DJなんてただ人の曲くっつけて流してるだけだろ!」というクラブDJ全般に対してとんでもないことを言ってのける場面があるが(この後、更にヒドいことを言ってのけるのだが、流石に炎上しそうなので自粛)、その前に嶋佐演じるDJがとんでもないダメ人間であることを細かく説明しているため、この悪態に違和感を覚えずに笑うことが出来る。『占い師』というコントでは、占いの結果を受けて「医者の仕事を辞めて占い師になった方が世のためだ!」と主張する男に対して、それを引き留めるために占い師自身が「占い師なんて本来、この世に一人もいらない職業なの!」と言ってのける(これも言わずもがな、後半更にヒドくなっていく)。それまでの流れ、そこに至るまでの関係性をしっかりと描いているからこそ、ここぞとばかりに吐き出される偏見が純然たる笑いとして昇華されるのだ。

特に私が魅了されたのは『卒アル』というコント。嶋佐の高校の卒業アルバムを見せてもらった屋敷が、かつての同級生たちの輝かしい思い出と現在の状況がまったく一致しないことに驚愕し続ける……というネタである。このコントも他のネタと同様、嶋佐が語る高校時代の同級生たちの当時の状況を聞いた屋敷が、現在の彼らの状況に対してツッコミを入れることで笑いに昇華されるという、偏見を軸としたネタだ。ただ、他のネタとは明らかに違っているのが、そこにほのかにノスタルジーを漂わせている点である。彼らに何が起きたのかは分からない。どういう心境の変化があったのかも分からない。ただ、かつて輝かしい未来が想定されていた少年少女たちが、今では(社会的には)みすぼらしい職業に落ち着いてしまっているということの哀愁、切なさが、なんとも味わい深い。いや、彼ら自身には、そのような意図は無いのかもしれないが……。

「ニューヨークのネタは“偏見”」という前知識があったため、ベストセレクションという体を取っている本作も似たようなパターンのネタばかり演じられているのではないかと危惧していたのだが、なかなかバリエーション豊富な見せ方で楽しめた。コント19本、漫才11本というラインナップで殆どネタ被りを感じさせられないというのは脅威といってもいいだろう。それでいて、どれもしっかりと面白い。コントも漫才も出来るコンビは少なくないが、ここまで明確に芸風が定まっている上で、どちらのスタイルでも魅せられるコンビはなかなか珍しいのではないだろうか。技術的にはもはや売れるしかないが、果たしてどうなっていくのだろうか。今後の更なる展開に期待したい。

なお、特典映像には、ニューヨークの一日に完全密着したドキュメンタリー「Document of NEWYORK」、個室居酒屋でベロンベロンに酔っ払った二人になんとか大喜利をやらせようとする「ベロベロ大喜利<完全版>」、とあるコントに登場した曲のプロモーションビデオ「「君ヲ想フ」Music Video」、ニューヨークの二人が芸人であることを隠して相席居酒屋に潜り込む「相席居酒屋で女の子をゲットせよ!」が収録されている。オススメは「ベロベロ大喜利」。うっかり寝てしまった屋敷に本気で怒る嶋佐の泥仕合ぶりはなかなかのモンでした。

■本編【169分】

【THE NEW YORK ~Love~】

「ヤンキー」「スピード違反」「自衛隊の休日」「いいたいこと1」「同僚」「フラれた友人を励ます」「上司」「凱旋記者会見」「曲作り」「シェアハウス」「天竜高校のツートップ」「有名人に声をかけられたら1」「不良の主張」「最近泣いた話」「野球部」

【THE NEW YORK ~Peace~】

「結婚の挨拶」「演技の練習」「ストリートミュージシャン」「ラジオのDJ」「突然のプロポーズ」「嫌いなノリ」「卒アル」「バイト先の先輩」「DJ」「いいたいこと2」「占い師」「元気が出ない」「結婚式」「有名人に声をかけられたら2」「オカマバー」

 

■特典映像【42分】

「Document of NEWYORK~ニューヨークの1日に密着~」「ベロベロ大喜利<完全版>」「「君ヲ想フ」Music Video」「相席居酒屋で女の子をゲットせよ!」