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土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDを見てなんやかんやいうブログ

「ぶちぶちシソンヌ」(2016年3月23日)

 

キングオブコント2014』王者・シソンヌが広島ローカルで冠番組を持つことになったと聞いたときは、とにかく不安しか感じなかった。まず、シソンヌの二人は広島県出身じゃないから土地勘がないし、そもそも冠番組を持つようなタイプでもないし、なにより洗練された舞台を構築する芸風の彼らがベタベタで泥臭い笑いを好む地方のノリに適切とは思えなかったからだ。ラーメンズ東京03のような先駆者たちのように、ライブを中心とした活動を展開し、細く長い道を歩んでいく方が、彼らには合っていると思っていた。

 

しかし、そんな私の一方的な心配も空しく、番組は2015年4月21日に放送を開始。無論、広島県民ではない私に、彼らがローカル番組でどのように立ち振る舞っているのかを確認する術はなく、時間の経過とともに、気が付けば番組の存在そのものを忘れてしまっていた。……それから、およそ半年後の同年10月20日に、『ぶちぶちシソンヌ』がDVD化されるという情報を耳にするまでは。

 

最初は何かの冗談なのではないかと思った。いくらなんでも早すぎる。そもそも、シソンヌが広島で人気を集めているという状態だけでも想像がつかないのに、半年でDVD化されてしまうなんて、余程の結果を叩き出していなければ成し遂げられないことだろう。一体、その内容は、どのようなものなのだろうか。気になって仕方がなかったが、ここで下手に動いては広島ホームテレビの思う壺である。

 

DVDは2016年1月27日に一部店舗で先行販売されていたが、あらゆる人脈を駆使してそれを奪取することなく、同年3月23日に一般販売が開始されるまで待機した。「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」などという言い回しがあるが、今年の私にとってそれは正しくなかった。この三ヶ月という期間は、とても、とても、長かった。発売日を過ぎてもなかなか手元に届かなかったから、また余計にやきもきさせられた。Amazonめ、まんまと発注枚数を見誤ったな。もとい、それだけ想定外の注文が、この作品には押し寄せられたということを意味している。まだ見ぬ脅威に私は冷汗を垂らしながら作品の到着を待った。

 

一般販売を開始してからおよそ一週間後となる4月2日の夕方、それは私の手元に届いた。待ちに待った瞬間である。但し、この日の夜は飲み会の予定が入っていたので、当日中の鑑賞は叶わなかった。ビールを飲み、寿司をつまみ、天つゆひたひたの海老天ぷらを噛み締めながらの、私の頭の中には『ぶちぶちシソンヌ』のことしかなかった。二次会のカラオケでRHYMESTERの『ONCE AGAIN』を歌っていたときも、頭の中にはシソンヌのことしかなかった。現場じゃなくて自宅にバックアゲインしたいんだよ!

 

そして翌日。4月3日の午後、鑑賞に至った。結論からいえば、最高だった。

 

『ぶちぶちシソンヌ』のDVDは三つの企画で構成されている。一つ目は、シソンヌの二人が広島の名所といわれるような場所へと赴き、コントのキャラクターになりきりながらレポートする【ロケでもコント】。二つ目は、屋外で街ブラロケを敢行しているシソンヌの二人が、それまでの流れとは何の関係もなくいきなりスタッフにコントテーマカードを引かされ、そこに書かれたお題で即興コントを始めさせられる【即興でもコント】。三つめは、シソンヌの二人がスタジオで作り込んだコントを披露する【スタジオでもコント】(なんと実際の放送では週に一本のペースでオンエアされているらしい。壮絶だ)。つまり、状況や内容に多少の差はあれども、その全てを彼らが得意としているコントで構成されているのである。ローカル番組とは思えない、なんとも充実したラインナップだ。

 

じろうがキャラクターになりきって長谷川に身体を張らせる【ロケでもコント】、シソンヌがしっかりと練り上げたコントを披露する【スタジオでもコント】も相当に面白いのだが、とりわけ【即興でもコント】は秀逸だ。本当に、多くの一般人が闊歩している商店街の真ん中で、いきなりコントをやらされるのだが、どんな場所であってもしっかりとシソンヌのコントになっているのである。もし、中途半端な芸人がこれと同じことをすれば、周囲からの好奇の目に耐えられず、思わず半笑いでコントをやってしまっていたことだろう。無論、時には何もまとまらず、延々とグズグズな展開になってしまうこともあるが、そんな時でも彼らが気にするのはコントの出来のみ。コントに本気で臨み、気持ちが結果に結びついている彼らだからこそ出来る企画だろう。特にオススメしたいのは、渡辺直美をゲストに招いて京都錦市場商店街を練り歩いた回。シソンヌの二人もさることながら、渡辺直美のポテンシャルが如何無く発揮されており、その強さを再認識させられた。打てば響く者同士なら、共鳴音も美しい……。

 

これらの本編に加えて、特典映像として長編企画「長谷川 実家に帰って初めての親孝行!」と撮りおろしコントを収録。この「長谷川 実家に帰って初めての親孝行!」が、また非常に良かった。『キングオブコント2014』の優勝賞金を手に入れた長谷川が、その賞金を持って実家のお寿司屋で自腹を切ってお寿司を食べるという企画なのだが、シンプルに旅ロケとして面白かった。途中、長谷川が父親のために日本酒を買おうと立ち寄った酒蔵で、代わりに試飲してベロンベロンに酔っ払ってしまったじろうの微笑ましいこと……。一方で、二人がシソンヌにとっての「ゴール」について語る貴重な場面も(これはテレビ未公開!)。見どころしかない良企画だった。

 

そして『ぶちぶちシソンヌ』は、この春、二年目に突入する。

 

ライブを中心に捉えた活動を展開しているコント師がいる。メディアの中心に身を置きながらも定期的にライブを開催しているコント師がいる。そして今、地方ロケとコントががっぷり四つに組み合った『ぶちぶちシソンヌ』は、全てのコント師に“ローカル”という新たなる筋道を見出そうとしているのではないか。よしもとだから出来ることかもしれないが……各地方局の皆様方、御一考を!

 

ちなみに。2016年4月2日、シソンヌは47都道府県を巡る全国ツアーを開始。簡素な舞台と衣装で1時間にパッケージにしたライブを披露するのだという。前売り券は2,000円と、通常の単独ライブに比べて非常に手に取りやすい価格となっている。全ては、お笑いライブに馴染みのない、ローカルへと届けるために……。

 

■本編【168分】

【ロケでもコント】

カープの選手と友達になろう!」「牡蠣を収穫に行こう!」「おのみのレッツGO!GO!GO! タコ漁篇」「おのみのレッツGO!GO!GO! ウェイクボード篇」

 

【即興でもコント】

「キングオブ即興コントin鎌倉」「キングオブ即興コントin広島」「キングオブ即興コントin京都(ゲスト:ロバート)」「キングオブ即興コントin京都(ゲスト:渡辺直美)」

 

【スタジオでもコント】

「海女さん」「自動販売機」「プロレスラー」「女子アナウンサー」「配達員」「ベテラン俳優」「スタイリスト」「カープガールズオーディション」「書道大会」「持って来ちゃった」

 

■特典音声

【スタジオでもコント】の中から厳選したコントをシソンヌが解説コメンタリー

 

■特典映像【46分】

「長谷川 実家に帰って初めての親孝行!」

DVDのために撮りおろしたコント「会議」「合コンから1週間」「番組卒業」