土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDを見てなんやかんやいうブログ

「bananaman live pepokabocha」(2003年3月26日)

バナナマン~ペポカボチャ~ [DVD]

バナナマン~ペポカボチャ~ [DVD]

 

 

2002年7月30日から8月4日にかけてTHEATER/TOPSで開催された単独ライブを収録。

 

今でこそゴリゴリに売れているバナナマンが、まだそんなに売れていなかった頃の作品である。とはいえ、「爆笑オンエアバトル」ではチャンピオン大会に出場できる程度には活躍していたし、ラーメンズおぎやはぎと一緒に「君の席」というユニットもやっていたので、まったく知られていなかったわけではないらしい。……らしい、とアヤフヤな表現をしているのは、私が当時のお笑い事情について、あんまり詳しくないからだ。ちょうど、このライブが開催された年から、ようやく「爆笑オンエアバトル」を見始めたぐらい。お笑い芸人のDVDを集めるようになったのは、その翌年の2003年と思うと、まあ仕方がない。

 

これを購入したのは、確か『BANANAMAN LIVE 激ミルク』を見た後だったように記憶している。インパクトという意味では、本作より『激ミルク』の方が大きかったかもしれない。設楽演じるカバの飼育員が講演会をやらされることになる『HIPOPOTAMUS』と誘拐犯が誘拐したヤツの口車に乗せられてどんどんドツボにはまっていく『CLEVER HOSTAGE』が、強く印象に残っている。当時はイマイチ面白さが理解できなかった『張り込み』もこれに収録されている。あの秩序無き雑談の面白さ。ラーメンズとはまったく違った魅力を感じたっけ。

 

ただ、完成度という面で見ると、やっぱり『ペポカボチャ』は圧倒的だ。どのコントもクオリティが高いのに、同じ方向性のモノが一つもない。まず、オープニングコントの『pumpkin』の時点で、完全に心を撃ち抜かれる。どんな言うことでも聞いてくれる奴隷になってもらうために、設楽がカボチャを持参して日村宅を訪れるというコント。勿論、最初は日村も断るんだけれど、設楽の巧みな話術で見事に奴隷になることを受け入れてしまう……この行程が非常に面白い。コントの構成としては、最近ちょっと物議を醸したバカリズムの『見よ 勇者は帰りぬ』に近いかもしれない。設楽は奴隷にするために、バカリズムは相手のおっぱいを触るために、言葉だけで丸め込んでしまうから。ただ、『pumpkin』は受け手となる日村の存在が、かなり設定のキツさを緩和している。なんというか、本当にバカな人がまんまと騙されているところが滑稽というか……本質だけを見ると、むしろ悪質かもしれない。

 

この後も、とある事情で家に帰ろうとせず会社に留まっている日村の強い要望で霊感が強い設楽が怖い話をしてあげる『オフィスのオバケ』、“ブルーフォーブラッフォーガングリフォン”という謎の行いについてナレーション付きで解説する『ブルーフォーブラッフォーガングリフォン』、名作「泣いた赤鬼」のストーリーをバナナマンのセンスでコント化した『mountain』、酔っ払って設楽の自室でうっかり嘔吐してしまった日村がそのことをどうにかして隠し通そうとする『puke』など、いずれ劣らぬ名作揃い。『puke』は二人の演技力のおかげで(?)本当に生理的不快感を覚えるのに、ちゃんと笑えるところが本当に凄い。

 

とりわけ、未だに「このコントはコント史に残る大傑作だ!」と思ってやまないのが、『secretive person』だ。いや、こんな大袈裟に言うと、ちょっと変にハードルが上がってしまうかもしれないが、本当に凄いコントなのだ。私の中では、バナナマンのコントというと、未だにコレが最初に頭に浮かんでくる。それくらい、初見時に強い衝撃を受けたのである。コントの舞台は日村の自宅。セミが鳴いている夏の日、二人は何もやることがなくてだらだらと過ごしていた。ふと、日村が設楽に話を切り出す。「あれ、本当かよ?」。この時、日村は設楽が共通の知人である高橋を殴った話について聞こうとしていたのだが、それに対して設楽が始めたのは、なんとツチノコを見たという話。こうなると、もはや高橋のことよりもツチノコの方に興味がいってしまうのは、自明の理というもの。でも結局、ツチノコには逃げられてしまったということで、話は終わる。そこで再び、高橋を殴った話に戻ると、その理由が「高橋がツチノコを見たことを信じなかったからケンカになって」というものだった。そして日村が一言。「なんだ、高橋ブン殴ったのもツチノコがらみか。……お前、それもう先言えよ」。

 

このコントが面白いのは、会話の流れで提出することができそうな凄い話題があるにも関わらず、まったく喋ろうとしない設楽と、そんな設楽に対してやきもきしっぱなしな日村の対比構造だ。設楽は別に意図的に喋ろうとしていないわけではなく、その必要性がないと判断したから喋らないに過ぎない。日村もそれは理解している。理解しているのだが、それにしても喋らなさすぎる。とはいえ、それが悪いことなのかというと、そうでもない。ただ判断基準が違うというだけで、設楽にはまったく悪意がない。だから余計にやきもきする。気の長い男と気の短い男の対比を描いた古典落語の『長短』を思わせる傑作だ。

 

あと、あまり目立つ存在ではないが、『rain』というコントがちょっと面白い。雨の日、ビニール傘を差してバスを待っているサラリーマンが、雨について会話するというコント。丁寧語でやりとりする二人の妙にダンディな雰囲気が、他のバナナマンのコントとは一線を画した独特の雰囲気を放っている。ナンセンスだけど激しく渋いオチもたまらない。こういうコントをもっと作ってもらいたいのだが、日村が見た目とキャラを煮詰めに煮詰めた濃厚コメディアンと化した今では、ちょっと難しいかもしれない。

 

そして最後は、長尺コント『思い出の価値』。深夜、コピーライターの設楽がカボチャをテーマにしたキャッチコピーを考えていると、そこへ血相を変えた日村が飛び込んできて、自宅を捜索する。話を聞いてみると、恋人のカオリと喧嘩になって、家を出ていかれたという。でも、どうしてカオリが、設楽の家にいると思っているのか……。過去の恋人と自らを比較して苦悶する日村とカボチャのキャッチコピーを急いで作らなくてはならない設楽の錯綜する感情を上手くまとめた傑作だ。『髭と口紅とバルコニー』(鈴木慶一ムーンライダース)が鳴り響くエンディングも、温かくてとても優しい。

 

バナナマンの最高傑作『ペポカボチャ』。その味は永遠の魅惑。

 

■本編【120分】

「pumpkin」「オフィスのオバケ」「ブルーフォーブラッフォーガングリフォン」「secretive person」「mountain」「赤えんぴつ」「puke」「rain」「思い出の価値」

 

■特典

「コメンタリー」(コントに対するコメント文)