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土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDを見てなんやかんやいうブログ

「イルネス共和国」(2014年5月21日)

視聴記録

 

2016年1月9日視聴。

 

ひたすら「働きたくない」と思いながら労働に勤しむ四日間が無事に終わった。これから一月の三連休、しばらくは仕事のことを考えずに過ごす日々を送ることが出来る。……とはいえ、この三連休が過ぎてしまえば、また労働に汗を流す日々を再開しなくてはならない。そのことを思うと、連休のド真ん中なのに気分が重くなる。ただ、仕事から逃げ出すほど、苦労をしているつもりもない。世間的に見れば、ごくごく平凡でありきたりな仕事内容である。それを分かった上で拒否しているのだから、きっと私は類い稀なる怠け者の才能の持ち主なのだろう。今のところ、その才能が金銭的に開花する様子はないが。

 

連休初日となる土曜日は『イルネス共和国』を鑑賞した。「極楽とんぼ」というユニット名を省略して紹介されがちなお笑い芸人・加藤浩次が開催したコントライブを収録している。会場は銀座・博品館劇場。2014年2月22日から23日にかけて全三公演が行われ、本作には23日の公演が収められている。他の出演者は、六角精児、矢作兼おぎやはぎ)、マンボウやしろ、秋山竜次(ロバート)、吉村崇(平成ノブシコブシ)。脚本・演出を加藤浩次石原健次が担当している。石原はかつて鈴木工務店福田雄一らとともに、コンビ時代の極楽とんぼの代表的番組『極楽とんぼとび蹴りゴッデス』で構成を担当していた放送作家だ。近年では、『アウト×デラックス』『おしゃれイズム』『ナニコレ珍百景』などの番組に参加している。

 

本編を再生すると、幕開けとともに出演者全員によるダンスパフォーマンスが始まる。インドのミュージカル映画を思わせる曲に合わせて、年相応のキレがないダンス。しかし、客席に背を向けている出演者たしが一人ずつ振り返ってポーズを決めるシーンで、六角が振り返るタイミングを間違えてしまう。曲が中断され、メンバーたちは六角に詰め寄る。どうやら彼らは、何かのイベントに向けてダンスを練習しているらしい。上手く踊れない六角のために、改正案を考えるメンバーたち。その度に練習を再開するが、六角はまったくタイミングを掴むことが出来ない。そこで、六角の直前に振り替える加藤が、とある打開策を提案する……。やがてコントは終了。まだ彼らが何のためにダンスを練習しているのか、その理由は明かされない。

 

続いてのコントの舞台はラジオブース。新しいラジオ番組の打ち合わせをしているディレクター、作家、パーソナリティの元へ、三人の中年男たちが現れる。実は彼らは、前回までこの枠で番組を担当していたディレクターとパーソナリティ。突然の打ち切りでリスナーに終了を伝えられなかったことが悔やんでも悔やみきれず、今からそれを伝えさせてほしいと乗り込んできたのである。渋々ながらも冒頭三分だけ時間を与えることを承諾し、やや強引に乗っ取られたようなカタチで番組はスタートするのだが……。ここでようやく、ライブのタイトルでもある「イルネス共和国」の名が取り上げられ、全てが動き始める。

 

正直、新鮮味という意味では、さほどの驚きはない。設定だけを取り上げてみると、ありきたりとまではいかないにしても、過去に類を見ない設定のコントが生み出され続けている昨今のお笑い事情を思うと、些か手ぬるい。だが、そうして出来上がった台本と出演者の相性が、とてつもなく良い。常識人とも狂人とも分からない危うい人間になり切る加藤を筆頭に、確かな演技力で存在感を示す六角、緩急ついたツッコミで確実に笑いをもぎ取る矢作、ここぞというタイミングで適材適所の役割を見せるやしろ、突出した個性を放つキャラクターを遠慮無しに引き出す秋山、熱情的な演技で場を引き締める吉村。六人も出演者がいるにも関わらず、誰もが割りを食うことなく、それぞれの武器を存分に振り回しているのである。それらの血肉が通ったコントを「イルネス共和国」という世界観でしっかりと包み込んでいる(特典としてついてくる「バズーカ王国の歴史」の分厚さには驚いた!)のだから、面白くならないわけがない。

 

個人的には、『マスゲーム』がお気に入り。大多数の人間が集まって統一された動きを取る集団競技「マスゲーム」の演者たちが、色恋沙汰からの喧嘩を始めるというコントなのだが、とにかく加藤と矢作のやりとりが面白くて仕方ない。なにせ、矢作はあのトーンで加藤を責め立てるし、加藤は加藤でその攻撃性を前面に押し出している。それぞれのベクトルの違った笑いがぶつかり合って、止め処無く笑いを巻き起こしていく様が実に見事だった。

 

突然だが、思春期の頃の私は『めちゃイケ』が嫌いだった。攻撃的で、暴力的で、ノリと空気を押し付けているような番組の色合いが苦手だったからだ。今では、そういった番組のトーンをそれなりに理解しているつもりだが、それでも不快感を覚えることは少なくない。きっと、根本的に相性が良くないのだろう。そして、そのために、私は極楽とんぼの笑いについて、あまり理解できていない。学生の頃に、かろうじて『極楽とんぼのテレビ不適合者』には触れていたが、当時もフェイクドキュメンタリー作品としての完成度の高さにばかり興奮して、彼らの芸人としての素質についてはまったく分かっていないままだった。

 

だから、本作に対しても、多少の不安を覚えていた。相方の山本圭壱が不在の状況で、加藤だけで、ちゃんと面白いコントが演じられるのか、はっきりいって侮っていた。だが、杞憂だった。見損なっていた。コントの加藤浩次、真っ当に、きちんと、面白かった。

 

明けて日曜日。まだ連休は終わらない。

 

■本編【125分】
オープニングアクト」「あの女を止めろ」「オープニングVTR」「脱出マニュアル」「マスゲーム」「悪魔の男」「イルネス総合病院」「国境を突破せよ」「大統領に何をした」

 

■特典映像【32分】
「イルネス共和国 座談会」「DJシュガー「ミッドナイトダイビング」音声トラック」
「バズーカ王国の歴史」