白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「COWCOW CONTE LIVE7~芸歴20周年記念盤~」(2014年11月5日)

2016年1月4日視聴。

正月休みも三が日を過ぎてしまうと、平常の休日と大して変わらないように感じられる。

つい先日まで、おせち料理に舌鼓を打ちながら、お正月特番に大笑いしていた筈なのだが、今の私は日清食品の代表作であるカップヌードルをすすりながら、ニコニコ動画のゲーム実況動画を眺めている。この世界において、これほどまでに時間を無駄に費やしている状況も他にないだろう。せめて、休日なのだからと、何処かへ出かけるくらいのことをしてもいいのだが、忘年会と新年会による出費で懐には隙間風が吹いている上に、今月はまだ水曜日のカンパネラによるイベントと東京03単独公演を控えているので、とてもじゃないが外出なんて出来る状況ではない。

一応、諸般の事情により、リアルタイムでの鑑賞が許されなかった年末年始の番組がHDDに大量に溜まっていたが、それらの消化にも飽きた。考えてもみれば、リアルタイムで観賞した『THE MANZAI 2015』『爆笑問題の検索ちゃん 芸人ちゃんネタ祭り』『そこそこチャップリン』『クイズ☆正解は一年後』『芸人キャノンボール』に加え、『英国一家、正月を食べる』『富士ファミリー』『赤めだか』『大人のピタゴラスイッチ』と、こってり風味の特番を見ているのだから、食傷気味になっても致し方のないことである。

……と、ここまで読んで、賢明なる読者の皆様は「どうしてお笑い芸人のDVDを観ようとしないのか?」とお思いになるかもしれない。確かに、お笑い芸人の映像ソフトレビューを主軸としている当ブログとしては、この休日を大いに利用して、未だに鑑賞していない数多くの作品を少しでも消化するように努めるべきなのだろう。だが、それを実行しようとすると、今度は「正月の雰囲気に適した作品を見なくてはならない」という意識が私の中で芽生えてくるのである。先に書いたことと矛盾しているように思われるかもしれないが、どんなに正月の雰囲気が感じられなくなったとしても、この休日は間違いなく正月休みのそれだ。そのような時期に見る作品なのだから、それ相応の選択をしなくてはならない……と考えてしまうのである。前向きで、朗らかで、一点の曇りもないような作品で、この新年を高らかに始めたいと願ってしまうのである。

(なお、既にレビューを終えている、ラーメンズ爆笑問題快楽亭ブラックに関しては、過去に鑑賞してあった旧作なので御都合主義的に除外する)

そこで選んだのがCOWCOWだ。以前から老若男女の隔たりを持たない「シンプルに面白くて楽しいネタ」に定評があり、近年では何故かインドネシアで『あたりまえ体操』が大ブレイクしている彼らのポップで明るいネタは、正月のノーテンキな空気に上手く馴染んでくれるだろうと推測したのである。とはいえ、本作は単なる単独ライブDVDではなく、彼らの芸歴20周年を記念した特別な作品だ。その重みがネタに多少は反映されているのではないか……と危惧していたのだが、いざ本編を再生してみると、なんてことはない。実に普段通りのCOWCOWだった。

有名サッカー選手に扮した二人が“フリーキック”をテーマにしたショートコントを繰り広げるオープニングアクトフリーキック』、どうしても記号に見える“凸凹”が常用漢字として認められたのは漢字-1グランプリを制したからだった……!?『漢字-1グランプリ』、人手不足な寿司屋が新しく雇ったのは二人のバックダンサーだった!『寿司屋』など、シンプルでバカバカしいネタが揃っている。ただ、一方で少し観客に寄せ過ぎているように感じられる場面も。メインとなる客層が家族連れになってきている以上、ライブに飽きてきた子ども対策としての観客参加型のパフォーマンスを用意してしまうのも仕方がないのかもしれないが……。

個人的には、2008年にリリースされた『COWCOW CONTE LIVE 1』に収録されていた『ヤクザの息子の反抗期』の続編として、『極道の息子の反抗期』が収録されていたのが嬉しかった。元のネタは父と息子の言い争いが描かれていたが、今回は息子と先輩のやりとりが描かれている。不良漫画のそれっぽいやりとりを真面目な内容で交わしている様が、とても面白かった。同様に、2009年にリリースされた『COWCOW CONTE LIVE 2』に収録されていた『多田刑事』と同じシステムのコント『LINE刑事』の存在も嬉しかった。『多田刑事』はブログ好きな刑事が立てこもり犯を説得するコントだったが、今回はLINE好きな刑事が立てこもり犯を説得するコントとなっている。本作の鑑賞にあたって、改めて両方のネタを見比べてみたが、どちらもツールとしての特色をきちんと捉えていて、これも実に面白かった。LINEスタンプの適度なおふざけ感が、シチュエーションの緊迫感を程々に緩めるのがとても良い。この他にも、本作には過去の公演で披露されたネタとの繋がりを思わせるネタが少なくない。芸歴20周年を意識してのことなのだろうか。

本作には、これらのライブ映像に加えて、特典映像としてCOWCOWの二人が過去の単独ライブDVDからベストネタを選出する撮りおろし映像や、ライブで流れた幕間映像などが収録されている。この撮りおろし映像が、COWCOWのネタに対するそれぞれの考え方の違いが見られるだけではなく、COWCOWのことを好きだという芸人仲間へのアンケートも収められていて、なかなか見応えのある内容になっていた。二人が1位に選んだネタが完全収録されているのも嬉しいところ。これを機会に、ちょっと当時のDVDを見返したい気持ちになった……が、時間が足りない現状を思うと、なかなか難しいだろう。とりあえず、懐かしさを噛み締めよう。

明けて1月5日。今日から仕事始めだ。すぐにまた三連休が待ち構えているとはいえ、実に憂鬱だ。出来ることなら、働かずに飯を食える生活を送りたいものだが、「働かざる者食うべからず」というフレーズを是としている世の中を生き抜くために、世のため人のために生きているフリをしなくては……。

とりあえず、しばらくは『いろんなおしごと』を脳内BGMに頑張ろうと思う。 

■本編【80分】

フリーキック」「おしごとずかん」「漢字-1グランプリ」「極道の息子の反抗期」「寿司屋」「言気道」「LINE刑事」「五郎さんのヨガ教室」「凸凹」「銀行強盗」「漫才」

 

■特典映像【65分】

「芸歴20周年記念!COWCOWが選ぶベストネタ!!」「即興言気道 別バージョン」「もじどうぶつ 韓国語バージョン」「テトリス1」「テトリス2」「いろんなおしごと」「凸凹のうた」