白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「バカリズムライブ「?!」」(2015年12月23日)

バカリズムライブ「?!」 [DVD]

バカリズムライブ「?!」 [DVD]

 

2015年12月31日視聴。

年の瀬、田舎に身を置いているということもあるのか、正月の準備に過剰なほど急かされている最中、どうしても“仕事納め”ならぬ“お笑いDVD納め”をしておきたいという衝動に駆られ、半ば強引に時間を作って『バカリズムライブ「?!」』を鑑賞した。

先程まで、表玄関の掃除だ、風呂の掃除だ、仏壇の掃除だ、墓参りだ、おせち料理の準備だ、姫初めの相手オーディション選考会だと慌てふためいていた我が家の愚息が、何の前触れもなく家庭の輪から離れてこそこそとバカリズムのコントを観ている姿を、きっと家人は奇妙に見ていたことだろう。確認したわけではない。だが、大晦日の特別番組、例えば紅白歌合戦やガキ使スペシャルのような、こたつに両手両足を突っ込んで蜜柑をしゃぶりながら門外不出の呆け顔を晒して見る番組ならいざ知らず、年中無休冠婚葬祭四六時中いつでも見られるDVDをわざわざ年末の夕暮れ時という猫の手を八十本借りても足りやしない時間帯に鑑賞する無謀さを考慮すれば、容易に推測できる。それでも、どうしても “お笑いDVD納め”を済ませたかった、お笑いDVDコレクターとしての矜持が、素直に年を越すことを許さなかったのである。

そんな切羽詰った状態で観賞した本作だが、笑えるか笑えないかでいうと、正直言ってイマイチの出来だった。小さい頃から熱血教師に憧れていた新任教師が、素質がありそうな生徒を呼び出して不良になるように指導する『熱血!』、死んで幽霊になってしまったのにあんまり人に気付いてもらえない男のみっともない悲哀を描いた『URAMESHIYA?』、湖から現れた女神にウソをついて斧を奪われそうになった男が、全力で斧を奪還しようとする『俺の斧!』など、ネタの一つ一つはちゃんと面白い。でも、これまでバカリズムライブを何枚も観てきたせいか、なんとなくネタの方向性が読めてしまう。バカリズムなら、こうするだろうという想像の粋を出ない。無論、バカリズムもまた、それまでとは違ったアプローチでネタを演じているのだが、微々たる軌道修正程度では物足りない。むしろ、以前の似たようなテーマのネタと比較して、「あっちの方が面白かったような……」と良からぬ感情が芽生えてくる。そして気が付くと、過去に演じられた、過去に演じられてきたコントの数々が、走馬灯のように駆け巡る。発想力が評価されている芸人だから、これが余計に厳しいのだ。

その中でも、幾らか面白いと感じられたのが、『裏切り女 裏切る!』と『ひょんなことから?!』。『裏切り女 裏切る!』は、文字通りあらゆることを裏切っていく女が、その裏切りに関するエピソードをトークと歌で披露するというディナーショー形式のコント。何も悪いことをしていない人たちの気持ちを次々に裏切っていく女の不条理がたまらない。聞いたところによると、このコントは2006年の時点で既に作られていたらしい(当時のライブで同タイトルのコントを披露したことが確認されています)のだが、どうして今頃になって……? 『ひょんなことから?!』は、女子高生刑事が活躍するドラマのエピローグと次回予告だけを演じることで、描かれていない部分のムチャクチャぶりを想像させる手法のコント。回を増すごとに少しずつ内容が改変されていき、最終的にあからさまな迷走を見せ始めるしまうところに、バラエティ番組での経験が反映されているような気がしないでもない。妙に女子高生の制服が似合うバカリズムのビジュアルにも注目だ。

本作の鑑賞後、私は蕎麦をすすりながら紅白歌合戦を見ていた。「今年は見るべきところがない」と言われていた印象のある紅白だが、いざ見てみると、やっぱり面白いもの。とりわけ、小林幸子のステージには、その紆余曲折の歌手人生をあってか妙な感動を覚えてしまった。とはいえ、特に思い入れがあったわけではないので、恐らくは年の瀬の雰囲気にやられたのだろう。まあ、そもそもの話、空気による底上げがあってこその紅白歌合戦なのだが……。 

■本編【100分】
「プロローグ?!」「オープニング」「熱血!」「遠回りなあれこれ」「裏切り女 裏切る!」「EXCLAMETION OF SPACE」「URAMESHIYA?」「EXCLAMETION OF DEVIL & ANGEL」「俺の斧!」「BABAR QUESTION」「ひょんなことから?!」「DRIVER QUESTION」「愛しの小森整骨院(?)」「エンディング」