白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「Rahmens 0001 select」(2002年8月21日)

Rahmens 0001 select [DVD]

Rahmens 0001 select [DVD]

 

2016年1月1日視聴。

ブログ移転後、一発目のレビューということで、思い入れの強い作品を。今から12年前、まだ右も左も分からない大学生だった私が、初めて“お笑い芸人のネタを収録しているDVD”として認識した作品が本作です。広島県某所にある大手本屋チェーン店で、何故かミュージシャンの棚に置かれていたところを偶然にも発見し、「ラーメンズ初のベスト版!」という触れ込みに惹きつけられて購入したように記憶しています。

かつて『爆笑オンエアバトル』を中心に活動していたラーメンズですが、この時点で既にバラエティへの露出を控えるようになっていました。そのため、同番組を楽しく見ていた私も、彼らのコントをきちんと見たことはありませんでした。とはいえ、インターネット上の掲示板などを通じて、そのコントの凄さは伝え聞いていました。結果、興味はあるけれど、見ることが出来ない……という欲求不満の状態にあったわけです。そんな時に見つけた本作は、まさしく渡りに船でした。単独公演のビデオとなると当たり外れの可能性がありますが、ベスト版なら、お試しで手を出してみることも出来ますからね。ちなみに、この時点で既に『爆笑オンエアバトル ラーメンズ』はリリースされていましたが、私はその存在をまったく知りませんでした。順番でいえば、そちらから手を出すべきだったんですけどね。

収録されているコントは、2000年・2001年に開催された単独公演の中から、来場客10,000人の人気投票によって選び抜かれたネタを収録しているそうです。当時は気付きませんでしたが、『爆笑オンエアバトル ラーメンズ』とは殆どネタが被っていないところが親切ですね。唯一、『縄跳び部』だけが被っていますが、オンバト版の『なわとび』では長縄のわらべうただけがクローズアップされているのに対し、本作の『縄跳び部』では長縄のわらべうたで競う大会に挑む部員たちの姿が描写されており、よりバカバカしさの増した内容になっております。『爆笑オンエアバトル ラーメンズ』と内容を比較しながら見てみると、また違った楽しみ方が出来るかもしれません。

ネタの方向性はなかなかにバラけています。与えられた用途が無ければ何も出来ない世界の人々を描写した『無用途人間』のように哲学的な趣のあるコントもあれば、告白した相手にフラれたときの男女の気持ちの違いを理解するためにコントで状況を再現する『男女の気持ち』のような漫才コントのようなコントもあります(余談ですが、一文で三回も「コント」と書くと、文章的に不安な気持ちになりませんか?)。この他にも、誕生日のサプライズプレゼントを受け取る側と渡す側の気持ちを語ったモノローグに合わせて動き回る『バースデー』、自習し続けている息子に構ってもらいたい父親が全力で気を逸らそうとする『タカシと父さん』、ノリと勢いに任せて日本語を英語のように言い換えていく『日本語学校アメリカン』など、実に多種多様な手法のコントが収録されています。

それらの中でも、とりわけ大きな存在感を放っているのが、長尺コント『器用で不器用な男と、不器用で器用な男の話』です。冗談ばかりを口にする男と、その冗談を鵜呑みにしてしまう男のズレたやりとりは、まるで人と人とが価値観の違いからぶつかり合うしゃべくり漫才のような笑いを生み出しています。しかし、それまで冗談を言い続けていた男が、ふと本音を漏らし始めると、途端に空気が変わります。ほのぼのとした笑いが一転、切なさと悲哀が漂い始めます。ところが、この哀しさの中にも、彼らは笑いを見出しているんですね。面白くて、切なくて、でも、やっぱり笑ってしまう。感動を誘うタイプのコントは他にもありますが、この『器用で不器用な男と、不器用で器用な男の話』は、その最高峰と言っても過言ではないでしょう。……このコントで終わらせずに、パペット人形がどうでもいい話を繰り広げる『プーチンとマーチン』で締めくくるところが、また味わい深いですねえ。

当時はまだ若手コンビの一組だったラーメンズも、今年で結成20周年。しかし、コンビとしては、2009年の第17回単独公演『Tower』を最後に、これといった活動をしていません。せっかく記念となる年なのですから、何か記念碑のようなライブか作品かイベントを発表してもらいたいところですが、なんとかならないものですかねえ……。 

■本編【113分】

「無用途人間」「読書対決」「縄跳び部」「バースデー」「ドラマチックカウント」「男女の気持ち」「タカシと父さん」「日本語学校アメリカン」「器用で不器用な男と、不器用で器用な男の話」「プーチンとマーチン」