白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「爆笑問題の検索ちゃん 芸人ちゃんネタ祭り 第7世代をぶっ潰せ!SP」(2019年12月20日)

EXIT「漫才:お笑いの用語やテクニック」
オードリー「漫才:イタコ」
四千頭身「漫才:動物園の遠足と遊園地の遠足」
東京03「コント:開店祝い」
宮下草薙「漫才:ボディビルダー
ナイツ「漫才:演技」
かが屋「コント:タイプ」
友近「ヒール講談」
トム・ブラウン「漫才:盗撮の撃退法」
東×土田×古坂大魔王「四千万円(四千頭身のパロディ)」
霜降り明星「漫才:ボクシング」
爆笑問題「漫才:沢尻エリカ、金原会長と『テラスハウス』、令和ベイビー、アナ雪2、ジャニーズのYouTube解禁」

既に多くの方が語っているように、友近の『ヒール講談』が圧巻。“ヒール”と“講談”という2019年を代表する二つのワードを組み合わせておきながら、まったく批評性を含ませず、正々堂々としかし客観的視点を保ちながらオリジナルの講談を披露するという凄味。内容も友近という芸人の源流を辿るもので、深みがある。その肉体的表現に徹したシンプルなパフォーマンスに、笑いも忘れてただただ唖然としてしまった。しかし、この直後に、トム・ブラウンが盗撮犯を撃退する方法を紹介すると称し、徹底してフザケにフザケ倒した漫才を繰り広げていて、完全に脱力してしまった。此方もまた圧巻の出来映え。霜降り明星トークを潰しにかかっていたのもたまらなかった。恐るべし。

しかし、一番衝撃を受けたのは、爆笑問題の漫才のとある場面。平成から令和に変わる瞬間、日を跨いで双子が生まれたという話から……。

太田「双子で“平成生まれ”と“令和生まれ”! こういう子がいるんですよ」
田中「へぇー!」
太田「これが大人になったら、平成生まれなんかたまごっちやってると「古いなぁー」って……」
田中「ちょっと待って、そうじゃない! そういうことにはならない!」
太田「「やっぱ平成だなぁ、お前は! たまごっちなんかやんないよ今時! 俺なんか、もう“コレ”だもんなあ……」」
田中「何してんだよ! なんだよ“コレ”は!」
太田「先のことだから、情報がわかんない! 何か!」

この「令和生まれが大人になる頃には何が流行っているか分からない」ことがボケになるという発想には、思わず舌を巻いた。ナンセンスのように見えて、真理であり、そして何故か先の未来に対する希望のようなものも感じてしまう。まさしく令和元年の年末に披露するに相応しい漫才だった。令和の未来でも、爆笑問題の漫才が見られますように……。

年始の御挨拶。

あけましておめでとうございます。すが家です。

正月も三が日を過ぎまして、そろそろ無闇に気持ちの高揚する元日の根拠なき目出度さを理由に欲望へと埋没した日々から平々凡々とした惨めったらしい日常へと気持ちを切り替えていかねばならぬと考えているところだろうと思われますが、さりとて、この伝統的な行事が無意味にもたらす安心感を捨てるのは耐えがたく、もうしばらくは新年の幸福で五臓六腑を満たした日々を過ごすことになりそうです。こんな愚鈍な気質なものだから、私は真っ当な社会人にも愚かしく美しく酔狂な数寄者にも成り切れないのだけれども、それにしても人間とはそういうものではありませんか。

……と、文章の上では、正月を心から楽しんでいるようなことをつらつらと書き進められているわけですが、現実の問題として、年末がそうであったように、年始もやはり同様に、どこか実感のない嘘くさいもののように感じております。正月番組にせよ、初詣にせよ、実家への挨拶にせよ、新年の恒例行事を幾つも乗り越えてきたにもかかわらず、今の私は従来と大して変わらず、そのことがむしろ不安で、気付けば毎夜毎夜のように酒を呷って意識を曖昧にしているのだけれども、まあ、特に何が変わるわけでもなく、やはりなにやら実感はなく、今もなお令和元年に尻がへばりついている気がしてならない。否、むしろ平成三十一年に置いてけぼりを食らっている気がします。フハーッ!

それでも生活は毎日続きます。ってなわけで、今年もよろしく。

年末の御挨拶

すが家です。皆さんはすが家ですか?
この記事を書いている今、時刻は午後十時を過ぎたところであります。残り二時間で2019年が終わります。毎年、大晦日となると、独特の緊張感を漂わせているものですが、今年は平成から令和へと切り替わる大イベントを経験しているためなのか、あんまり自分の中で気持ちが盛り上がっていません。正直、なんでもない連休を、ただただ平凡に過ごしているというような感覚です。誰かに騙されているのではないかとすら感じています。とはいえ、スーパーマーケットには異常な数の人々が押し掛けていますし、テレビをつけると『紅白歌合戦』が放送されていますし、確かに年越しはそこまで迫っているようです。越すのか。越すのだな。今年も、年を越すのだな。
年末を実感できない理由として、自分もそこそこの年齢になったことが少なからず影響しているようにも思えます。高校生の頃から若手芸人を見るようになって、十七年。自分には夢がある、その夢を叶えるための時間は幾らもある、などと思い込んでいた時代から十七年。当時の自分から見てみれば、けっこうな大人であるように感じられる三十四歳。でも、未だに感覚は、まだまだ二十代の何も考えていない若者と同じような思考回路の三十四歳。精神的には幼いままで、なのに時間の体感はどんどん早くなっている。このままどっかでポックリ死んじゃいそうな気がしますね。それも人生なのでしょうけれども。
……とにかく、もうすぐ2020年であります。テン年代ももう終わり。いつかは亡くなっちまう哀れな生命ではありますが、投げやりにならずに、もうちょっとしっかり噛み締めていきたいと思いますね。というわけで、来年もどうぞ……あ、M-1の記事とか、「このお笑い芸人DVDがスゴかった!2019」も、なるたけ早めにやりますので、よろしくお願いします。
以下、せっかくなので2019年に読んで面白かった漫画のリンク。

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2020年1月の入荷予定+2019年総まとめ

29「エレ片 光光☆コントの人
29「ナイツ独演会 エルやエスの必需品
29「詰め合わせ」(まんじゅう大帝国)
29「アンタッチャブル柴田の「超ワロタwwww」~もうすぐ世間に知られてしまう超絶おもしろ芸人たち~
どうも、『M-1グランプリ2019』の感想文も書けないほどに余裕のない日々を過ごしている、すが家です。困ったものです。僕もすぐさま「ぺこぱの漫才は多様性を肯定している!」などと知ったようなことを書いてアクセス数をギャン上げしていきたいところなのですが、なんにも頭が回りません。今も回っていません。どうしたもんでしょうか。どうしようもありませんか。ともあれ来年のラインナップは以上のようになっております。注目はやはりまんじゅう大帝国でしょうか。大好きな『ものまね』が入っているようなので、今から楽しみにしております。

あ、あと、2018年の入荷ラインナップもまとめましたので、折角なので振り返っていくと良いのではないでしょうか。……って、ああっ! 『ゲームセンターCX DVD-BOX16』買うの忘れてた! 注文しないと……。

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「M-1グランプリ2019」王者決定!

優勝:ミルクボーイ(681点)
二位:かまいたち(660点)
三位:ぺこぱ(654点)
和牛(652点)※敗者復活
見取り図(649点)
からし蓮根(639点)
オズワルド(638点)
すゑひろがりず(637点)
インディアンス(632点)
ニューヨーク(616点)

今年も面白かったですね。個人的にはオズワルドの漫才が興味深かったです。いいトーンの語り口だったなあ……。各コンビの感想はまた後日上げていきますので、その時はまたよろしくお願いします。しかし、ミルクボーイとかまいたちの点差、えげつないな。

「M-1グランプリ2019」準々決勝敗退者・オススメの五組(11月18日大阪予選)

すが家です。今年のアレの大阪バージョンです。

年の瀬だというのにプライベート方面でなにかとバタバタしているので、今回も特に凝った文章は用意しておりません。ただただ、惜しくも準々決勝で敗退してしまった漫才師たちの中から、個人的に面白いと感じさせられたコンビを選出しております。私が好きな漫才師を皆さんも気に入るとは思いませんが、興味がありましたらば。

以下、今年のアレ。

Dr.ハインリッヒ

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吉本興業所属。幸(左)と彩(右)によって2005年に結成。大阪NSC27期生。一卵性双生児の姉妹によるコンビである。だが、それをネタに取り入れることはない。それどころか漫才の中で微塵も触れようとしない。双子であることなど、二人にとってはまったく重要ではないのである。無駄なことは語らない。そんな二人の姿勢は漫才にも表れている。冒頭から聖書について語り始める幸。唐突に「風のような人だと思われたい」などと言ってのける彩。それらの言動の根拠が説明されることはない。必要無いからだ。そんな些細なことは二人にとって大事ではないからだ。大事なのは、それよりももっと奥の方にある……と、思わせておいて、実は何もないのかもしれない。なにせ混沌の時代である。混沌の時代を生きる混沌の漫才師に理由など求めても意味などないのだ。三回戦「風のような人だったな」準々決勝「顔にはっつけ人間」

 

【シカゴ実業】

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吉本興業所属。山本プロ野球(右)と中川ひちゃゆき(左)によって2016年に結成。山本は大阪NSC31期生、中川は大阪NSC32期生。人間は学ぶ生き物である。観察し、学習し、記憶する能力が、他の生物たちよりも圧倒的に優れていたからこそ、今日の文明に辿り着いたのだ。だが、その優れた能力が、必ずしも効果的に発揮するとは限らない。私たちは本当に必要な情報だけを記憶しているだろうか。否、そんなわけがない。今日に至るまで、生きていく上で必要のないことを、私たちは随分と記憶してしまっている。シカゴ実業の漫才は、そんな記憶という優れた能力を持っているが故に生じる不条理を笑いに変える。知らなくてもいいことを覚え、知りたかったことを覚えていない。とかくこの世は難しい。記憶の引き出しには今日もポディマハッタヤ。三回戦「日本の教育」準々決勝「ポディマハッタヤ」

 

【ガーベラガーデン】

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マチュア。上浦侑(右)とジッパー(左)によって2007年に結成。芸人にとって唯一無二の武器があるということが必ずしも有利に働くとは限らない。何故なら、その武器によるイメージが定着することで、表現できることが制限されてしまうからだ。もし、敢えて武器を捨てて、まったく新しいスタイルのネタを作り上げたとしても、観客の脳裏には元来の武器がどうしても浮かび上がってくる。しかし、それを上手く使いこなすことが出来れば、他の芸人であれば決して辿り着くことの出来ない深海へと到達することも可能になる。学校教員と塾講師によるアマチュアコンビ・ガーベラガーデンの漫才は、もはやその域に達しているといっていいだろう。学校教員だからこそ生み落とせる発想、塾講師だからこそ吐き出せるボヤキ、もはや内部告発レベルに踏み込んでいるのではないか?と心配させられるほどのリアリティ……。変ホ長調、ラランドの後を静かに追う姿は、化け物の如き存在感である。三回戦「学校を舞台にしたRPG」準々決勝「学校を舞台にしたRPG」

 

【にぼしいわし】

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スパンキープロダクション所属。いわし(右)とにぼし(左)によって2013年に結成。『女芸人No.1決定戦 THE W』2019年大会・ファイナリスト。奇妙な出来事に遭遇してしまったとき、人は誰かにそのことを話したくなるものである。家族であれ、恋人であれ、友人であれ……誰かに話すことで経験を共有し、安寧を手に入れたいからだ。にぼしいわしの漫才は、そんな感覚を体現している。にぼしが体験したヘンテコな出来事を、相方のいわしに聞いてもらう。観客である私たちは、ただそれを見ているに過ぎない。このいわしの役割が意外と重要だ。いわしの役割はツッコミではなくあくまでもにぼしの話の聞き役に過ぎない。だからこそにぼしの話に笑ってしまうこともある。通常の漫才であれば許されない。だが、にぼしいわしの場合、それが許される。このスタイルが定着すれば、彼女たちは更なる爆発を見せることになるだろう。楽しみだなあ。三回戦「王将の天津飯」準々決勝「接骨院でサプライズ」

 

キャタピラーズ】

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吉本興業所属。しげみうどん(右)とサカモト(左)によって2017年に結成。しげみは大阪NSC30期生、サカモトは大阪NSC32期生。しげみうどんがかわいい。どういうつもりなんだろうか。とにかくかわいい。ボケとして自由奔放に立ち振る舞うサカモトもかわいい空気を醸し出しているが、しげみのかわいさは圧倒的である。なにせ声がかわいい。適度に高音で親しみやすい。かといってアニメ的なデフォルメが効いているわけでもない。ただかわいい。しかも、その声のかわいさが、見た目ときちんと結合している。また芸風にも繋がっている。サカモトのボケに対してツッコミを入れるのではなく全面的に受け入れる際の一言がビシッとハマる。とりわけ準々決勝の漫才は最高なので是非ともご覧いただきたい。無理せずに共犯的な関係性に持ち込める。この強み。いずれ発見されて、バラエティの人気者になってしまうことだろう。三回戦「遊園地デート」準々決勝「水族館デート」

以下、準々決勝戦(大阪予選)の出場者。

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大阪の記録(2019年11月29日-12月1日)

金曜の夕刻、午後五時の定時を迎えると同時に会社を出発する。愛車の軽に乗り込み、善通寺高速インターバスターミナルへ。バスの発車予定時刻は午後六時。通常、国道を使えば三十分程度で到着する距離だが、帰宅ラッシュや事故による渋滞に巻き込まれることを考慮して、高速道路を利用する。高速バスの発車時刻に間に合わせるために高速道に入る、という判断が何故だか自分の中でしっくりこない。私は何に納得していないのだろう。

午後五時二十分ごろ、善通寺高速インターから国道へ降りる。ここまで来ればバスターミナルは目と鼻の先だ。思わず安心して、そのまま近場のファーストフードのドライブスルーへ。しかし、これが浅墓な決断だった。いざ、店の敷地内に入ると、そこには十台ほどの車の行列が。あまりの光景に「うわっ」と思わず声が漏れる。とはいえ、そこはあくまでも“ファーストフード”という異名を持った、高速で商品が提供されることを売りにしている店である。この程度の行列ならば、あっという間に捌いてしまうに違いない。心配している自分にそのように言い聞かせながらひたすら待機していたのだが、これが遅々として進まない。ファーストはどうした、ファーストは。

ようやく私に注文する番が回ってきたころには、到着から十五分が経過していた。まったく冗談じゃない。ハンバーガーを単品で二つほど注文する。もはやポテトなど食べている暇もない。シンプルなハンバーガーで腹が満たされれば良いのである。料金所で金銭を支払い、受取口へ移動する。ようやく商品を受け取ることが出来る……と思いきや、店員から「しばらく時間がかかりますので、あちらの斜線の駐車場でお待ちください」と言われたので、驚いた。私が頼んだのはセットではない。単品である。それなのに、恐らくは私よりも多くの商品を注文しているだろう他の客よりも調理に時間を要するというのか。その不思議を店員に説いても無用に時間が過ぎていくだけなので、素直に従う。時刻は午後五時四十五分を過ぎている。ほんの少しの判断ミスで、よもやこのような緊迫した事態に陥ろうとは。しばらくして、店員によって商品が届けられる。無論、ここで店員に焦りをぶつけても意味はないし、なによりそんな自分を後々になって恥じることは容易に想像できたので、自然な笑顔で対応する。同じ人間同士で社会を構築するとは、つまりこういうことだ。店を出て、すぐさまバスターミナルの駐車場へ飛び込む。車を停め、二つのハンガーバーを速攻で口の中へと詰め込む。食べた、というよりは、補給した、という感覚に近い。

食べ終えたところで、荷物の中身をざっくりと確認する。旅行において、重要な道具は三点。「お金」「スマホ」「チケット(バスの往復チケットとライブのチケット)」。この三点があればなんとかなる。ここに「着替え」「イヤホン」「充電器」があると、より心強い。ターミナル内のトイレで用を足し、午後六時に到着したバスへと乗り込む。すぐさまバスは出発。善通寺から、大阪へ。移動中はスマホのラジオアプリで幾つかの番組を聴いて過ごした。何を聴いていたのかは覚えていない。半分ぐらい眠っていたような気がする。

午後九時半、OCAT(大阪シティエアターミナル)で下車。荷物を抱え、建物の外へ出ると、見慣れた光景が目の前に。私にとっての大阪はいつもこの場所から始まる。難波の繁華街へと歩き始める。夜の難波は大勢の人で溢れているので、まるで身の危険を感じない。人の波に紛れてしまえば、悪目立ちすることがないからだ。ただ、それは私がこの街の人間ではないから、そのように感じているだけなのかもしれない。紛れるからこそ体験する恐怖もあるだろう。

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記憶を頼りに歩いていると、いつも利用しているカプセルホテルの看板が見えてくる。【サウナ&カプセルホテル アムザ】。大阪にある他のカプセルホテルにも泊まってみたことがあるが、ここが私にとって最も居心地が良い。立地も良い。繁華街のド真ん中にあるので、ホテルの外に出れば、すぐさま盛り場へと繰り出すことが出来る。サウナや露天風呂も充実している。それらの入浴施設を目的に訪れる有名人も少なくないらしい。

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千日前中央ビルのエレベーターで七階に上がると、そこにアムザの受付が設置されている。靴を靴箱に預け、受付で宿代を支払う。今回は二泊三日を予定しているが、清算は一泊ごとに分けられる。一泊4,100円。二泊で8,200円。私がこの店を利用し始めた頃は一泊3,000円で泊まることが出来たものだが。時の流れをしみじみと感じさせられる。ロッカーのカギを受け取り、ロッカールームへ。着替えや帰りのバスチケットなど、今の段階では必要のない荷物を全てロッカーの中で詰め込む。アムザのロッカーは縦に細長く、いわゆるボストンバッグの類はきちんと収まらない。どうしても左右のどちらかに偏ってしまう。そのため、見た目がなんだかみっともない。

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「M-1グランプリ2019」ファイナリスト決定!

インディアンス(2010年結成)
オズワルド(2014年結成)
かまいたち(2004年結成・昨年ファイナリスト)
からし蓮根(2013年結成)
すゑひろがりず(2011年結成)
ニューヨーク(2010年結成)
ぺこぱ(2008年結成)
見取り図(2007年結成・昨年ファイナリスト)
ミルクボーイ(2007年結成)

来年は世代交代の年になるかもしれない。昨年のM-1グランプリが幕を下ろした直後、そんな話を耳にした。確かに、その予感はあった。後に“お笑い第七世代”を提唱する霜降り明星による優勝は、新しい世代による時代の幕開けを思わせた。また、復活後のM-1において、確かな存在感を見せていた常連組のジャルジャルスーパーマラドーナが、出場規定である結成15年を超えたことも、そう感じさせた大きな理由だろう。新陳代謝が起きる前触れだ。それから、昨年大会において、完全なる“危険球”と目されていたトム・ブラウンが、一部の審査員に高く評価されたことも革命的な事件だった。この判断により、M-1は漫才の枠組みを超越するような漫才師でも評価する、漫才の可能性の幅を広げる大会としても見られるようになった。

その結果が是である。正直、驚きを隠せない。これまで大会の象徴的な存在だった和牛、圧倒的なしゃべくり芸で多くの数寄者を唸らせたミキ、関西では高い人気を誇る実力派漫才師・アインシュタインなどといった、今大会の有力候補が軒並み敗退している。少なくとも、この中から一組は食い込むだろうと思われていた。それが全て落とされている。それだけでも衝撃なのだが、何よりファイナリストの中に、あのすゑひろがりずがいることに驚いた。準決勝戦に勝ち上がったと知ったときにも「上がれたのか!」と思ったのに、まさか決勝戦の舞台に躍り出ることになろうとは。トム・ブラウンを決勝に上げ、決勝の審査員に評価されたことに味を占めた準決勝の審査員が、うっかり調子に乗ったとしか思えない。無論、ベラボーに面白いコンビである。大いに張切ってほしい。

そして、ぺこぱ……『笑けずり』で見せていた漫才は完全に頭打ちで、彼らにはこれ以上の伸びしろはないだろうと勝手に決めつけていたことをここで反省したい。人は生きていれば変わるのである。芸人もまた変われるのである。昨年大会で披露していた漫才には確かに光が見えていた。それでも、それでも、ここに上がってくるほどの成長を見せようとは……。

一般の視聴者向けのメンバーではないだろう。『キングオブコント』ならば、きっとファイナリストをシークレットにしていたに違いない。そして、その認識度の低さが故に、大会全体が盛り上がりきらないかもしれない。だが、本質的にM-1は、もとい、R-1もKOCも、全ての賞レースは若手芸人のためにある。むしろこの選出は、敢えてテレビショウとしての側面を無視して、大会としての矜持を見せつけた結果といえるだろう。ならば、お笑いを愛する視聴者は、その意志をしかと受け止める必要がある。当日は心から漫才を楽しみたい。あと、敗者復活戦も楽しみたい。そっちから和牛かミキが上がってきそうな気がしないでもない。そして、とんでもないマクリを見せるかもしれない。まあ、それもまた醍醐味である。