白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「兵動大樹のおしゃべり大好き。10」(2019年1月30日)

2018年4月21日によしもと祇園花月で行われた第40回公演の模様を収録。構成に小堂捻典と翠光。余談だが、翠光は兵動と同期の女性ピン芸人杉岡みどり”のペンネームである。

公演の行われた時期が、ちょうど兵動が『わろてんか』に出演していた時期だったため、撮影の舞台裏について語るという氏のトークライブでは珍しく楽屋感の強い話で幕を開ける。濱田岳と対峙するシーンで起きたハプニングを顔面を駆使して再現する様はとても笑えた。だが、兵動大樹の真骨頂といえば、なんといっても奇跡的なシチュエーションの遭遇率の高さ。『わろてんか』以降のエピソードトークは、そんな兵動の才能(?)が大いに発揮されている。体調不良の最中で遭遇してしまったとんでもないホテルマン、もはやお馴染みとなっているにも関わらず予想外の言動で兵動を本当し続ける“大阪キッズ”藤田兄さんと参加した脱出ゲームの会場で驚くべき言葉を掛けてきたスタッフ、ロケ先の観衆の中で兵動を見ながら号泣している謎の男……どのエピソードも一級品の面白さ。

だが、本編最強のエピソードを選ぶとすれば、自身の行動によってとんでもない状況に陥ってしまった『脱毛』にせざるを得ない。とある男性専門の総合美容クリニックでヒゲの脱毛処理を受けていた兵動は、そこで下半身周りの脱毛を薦められる。というのも、これから介護を必要とする状態になった場合、下半身周りの毛が介護の妨げや疾患の原因となる可能性があるためだ。妻に相談し、試しに脱毛してもらうことを決める兵動だったが、その決意の裏で、妻に対するとある不安が心の中に浮き上がっていた……。ここから話はとんでもない方向へ転がり始める。ネタバレにならない程度に説明すると、一人で考えて一人で決めて一人で個室で何かをやろうとするとき、人は無軌道でヘンテコな行動を取ってしまいがちである……ということを、そのまま体現したかのような話が展開している。とても面白い。粗忽者な兵動らしいエピソードだった。

ただ、それはそれとして、芸人が介護を意識した話をしていることに、少し沁みるところもあった。思い返してみると、ライブの冒頭で娘二人の今の年齢を話していた時点で、既に布石を打たれていたのかもしれない。そういえば妻に「イライラするようになった」と言われていた話もあった。兵動のトークの上でしか知らない娘たちは成長を遂げ、対して、兵動もまた着実に老いていく。ごくごく当たり前のことなのだが、舞台の上に立っている人間もまた人間であると改めて思い知らされたような気がした。

これら本編に加えて、特典映像として『兵動大樹のおしゃべり大好き。39』(2016年9月18日・大阪市中央公会堂)の厳選トークロウリュウ』『じろう』と、兵動の愛する個性派芸人たちが集結して芸を披露する『兵動大樹を楽しませる会』を収録。『脱毛』よりも緊迫したシチュエーションが描かれている『じろう』は、痛みに苦しんでいる兵動のことなど気にも留めない娘たちの本編では語られなかった魅力が存分に引き出されていて、とても良かった。なんてステキな家族だろうか。今後も、この家族とともに、私も人生を歩んでいきたい。歩むな。

■本編【92分】
兵動大樹のおしゃべり大好き。40」(2018年4月21日・よしもと祇園花月

■特典映像【77分】
兵動大樹のおしゃべり大好き。39」(2016年9月18日・大阪市中央公会堂
 『ロウリュウ』『じろう』
兵動大樹を楽しませる会」

「今夜、笑いの数を数えましょう」(いとうせいこう)

今夜、笑いの数を数えましょう
 

芸人ではない人間が「笑い」について語ることほど滑稽なものはない。どれほどの理屈をこねくり回したところで、舞台に上がった経験のない人間の語る「笑い」などというものは、所詮は机上の空論に過ぎないからだ。尤も、広い世間には、自分の好き嫌いが一般の評価であると思い込んでいる、自信に満ち溢れた井の中の蛙も少なくない。そういった人間に限って『ドキュメンタル』のレビューで某が面白くなかったなどと無責任に語りたがる。“松本人志の実験”と称したコンセプトをしっかりと噛み締めてもらいたい。……逆にいえば、舞台に上がった経験のある人間が「笑い」について語る場合には、こちらはグウの音も出ないということになる。なにせ向こうは観客を笑わせることで金銭を稼ぐ世界に生きる者だ。常識的世界で常識的作業を淡々と処理している庶民の我々では到達することの出来ない、実践としての「笑い」を知る者だ。

本書『今夜、笑いの数を数えましょう』は、そんな脅威の「笑い」論を余すことなく詰め込んだ一冊である。数多の舞台を経験している才人・いとうせいこうが、「笑い」の担い手たちとトークライブ形式で「笑い」について話し合っている。このような形式の本の場合、単なる思い出話に終始することも少なくないが、本文ではきちんと「笑い」についての話が展開されている。それも、単なる上澄みではなく、奥深いところまできちんと掘り下げる。例えば、いとうがバカリズムとの対談中に紹介した、ある哲学者の〈笑いはノイズ的な反応〉という話から、「笑い」とは〈笑わらない理由を消す〉〈神経の興奮の行き先を混乱させる〉という話へと展開するくだりには、非常に考えさせられた。どうして「笑い」が起こるのか、これほど根源的な話を聞ける場を私は他に知らない。この他にも、倉本美津留ケラリーノ・サンドロヴィッチ枡野浩一宮沢章夫、きたろうといった面々が、自身の経験に基づいた「笑い」の話を展開している。誠に稀少である。とりわけ、実際に芸人としても活動していた経験のある枡野浩一が、お笑いを受容する側として語っている話の内容は必見。不謹慎なネタで笑うことについて、真剣に話し合っている。

今後、「笑い」について考える上で、必ず読まなくてはならない一冊である。

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2019年5月の入荷予定

14「ぶちぶちシソンヌDVD ~名言バラエティー~
29「M-1グランプリ2018~若き伏兵はそこにいた~

どうも菅家です。皆さんは菅家ですか?

五月といえばゴールデンウィーク……ということで、私も今日から連休に突入しております。社会人になると、なかなか長期の休暇を取ることが出来ませんので、この公的な連休を利用して、ここぞとばかりにくつろいでます。とりあえず無暗に蓄積されている芸人のDVDを消化すべきところなのですが、今はひとまず、配信されたばかりの『ドキュメンタル』シーズン7を視聴しております。 

コンプライアンスを完全に無視した、非道かつ悪辣な行為がまかり通る様に爆笑しております。芸人という名の治外法権ここに極まり。常識の世界に生きざるを得ない我々は、彼らが常識の壁をブッ壊している様を見て発散するしかないのであります。これぞ日本の芸能、悪しき者どもの狂宴ぞ。

そんな五月の気になる作品は以上となっております。久方ぶりのリリースとなる広島ローカルのバラエティ番組『ぶちぶちシソンヌ』の最新パッケージも気になるところですが、やはり一般的には『M-1グランプリ2018』のソフト化に注目が集まっているのではないでしょうか。中身もかなりの充実ぶり。決勝戦の模様は勿論、敗者復活戦での白熱のパフォーマンスもしっかり収録。更にM-1ファイナリストたちを追ったドキュメンタリー番組『M-1グランプリ アナザーストーリー』、映画館を貸し切って一日限定で上映したという『霜降り明星THE MOVIE』も特典として収録。惜しむらくはスーパーマラドーナ武智の動画が収められていないらしいところで……ダメですかね、やっぱり。

ちなみに、霜降り明星のネット番組をソフト化した『霜降り明星のパパユパユパユDVDスペシャル』は、6月12日リリース予定です。

「バイきんぐ単独ライブ「ROYAL」」(2018年10月31日)

バイきんぐ単独ライブ「ROYAL」 [DVD]

バイきんぐ単独ライブ「ROYAL」 [DVD]

 

2018年8月9日・10日に品川区立総合区民会館きゅりあん小ホールで開催されたライブを収録。企画構成に小峠英二西村瑞樹西条充敏、渡辺隆(錦鯉)、我人祥太。『キングオブコント2012』でダークホース的存在だったバイきんぐが他の実力者を押さえて優勝を果たしてから、間もなく七年。今やバラエティ番組には欠かせない存在となった彼らだが、それでも年に一度の単独ライブは欠かすことなく継続している。バナナマンバカリズムサンドウィッチマンなど、多くの人気者たちが彼らと同様のペースで単独ライブを敢行しているため、もはやそれが当たり前であるかのように感じられてしまうが、これはとてつもないことなのである。新しいネタを作り、コンビで稽古して、彼らのネタを期待している観客の前で初めて下ろすなんて、そう易々とこなせるものではない。

そう。簡単に出来ることではない。そのため、多くの人気芸人たちは、年に一度のライブを重ねていくうちに、少しずつネタの精度を落としてしまうことが多々ある。テレビバラエティで求められる筋肉とネタを作るために必要な筋肉は違っているため、どちらかに偏ってしまうと、バランスが崩れてしまうのである。事実、安定して面白いネタを作り続けている印象を与えるバイきんぐにも、明らかにクオリティが低迷している時期があった。小峠のツッコミでコント全体を無理矢理に引っ張っているような、そんなパワーバランスの悪い時代があった。しかし、今は違う。今の彼らは、完全に……狂っている。どうかしている。正気を失っている。頭のネジを巻き過ぎて、すっかりバカになってしまっている。どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

例えば『昼下がり』というコントがある。パジャマ姿で寝っ転がってテレビを見ている小峠の家にやってきたのは、西村扮する訪問販売員風の男。ドアを開けて、中に招き入れると、男は一言目にこう叫ぶ。「宗教でーす!」。戸惑いながら「えぇ?」と聞き返す小峠に、男はまたも「宗教でーす!」と叫ぶ。満面の笑顔で。かなり、どうかしている。その後も、このハイな宗教勧誘の男と、戸惑いながらも落ち着いた対応を取り続ける小峠のやり取りが続く。「今日は宗教の勧誘に来ました!」「眩しいくらいに直球だね!」「最初に言っておきますが、宗教なんで多少お金はかかります!」「根掘り葉掘り言うね!」……。そもそも宗教の勧誘をコントのテーマに取り扱っている時点でかなり攻めている印象を受けるが、その内容もアグレッシブでスリリング。アングラで活動している地下芸人ならまだしも、バイきんぐレベルの芸人がこういったテーマを直球でネタにしていることに、妙な感動を覚えてしまった。

この他のコントも、やはりどうかしている。オープニングコント『池』では、西村が本能に任せて小峠の家の池の水を抜いてしまうし、『寿司屋』ではただ仕事として割がいいというだけで寿司屋で働いているために寿司職人としての修業を断ってしまうし、『コンビニ』には何の要求もせずに延々と「強盗だ!!!」と言い続けるクレイジーな輩が現れるし、『飲みの席』にはこれまたアウトローな人間が登場する。総じてヤバい。でも、たまらなく面白い。とりわけ、最後に披露されたコント『オフィス』は珠玉の作である。昨日、クビにした筈の西村が、何故かまた次の日もやってくる。とんでもない。だが、これが不思議と、さわやかな余韻を残す。狂っている彼らの姿に、日常の窮屈さから脱する自由さを感じてしまうためだろうか……否、だからといって、彼らのように成りたいとは思わないが。個人的には、ちょっとシティボーイズの超名作『漂流商事』を思い出した。

これら本編に加えて、特典映像としてライブの幕間映像『はじめて2人で海キャンプ』の完全版を収録。西村が企画したイベントに小峠が振り回される、お馴染みの映像である。もはや単独ライブの定番となっているのだが、毎回、西村以上にはしゃいでいる小峠の姿が笑えて仕方がない。往年の『ウンナンの気分は上々。』を思わせる。地上波でも十分に耐え得るクオリティだと思うので、どっかのテレビ局で取り上げてもらえないだろうか……。

■本編【63分】
「池」「カフェ」「寿司屋」「CAFE」「コンビニ」「建築現場」「マッサージ」「飲みの席」「昼下がり」「オフィス」

■特典映像【31分】
「幕間映像「はじめて2人で海キャンプ」完全版」
「エンドトーク

「爆笑オンエアバトル2019」(2019年3月24日)

「漫才:ドライブ」。バイト先の店長からドライブに誘われて喜んでいた草薙だったが、宮下からドライブの概要を説明されると、あまり楽しくなさそうな気がしてきて……。ネガティブな感情をこじらせた草薙の妄想が、非現実的な裏世界を生み出していく様子を笑いに昇華している。裏世界に独自性を見出すのではなく、裏世界を妄想して不安になって独りよがりに動揺し始める草薙の過剰さが笑いに繋がっている点が興味深い。とはいえ、“バイト先の店長とドライブに行く”という気の休まらない状況が話の発端となっているため、一定の共感は得られるという絶妙さ。一方で、「俺はお金の発生しないところで芸は見せない」などのように、ふとした瞬間にポジティブな姿勢を見せることで、人間としての深みを感じさせている。このバランス感がたまらない。一方で、ツッコミの宮下が、それなりに気の利いたことを言っているにも関わらず、あまり観客にウケていない様子だったことが気になった。ちょっとウケようという意図が見えているからかもしれない。今後、何かしらかの対策が必要か。

 

 

  • ザ・マミィ【533kb】

「コント:霊能者」。「死んだ親父にもう一度会いたい」という青年(林田)から依頼を受けた霊能者の松ノ門雲州(酒井)は、自らの身体に父親の霊を宿す。しかし、彼の真の目的は、幼かった自分と病気がちだった母親を捨てて出ていってしまった父親に、復讐を果たすことだった。この世に存在しない父親と母親の幻影に振り回されている青年の姿は、冷静に考えてみると、なかなかに悲惨である。だが、そんな陰鬱な関係性に不運にも巻き込まれてしまった霊能者の存在が、状況を一転してドタバタコメディへと発展させる。また、この霊能者の台詞が、いちいち可愛げがあるからたまらない。なにせ一人称が「松ノ門」である。字面は堅いが、言葉の響きは「ドラえもん」を思わせる。可愛くて仕方がない。脚本も丁寧に作り込まれている。青年と両親のやり取りはしっかりと組み立てられているし、それに伴い、彼らに対する松ノ門のリアクションも右肩上がりに良くなっていく。目が覚めるたびに繰り出される「どういう状況!?」の言い回しも素晴らしい。個人的には、青年に銃をぶっぱなされたときの「クレイジーすぎる! こだわりの内装が……!」という台詞がピカイチ。無関係な言葉同士を組み合わせることで、後の台詞をじっくりと理解させるように仕組んでいる。そして終盤、全ての事態が終結されるかと思わせておいて、あの母親のクレイジーな発言である。たまらない。惜しむ点があるとすれば、あまりにもあっさりとし過ぎたオチだろうか。否、あそこで切る潔さこそを、褒めるべきなのかもしれない。

 

 

「コント:遭難」。飛行機が不時着、辿り着いた無人島で救助を待ち続けていた乗客たち(藤田)だったが、何の音沙汰もないまま三日が過ぎ、食糧も底を突いてしまう。そんな最中、ある男(﨑山)が全員にピストルを突き付け、島に自らの独裁国家を築き上げることを宣言する。「ピストルを突き付けて脅迫する」という行為と「建設的に全員が助かる方法を的確に指示する」という発言のギャップを笑いに昇華しているコント。手法としてはベーシックだが、だからこそ丁寧に雑味を加えず表現するとしっかり面白い。構成面だけを意識しながら鑑賞すると、その練り上げられた台本に感心せざるを得ない。例えば、低姿勢かつ丁寧な口調で登場しておきながら、ピストルを取り出した途端に性格を変貌させるクレイジーな冒頭。一度、口答えした藤田のこめかみにピストルを突き付けるくだりは一見すると無駄に思えるが、﨑山演じる男のヤバさを引き立てるための大事なプロセスだ。この丁寧なキャラクター描写があったからこそ、その後の男の目的(=コントの本題)がじわりじわりと明らかになっていく展開で、しっかりとカタルシスが生じる。途中、拳銃の存在を再認識させ、再び緊張感を走らせるも、想像を裏切る場面を盛り込んでいるのも良い。キャラが確固としてぶれていない。それを受け止めるツッコミ役の藤田の存在も大きい。やや説明的ではあるが、端的に﨑山の発言の本質を言語化することで、そのギャップの構築に一役買っている。意外性という点では物足りなさもあるが、豪速球の力強さを改めて認識させられる質の高いコントだった。

 

 

「漫才:遠足」。小学生が遠足に出掛けるシチュエーションを二人で再現する。意図が伝わりづらいショーゴのボケを、たけるが備中神楽仕込みの独特なイントネーションによるツッコミで解説するスタイルの漫才。ただ、笑いが起きるまでの展開を思うと、漫才というよりもむしろ掛け言葉の類いに近いような印象を受ける。ショーゴのボケがどのような意図によるものなのか疑問に感じている観客に、たけるがツッコミという名の回答を披露することで、疑問が晴れて笑いが起きているからだ。近年の例でいえば、オリエンタルラジオの『武勇伝』に近いものがある。ただ、たけるが単なる回答を見せているわけではなく、さりげなく偏見が盛り込まれている点が、少なからず笑いに作用しているようにも思える。「い~や、黒霧島のペース!!!」「い~や、マイメロちゃんの弁当!!!」「たぶんお前の親、喪服の色、ピンクだろ!!!」などは、特にその傾向を感じさせられた。現状のスタイルを思うと、そちら方面にシフトしていく可能性もあるだろう。だが、個人的には、たけるの「リンダリンダなのだ!」という言い回しが最も印象に残っている。単純に、こういうバカみたいな言い回しが、たけるは妙に似合っている。一度、バラエティでハマれば、とんでもない人気者になるかもしれない。

 

 

「コント:朝の電車」。早起きして、いつもよりも一本早めの電車に乗れた青年(水川かたまり)の前に現れたのは、辺り構わず怒鳴り散らすヤバいおじさん(鈴木もぐら)。ところが、絡まれないように背を向けながら観察していると……? 登場時の行為と言動のギャップが笑いに昇華されているという点では、先のファイヤーサンダーのコントに似ている。ただ、シチュエーションが日常的で、しかもテレビメディアではあまり取り上げられることのない類いのクレイジーなおじさんに軸を置いているため、ファイヤーサンダーのコントとは別ベクトルの緊張感に満ち溢れている。玉が転がれば、どんなネタでもオンエアさせる。そんな『オンバト』の矜持を再認識せざるを得ない。また、コントの中に登場する人々が、かなり具体的に描写されている点も見逃せない。これにより、おじさんの優秀さを様々な角度から描くことが出来るし、様々な人が行き交う朝の電車風景を思い浮かべることも出来る。コントの世界に入り込める。だが、このコントの特性は、なんといっても「ヤバいおじさんがリアル」な点にある。だからこそ、ヤバいおじさんが実は良い人……というギャップの笑いと同じぐらいに、このおじさんのシンプルにヤバい部分も笑いに昇華されるのである。コントで演じられていることではあるが、そこには嘘がないような気がする。なので、ヤバいおじさん同士のバトルのくだりは、正直なところ蛇足に感じられたのだが、あれも構成上で必要な要素だったのだろう。あと、言及するほどではないが、冒頭で水川が口にする独り言の妙なイントネーションが、ちょっと面白かった。

 

【今回のオフエア
481kb:ヒコロヒー
393kb:キャメロン
373kb:ヤーレンズ
349kb:ネイビーズアフロ
309kb:かが屋

松竹芸能所属の女性ピン芸人、ヒコロヒーが惜しくも敗退。名前を見かける機会の多い人なので、普段はどんなネタを演じているのか少し楽しみにしていたのだが。残念。以下、ヤーレンズネイビーズアフロかが屋と、他メディアで名前を見かける機会も少なくない芸人が軒並み敗退。とりわけ、マセキ芸能社所属のコント師かが屋の最下位には驚いた。もてはやされている現状に甘んじるな、というメッセージだろうか。キャメロンはホリプロコム所属のお笑いコンビ。M-1では二回戦敗退が最高らしいのだが、どのような点が評価されて、番組への出場を決めたのだろうか。いずれネタを目にする機会に恵まれることを祈る。

 

爆笑オンエアバトル2019」は、「爆笑オンエアバトル 20年SPECIAL」の第二部として放送された。司会進行はタカアンドトシ。審査員は過去に『爆笑オンエアバトル』『オンバト+』でオンエアされた経験のあるお笑い芸人100人。出場者は、養成所の講師を務めている大輪教授とユウキロック(元ハリガネロック)が担当。第一部の模様は、「オンバトサポーター」によるレポート、「ヨイ★ナガメ」による番組の爪折り記事を参考にされると良いと思われます(敬称略)。当時、番組を見ていた世代が、こうして芸人となって活躍していることを考慮すると、番組の最後に司会のアナウンサーが言っていたことは微塵も間違っていなかったんだなあと思い知らされる。

「新しい笑いを作るのは、挑戦者の皆さんと客席の皆さん」

「そして、テレビの前の、あなたたちです!!!」

この志を忘れないようにしましょうね。いやマジで。

「映像コントアワード2018」の件。

どうも菅家です。

賢明な読者の皆さまなら、かつて私が「映像コントアワード2016」および「映像コントアワード2017」というイベントにコメントを寄せていたことを、しっかりと覚えているのではないかと思いますが……覚えていないのならば脳味噌を搾って思い出してください……まあ別に思い出さなくても構いませんけど……実は2018年もコメントを寄せていました。なんと、これで三年連続、同イベントにコメントを寄せたことになります。でも、相変わらず、審査の方には参加させてもらっていません。私はどういうポジションなのでしょうか。

というわけで、これまでと同様に、今回も受賞作品とそれに寄せたコメントをここに掲載したいと思います。時間の有るときにゆるーく鑑賞されると宜しいのではないかと存じます。

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2019年4月の入荷予定

17「タイムマシーン3号単独ライブ「餅」
24「ザ・ギース コントセレクション「Pretty Best」
24「プリンアラモード」(ニッチェ)

どうも菅家です。三月中に東京(オードリー in日本武道館)と大阪(KAJALLA「怪獣たちの宴」)に行ってきたので、心身ともに疲れ切っております。私の場合、日常を離れて非日常的な空間に身を置くと、その瞬間はとても心地良いのですが、いざ日常に戻ると、そのギャップでとても苦しい気持ちになってしまうんですが、皆さんはどうですか。それならば、もう何処にも出かけなければいいのではないか、と思われるかもしれませんが、それでも非日常的シチュエーションを渇望する気持ちは抑えられません。困ったものです。さて、新年度の四月ですが、以上のラインナップとなっております。詳細は各自で調べてください。個人的にはザ・ギースのベスト盤が気になるところですが、どんなネタが入っているのか、未だに公表されていません。ンモー。気になりますねえ。

「コント集団 カジャラ 第四回公演「怪獣たちの宴」」(2019年3月21日)

怪獣を目撃するために大阪へ行くことにした。

無論、ここでいう怪獣とは、いわゆるゴジラモスラキングギドラのような特撮怪獣のことではなく、また、ネッシーヒバゴン、モケーレ・ムベンベのような未確認生命体のことでもない。ラーメンズ小林賢太郎が代表を務めるコント集団・カジャラの第四回公演のことである。タイトルが『怪獣たちの宴』というところから、このように表現した次第である。

カジャラの出演者は回が変わるたびに変動している。今回は、なだぎ武竹井亮介小林健一、加藤啓、辻本耕志、小林賢太郎といった顔ぶれが舞台に上がる。竹井、辻本、小林は第一回から欠かさず参加し続けている皆勤賞だ。……尤も、小林はカジャラの代表なので、絶対に参加しなくてはならない立場なのだが。なだぎ武は史上初の芸人からのキャスティング。以前、かつて“アクシャン”として活動していた安井順平が参加したこともあったが、現役バリバリの芸人が登場するのは初めてのことである(……と、ここまで書いたところで、そういえば辻本が“フラミンゴ”というトリオのメンバーだったことを思い出したが、ここ数年すっかり個々の活動メインになってしまっているみたいなので、敢えて無視する)。

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