白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

今更ながら「R-1ぐらんぷり2018」ファイナリストの件

ルシファー吉岡マセキ芸能社

カニササレ アヤコ(フリー)

おいでやす小田(よしもと)

おぐ(SMA)

河邑ミク松竹芸能

チョコレートプラネット長田(よしもと)

ゆりやんレトリィバァ(よしもと)

復活ステージ2位

濱田祐太郎(よしもと)

紺野ぶるま松竹芸能

霜降り明星 粗品(よしもと)

復活ステージ1位

スマホがブッ壊れたり、家族が次々にインフルエンザで倒れたり、新しい仕事の段取りがなかなか整わなかったり、そんなこんなの疲労からか体調を崩したり(現在進行形)、なにかとろくなことがない二月。なので、そんな最中に「R-1ぐらんぷり2018」ファイナリストが発表されたからといって、即座に反応できなかったのも、仕方がないというものである。決して、決してR-1に対する興味が薄れてしまった訳ではないことだけは、ご理解いただきたい。……たぶん。

というわけで、遅ればせながら肝心の決勝メンバーを確認したのだが、なかなかにバランスが良いのでは。過去に決勝進出経験のあるゆりやんレトリィバァ(四回目)、ルシファー吉岡(三回目)、おいでやす小田(三回目)、おぐ(二回目)、紺野ぶるま(二回目)の五人に、初の決勝進出者であるカニササレ アヤコ、河邑ミク、チョコレートプラネット長田、濱田祐太郎霜降り明星 粗品の五人。事務所で見ても、よしもとが五人で非よしもとが五人。男女比が六:四と昨今の女性芸人の活躍ぶりを反映しているようで、これも良い。

初の決勝進出者だけを見ても、かなり魅力的。フリーで活動しているからこそ芸風が予想できないカニササレ アヤコ、松竹からの新たなる刺客・河邑ミク、ピンでのネタが予想できないチョコレートプラネット長田、「NHK新人お笑い大賞」をきっかけに注目を集めている盲目の漫談家濱田祐太郎漫才コンビを結成するより前からピン芸に高い注目を集めていた霜降り明星 粗品……見どころしかない。

これらのメンバーに加えて、準決勝戦で敗退した芸人が復活する“復活ステージ”枠が二枠用意されている。メンバーを見ると「石出奈々子」「土肥ポン太」「ナオユキ」「中山女子短期大学」「ヒューマン中村」「マツモトクラブ」「レイザーラモンRG」といった決勝進出経験者から、「アイデンティティ田島」「おばたのお兄さん」「ZAZY」「サツマカワRPG」などの注目株まで。果たして勝ち上がるのは誰なのか。

R-1ぐらんぷり2018」決勝戦は3月6日放送予定。見るのは忘れないように……。

「6人のテレビ局員と1人の千原ジュニア」(2017年5月17日)

2016年3月25日に恵比寿ザ・ガーデンホールで開催されたライブを収録。

千原ジュニアといえば、「人志松本のすべらない話」「IPPONグランプリ」「にけつッ!!」などの番組での活躍ぶりから、大喜利やエピソードトークのように自身の視点や思考を反映した笑いを得意としている印象が強い。しかし、その一方で、ジュニアは他人の台本に身を委ねてしまうことで、プレイヤーとしての自らの能力を意識したライブも敢行している。例えば、2006年に行われた「6人の放送作家と1人の千原ジュニア」では、宮藤官九郎鈴木おさむといった人気放送作家たちの手掛ける企画・台本に挑んでいる。また、2014年に千原ジュニア・生誕40周年を記念して開催されたライブ「千原ジュニア×□」では様々なジャンルの人たちとコラボレーション。いずれのライブでも、彼の力だけでは生み出されることのなかったであろう笑いの世界が表現されている。

そして今回、千原ジュニアが目をつけたのは、人気バラエティ番組を手掛けている各局の演出家たち。「ヒルナンデス」「ワイドナショー」「水曜日のダウンタウン」「超絶 凄ワザ!」「ゴッドタン」など、今を時めく名物番組を手掛けている六人のテレビ局員たちが“千原ジュニア”という素材を駆使して、テレビとはまたベツモノの板の上の世界を作り上げている。但し、残念なことに、「アメトーーク」「ロンドンハーツ」などの人気番組を手掛けている加地倫三テレビ朝日)パートは未収録。理由は分からないが、ゲストとして出演したという田中卓志アンガールズ)絡みの何かがあったのかもしれない。そのため、本編には、五人のテレビ局員による舞台が収録されていることになる。タイトル的に不味いような気がしないでもない。

とはいえ、本編を視聴している最中に、物足りなさを感じることは一度もなかった。各局のテレビマンたちが、千原ジュニアを存分に活かした企画を用意しているためだろう。その手法も各自さまざま。某人気ドキュメンタリー番組風の映像で大喜利職人としての千原ジュニアをどんどん追い込んでいく末弘奉央(NHK)、「2016年、もしも千原ジュニアが全くの無名の若手芸人だったら、やはり“売れる”のだろうか?」という空想世界を構築した内田秀実(日本テレビ)、千原ジュニアによる鉄板のエピソードトークを様々な手段で妨害する佐久間宣行(テレビ東京)など、それぞれの経験によって培われた技法でもって千原ジュニアの良さを引き出している。

その中でも圧倒的だったのは、竹内誠(フジテレビ)と藤井健太郎(TBS)。

竹内誠(フジテレビ)が用意した企画は「daiben.com」。【ジャンルの専門家たちが面白いと思う話】を千原ジュニアが代弁、その巧みな話術でもって、面白いエピソードトークへと昇華する。恐らく、ジュニアの話芸の魅力を引き出すために打ち出された企画だったのではないかと思うのだが、ジュニアに代弁をお願いする代弁依頼人の個性があまりにも強烈過ぎて、本来の企画意図が吹っ飛んでしまっている。否、厳密にいえば、二人目の代弁依頼人「気象予報士天達武史」においては、きちんと企画が成立している。ただ、一人目の代弁依頼人「きのこ愛好家・堀博美」が、あまりにも衝撃的過ぎて、天達氏も天達氏の代弁話もまったく記憶に残らない。それぐらいに衝撃的な人物で、持っているエピソードも濃厚で、ただただたまらなかった。思うに、むしろ『アウト×デラックス』向けの人物だろう(話の内容は放送できないだろうが)。ただ、企画そのものは確かに魅力的で、本編に収録されている企画の中で最も“テレビ向け”に感じられた。

そんな(結果的に)人間力の強さを見せつけていた竹内氏に対して、藤井健太郎(TBS)は徹底的に考え抜かれた企画を考案。その内容は、過去の千原ジュニアの映像素材をかき集めて編集、現在のジュニアとアドリブで会話、対決するというもの。……正直、企画そのものに関しては、誰もが思いつくことだろう。ただ、それを実際にやってみようなどと思った人間は、そんなにいない筈だ。何故ならば、それを実現するためには、たった一度きりのライブを成立させるために出来る努力の範疇を優に超えてしまうからだ。実際に映像を見れば、そのバリエーションと密度に驚かされることだろう。というか、この企画を見るためだけに、本作を購入してもいい。あの「水曜日のダウンタウン」、あの「クイズ 正解は一年後」を手掛けている名プロデューサーが、千原ジュニアが口にするであろう発言を想定して、過去の映像素材をかき集めて、このライブに全力で臨んでいる壮絶な23分を確認していただきたい。

ちなみに、各チャプターの冒頭で、各局の担当者へのインタビューが取り上げられているので、そちらにも注目してもらいたい。それぞれのテレビに対する意識の違いみたいなものが感じられ、なかなかに面白いぞ。

◆本編【125分】

1ch(NHK):末弘奉央

4ch(日本テレビ):内田秀

5ch(テレビ朝日):加地倫三(※本編未収録)

6ch(TBSテレビ):藤井健太郎

7ch(テレビ東京):佐久間宣行

8ch(フジテレビ):竹内誠

◆特典

千原ジュニア放送作家高須光聖によるオーディオコメンタリー

「トップリードのコント集」(2010年12月1日)

トップリードのコント集 [DVD]

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太田プロ所属のお笑いコンビ、トップリードの傑作選である。

あまりにもシンプルなタイトルからは、コントの演じ手としての意地とプライドが感じられる。事実、本編には、彼らの代表作だけが厳選して収録されている。幕間映像は一切無い。実に潔い。“トップリード”名義の作品は、本作の他に2011年11月に開催された単独ライブを収録した『単独ライブ 二日坊主』が存在する。この二枚だけである。本作のリリース後、トップリードは「オンバト+」初代チャンピオンに輝き、「キングオブコント」で二度の決勝進出を果たしている。それなりの功績だ。そのことを思うと、この本数はあまりにも少なすぎやしないか。売り上げが芳しくなかったのかもしれないが、もっとソフトがリリースされても良かったのではないか……と今更ながらに思う。

本編には七本のコントを収録。本作はお手ごろな価格で若手芸人のネタを楽しめるシリーズ【笑魂(Short Contents)】の一作としてリリースされたため、ボリュームはやや控えめだ。とはいえ、ここは敢えて、「少数精鋭」という言葉を使わせていただきたい。なにせ、本編を再生し始めて、いきなり始まるコントが『狭いラーメン屋』である。文字通り、新妻が店長を務める“狭いラーメン屋”を訪れた和賀が、その店ならではの特殊な調理法を目の当たりにする様子を描いている。通常のコントのように、当事者同士がボケとツッコミの関係性にあるのではなく、コントの舞台が持つ特異性が結果的に二人をボケとツッコミの関係にしてしまう。とはいえ、決して非現実的とまではいかない、ギリギリ現実味のある設定なので、シチュエーションを無理矢理に作り上げているような印象は与えない。バランスの整った、素晴らしいコントである。

この他のコントも名作揃い。新妻の新宅への引っ越しのお手伝いを終えた和賀が雑談中に衝撃の事実を知ることとなる『引っ越しのお手伝い』、恋人と別れた悲しさから友人の新妻とベロベロになるまで酔っ払った和賀が翌日に己が犯した過ちに気付かされる『二日酔い』、トイレの前でコンパの作戦を打ち合わせる二人に秘められた想いとは?『コンパのトイレタイム』などなど……いずれのネタも巧みな構成がとても魅力的だ。芸能の世界において、決して目立つ見た目をしているとはいえない二人だが、だからこそ、それぞれの魅力を存分に引き出せる台本を適切に作り上げている。

これら傑作コントの中でも、突出して素晴らしいネタが『雨の建設予定地』と『先行く男』である。『雨の建設予定地』は『狭いラーメン屋』と同様、特異なシチュエーションが結果としてボケとツッコミの関係を作り上げているコントだ。雨の建設予定地を確認にやってきた二人が、傘とお土産で手元が塞がっている中でぐちゃぐちゃになりながら打ち合わせを重ねていく様子はとても滑稽で、しかし、その何処か見覚えのある混乱した状態に、共感を覚えずにはいられない。片や『先行く男』は、新妻演じるせっかちな男が、あまりにもせっかち過ぎて未来を予測していくという、他のコントとは一転してSF色の強いネタだ。とはいえ、あくまで舞台は日常的な風景で、いわゆる「すこしふしぎ」な魅力に満ち溢れている。当たり前のことのように平然と未来を先読みする新妻と、そんな新妻の言動に戸惑いを隠せない和賀のやり取りは、シチュエーションはまったく違っているものの、これまた『狭いラーメン屋』における、その状態を当たり前に感じている者(新妻)とその状態に始めて遭遇して驚きを隠せない者(和賀)の差異ある関係性を思わせる。その姿勢からは、異常を異常と突き放さない優しさが垣間見える。

これら本編に加えて、特典映像としてコント『雨男』と本編に収録されているコント『二日酔い』のオチの後の流れを撮影した『二日酔い おまけ』を収録。『雨男』は超が付くほどの“雨男”なアメミヤ(新妻)が、友達とキャンプに出掛けるのを楽しみにしている様子を描いたコント。基本的には笑えるのだが、雨が降っている状態がデフォルトなアメミヤの不遇な扱いがあまりにも哀しく、本編に収録されているネタに比べて作品性が強い。純粋にネタとしても勘当させられるのだが、和賀の「俺、こいつとは一生、一緒にいようって」という台詞は、今となっては非常に重い。もはや舞台に戻ることはなかったとしても、そうし続けてくれるのだろうか。

最後に改めて。勿体無い。

◆本編【39分】

「狭いラーメン屋」「ヨクルトおばさん」「引っ越しのお手伝い」「二日酔い」「雨の建設予定地」「先行く男」「コンパのトイレタイム」

◆特典映像【11分】

「雨男」「二日酔い おまけ」

トップリードの件について

単独ライブ 二日坊主 [DVD]

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トップリードが解散するという。

当然、想定される展開である。他人の家に土足で踏み込んだ男が穏やかに芸能活動を継続することは無理というものだ。

だが、そこを敢えて、そんなどうしようもない人間ですらも包み込んでくれるのが芸能という世界なのだから、赦されても良かったのではないか。そんなことを言いたくなってしまうのは、本件において、私がまったくの部外者であるためである。無責任な立場から語っている。

実際、彼は加害者であるから、言うまでもなく被害者が存在する。被害者にしてみれば、また、被害者と同等の体験をしている方々にしてみれば、今後も彼が芸能の世界でのうのうと生きていくことなど、とても許し難いだろう。分かっている。分かっているが、どうもやりきれない。

1998年に幼馴染み同士でコンビを結成。東京アナウンス学院在学中の2001年に太田プロよりデビュー。しばらく芽の出ない日々が続いたが、2008年ごろからコント師としての才能を開花。2011年に「オンバト+」初代チャンピオンに選ばれる。2011年、2012年に「キングオブコント」決勝進出。2014年からは漫才にも挑戦し始め、「THE MANZAI」「M-1グランプリ」にも出場している。

決して目立つタイプのコンビではなかった。だが、それでも地道に、自らが出来るコントを作り続けていくだろうコンビだった。どうしてそれが出来なかったのか。そのことが腹立たしく、哀しく、惜しい。

昨年のタイタンシネマライブで彼らのコントを観た。父親に娘との結婚を嘆願する男のコントだ。娘との結婚を断られるたびに、男が時間を過去へと巻き戻し、父親が結婚の申し出を断る理由を一つ一つ潰していくという設定が、とても素晴らしかった。ありがちな状況にSF的要素を絡める面白さ。それを観た私は「ああ、トップリードはやっぱり、いつでも面白いコントを作り続けてくれるのだな」と感慨深い気持ちになった。それなのに。

せめて、解散するのであれば、限界点に辿り着いてもらいたかった。同じラーメンズファンとしても頑張ってもらいたかった。こんなことで終わってもらいたくなかった。でも解散するというのだから仕方がない。それぞれにそれぞれの道を邁進してもらいたい。

……ほとぼりが冷めたら、また復活してもいいのよ?(諦めが悪い)

さらば愛しきスマホ

私の傍らでスマホが揺れている。

着信があるわけではない。人付き合いの良くない私と連絡を取ろうという奇特な人間は少ない。無論、メールが届いているわけでもない。とはいえ、スヌーズ設定にしているわけでもない。ただ延々と、ひたすらに延々と、再起動を繰り返しているのである。どうしてこのようなことになってしまったのか。

事の起こりは昨晩である。家族がインフルエンザに倒れ、自分も二の舞を演じないように早く眠って健康的に過ごさなくては……と、昼間のうちに強い意志を抱いていたにも関わらず、何故か午前一時半にベッドに潜り込んでいた私は、それでも来たる月曜日の到来に悲観していたのか、現実から目を背けるように、ベッド脇で充電中だったスマホを手に取った。その瞬間、違和感が訪れた。熱い。滅多に降らない筈の雪がそこいらの畑の土を真っ白に汚す極寒の冬を迎えていた香川県。確かに私の部屋も暖房機をガンガンブイブイいわせていたが、それにしても熱を持ち過ぎている。もし、水を浸した洗面器に放り込んでみたら、途端に蒸気で部屋をサウナにしてしまうだろう熱だ。

驚いて画面を見てみると、何も操作していないのに再起動の真最中。過去にも何度か経験した状況である。こちらの都合など知る由もなく、自由気ままに再起動してしまうスマホ。文明の機器とは思えぬ身勝手さ。ところが、どうも様子がおかしい。再起動が終わらない。再起動が終わり、トップ画面が表示されたかと思うと、そのまま即座に改めて再起動が開始される。それが終わると、また再起動。それが終わると、また再起動。それが終わると……そんなことが延々と続いているのである。どうも宜しくない。そこで私は、強制的に電源を落として、自主的に再起動を試みることにした。なんてことはない。家電にはよくある状況だ。ビデオデッキだって、パソコンだって、どんなに様子が悪くなってきたとしても、強制的に再起動するとどうにかなった。しかし、どれほど再起動しても、再起動する状況は変わらない。再起動に次ぐ再起動。延々再再起動に至り。こちらの言うことなど聞きゃしない。何がなんだか。

一年と数か月の付き合いとはいえ、日々を共に過ごしてきたスマホである。突然、言うことを聞かなくなってしまえば、こちらも不安にならずにはいられない。とはいえ、日曜の夜中である。もう数時間も経てば、憂鬱な月曜日が始まってしまう。心配していても仕方がないので、その日は穏やかに眠ることにした……のに、これがなかなか眠れない。午前四時ごろに目が覚めてしまったので、パソコンで対処法を調べてみることに。どうやら同様のケースに見舞われている人が少なからず存在するようだ。データ容量に余裕がないだとか、SIMカードの接触不良だとか、色々な原因が考えられるらしい。そこで、試しにSIMカードを引っこ抜いてみたのだが、どうも様子が変わらない。ついでにSDカードを抜いてみても梨のつぶて。どうにもこうにもならなかったので、これはもう覚悟を決めて、そのまま不貞寝した。

翌朝。仕事を終えた私は直ちに近所のケータイショップへ飛び込んだ。対応してくれたのはメガネをかけた女性だった。一見、少女のように溌剌としていたが、手や指のしわの深さが、年齢の積み重ねと経験の深さを感じさせていた。事実、彼女の対応はとても事務的で、まるで手練れのダンサーのように自然に状況を処理していた。結局のところ、私のスマホはやはりどうしようもなくて、電話帳から何から全てのデータを引き継ぐことも出来ないらしい。そのこと自体は大した哀しみではない。ただ、文明の利器たるスマートフォンの中には、あれだけ多量の情報が詰め込まれているというのに、こんなにもあっさりと失われてしまうのだろう……という空虚に見舞われてしまった。そして、それは人間も同じなのである、などと恰好つける余裕も見せながら。

現在、私の手元には二台のスマホがある。一台はケータイショップで借りた代替機。すぐさま中身を自己流に改装してしまいたい衝動に駆られるが、借り物だから返さなくてはならず、どうも躊躇してしまう。そして、もう一台は、相変わらず再起動を続けている私の愛機。どうにもこうにもエンドレス再起動。どのみち、二日後には新しいスマホが届くことになっているので、残り僅かの命である。それまでに蘇ってくれれば良いのだが、きっと無理だそうなあ。はあ、空虚。紛れもなく空虚。

「うしろシティ単独ライブ「とはいえ外はサンダー」」(2017年11月22日)

うしろシティ単独ライブ「とはいえ外はサンダー」 [DVD]

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2017年6月から8月にかけて全国五か所で開催された単独ライブより、8月24日に座・高円寺2で行われた東京追加公演の模様を収録。

うしろシティのコントといえば、良くも悪くも安定感バツグンというイメージが自分の中にはあったのだが、本編を再生し始めてしばらく、決してつまらないわけではないのだけれども薄味で物足りないコントが続いたので、だんだんと「あれ? もしかして調子が悪いのかな?」とうっすらとした不安を抱き始めることに。

その後、だんだんといつもの調子を取り戻していったので安心したのだが、あれは一体なんだったのか? ……と首をひねりながら特典映像のアフタートークを視聴したところ、今回のライブは意図的に“ポップな順”でネタを並べていたことが語られていて、大いに腑に落ちた。なんでも、ポップなネタから少しずつエグいネタになっていく構成を取ることで、観客にエグめのネタに対する耐性を付けさせようという意図だったらしいのだが、これからは出来ればそういう戦略は控えてもらいたい。本当にドキッとしたから。

そんな構成の影響もあってか、印象に残っているコントは中盤以降のネタが多め。人気が出始めているガールズバンドの古参ファンたちがちょっとしたことで言い争いを始め、絶対に触れてはならない悲しい話題に突入してしまう『ガールズバンド』、自分が仕事としてやっている作業が生徒たちへの罰扱いにされていることに意義を唱える用務員の哀愁を描いた『職員室にて』、妻の不倫を疑っている男が探偵に調査を依頼したところ、彼女がこっそりアパートを借りて謎の作業を行っていることが発覚する『探偵』など、やや妙な余韻の残るネタが多め。とりわけ奇妙だったのが『へんなやつ』というコント。その内容は、阿諏訪演じるヤバめのおじさんの前に、金子演じる好青年風の男が現れ、おじさんよりもヤバい言動を延々と繰り広げる……というもの。内容が内容なだけにテレビなどで披露されることはないだろうが、金子のイノセントな雰囲気が上手くコントに取り入れられていて、これまでとは違った新しい切り口を感じさせられた。

これら本編の映像に加えて、特典映像として、ライブの幕間映像「うしろシティが旅してみた」、および、うしろシティの二人が公演後の客席でライブの感想を語り合う「千秋楽・・・そのあとに」を収録。「うしろシティが旅してみた」はライブタイトルにちなんで石川県へ雷を見に行くために二人がヒッチハイクする……という企画モノ。二人の頑張りによって、それなりに面白い映像に仕上がってはいるものの、その日のうちにヒッチハイクで石川県へと向かうという設定がそもそも実現不可能なので、もうちょっと真剣に取り組める企画にした方がきちんと映像として面白くなっていたのではないか?という疑問が残った。うーん……。

◆本編【90分】

「ふみきり」「河原」「刑事の仕事」「ミステリー作家」「ガールズバンド」「職員室にて」「アジト」「へんなやつ」「探偵」

◆特典映像【21分】

「【幕間映像】うしろシティが旅してみた」「千秋楽・・・そのあとに」

◆音声特典

うしろシティの副音声解説」

2018年2月の入荷予定

07「bananaman live Super heart head market

07「チョコレートプラネット vol.2

14「シソンヌライブ [six]

21「第19回東京03単独公演「自己泥酔」

28「小林賢太郎コント公演 カジャラ#2『裸の王様』

トップリード新妻が逮捕されたニュースで頭がいっぱいになってしまった一日でした。いや、まいったね。本当にまいったね。去年、タイタンシネマライブで観たネタがきちんと面白くて、そのコントに対する誠実さを再確認したばかりだったのにね。実際、どうだったのか、所属事務所からの処分はどうなってしまうのか、今の時点では何も分からないので、ひたすらにやきもきするばかりである。決して売れているといえるような状態ではなかったが、コント師としての力量は確かなコンビなので、ここはなんとか穏健な結論を出してもらいたい。

そんなタイミングでのリリース状況だが、なにやらとんでもないことになっている。なんだこのコント濃度の高さ。バナナマン小林賢太郎ラーメンズ)が揃っているだけでも濃いいのに、そこへキングオブコント王者の東京03とシソンヌ、「キングオブコント2014」二位のチョコレートプラネットが入り込んでくる。こんなにコントが充実している二月を目前に控えているというのに……。

いずれまた、この入荷予定にトップリードの作品を記載できる日が来ることに期待したい……いや、本当に、お願いしますよ。

“ガチョウ”を求めて大阪へ(2018年1月19日~21日)

THE GEESEが大阪で単独公演をやるというので、観に行ってきた。

THE GEESEとは、尾関高史と高佐一慈によって2004年に結成された、お笑いコンビである。過去に二度ほど「キングオブコント」で決勝進出を果たしているので、その名を聞いたことがあるという人もそれなりにいるのではないかと思う。近年、尾関がカープ大好き芸人として、或いは、娘に手作り弁当を作り続けているパパ芸人として、メディアに出演する機会が増えているので、それをきっかけに知っているという人もいるだろう。所属事務所はASH&Dコーポレーション。同事務所に所属する“シティボーイズ”の大ファンだったことからインディーズ時代より所属を熱望、2005年に入社した。

そんなTHE GEESEが東京・大阪・広島の三都市で単独ライブを敢行すると聞きつけ、馳せ参じようと決意した次第である。……本来ならば、大阪では大阪で活動する芸人こそを見るべきなのだろうが、まあ、それはまた別の機会にということで(後になって、このライブの一週間後に大阪でチョップリンの単独ライブが開催されると知り、ちょっとだけ後悔したのはここだけの話)

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