白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「ベストネタシリーズ アンジャッシュ」(2017年8月23日)

ベストネタシリーズ アンジャッシュ [DVD]

ベストネタシリーズ アンジャッシュ [DVD]

 

爆笑オンエアバトル」五代目チャンピオンの称号も懐かしいアンジャッシュが2007年から2011年にかけてリリースしてきたDVDより、十二本の珠玉のコントを選び抜いたベストセレクション。収録内容は以下の通り。

◆本編【99分】(カッコ内は収録元のDVDタイトル)

「結婚のあいさつ」(「ネタベスト」)

「スポンサー」(「ネタベスト」)

「ピーポーくんの交通安全教室」(「ネタベスト」)

「軍隊」(児嶋一哉ソロコントライブVOL.1「タンピン」)

「感動エピソード」(「キンネンベスト」)

「診察の結果」(「キンネンベスト」)

「社員旅行の写真」(「キンネンベスト」)

「誕生パーティー」(「キンネンベスト」)

「社長のイス」(「キンネンベスト」)

「借金取り」(単独公演「五月晴れ」)

「名門学校でお笑いライブ」(単独公演「五月晴れ」)

「浮気相手の誕生日サプライズ」(単独公演「五月晴れ」)

あくまでもレーベル内でリリースした作品に限定されているため、初期の傑作がことごとく未収録なのが非常に残念でならない。例えば、『息子と部下』だとか、『それぞれの会話』だとか、『桃太郎』だとか……その辺りの傑作群が入っていれば、本作はまさしくオールタイムベストと呼ぶに相応しい作品になっていたことだろう。まあ、贅沢を言い出せばキリがないし、その点に関しては諦めるしかない。

とはいえ、ネタのクオリティは安定して面白い。人形用に録音された音声がグチャグチャにこんがらがってしまう『ピーポーくんの交通安全教室』、医者と看護士の雑談を自身の診察に関する話だと勘違いした患者がひたすら一人相撲を取り続ける『診察の結果』、社員旅行で撮影された写真を見ながら電話で説明を受けているのだが受話器の向こうとこちらで写真を見る順番が逆になってしまい……『社員旅行の写真』など、どのネタも不変的に面白い。『ピーポーくんの交通安全教室』に使われているピーポーくんの人形が何故かCG処理されていたのは、当時も今も気になったが。通常、コントで使っている人形に、何か問題でもあったのだろうが、だからってCGで誤魔化さなくても……。最後を長尺コント『浮気相手の誕生日サプライズ』だったのも良かった。やはり長めのネタが最後に来ると全体が締まる。

それはそれとして気になった点は二つ。

一つ目は、ちょっと傾向の近いネタが合わせて収録されていたこと。例えば、結婚を考えている女性の父親に自身の芸人という仕事について説明する『結婚のあいさつ』と、文化祭のステージで披露するネタを教師に確認される『名門学校でお笑いライブ』は、芸人のネタをお笑いについて詳しくない人間によって事細かに解体されるという点において、とてもよく似ている。また、オフィス内で開かれる渡部の誕生日パーティの会場を見た社長が、自らの誕生日を社員たちが祝ってくれるためのパーティだと勘違いする『誕生パーティー』と、浮気相手の誕生日パーティの準備中に遠距離恋愛中の本命の彼女が家へとやってくる『浮気相手の誕生日サプライズ』も、「誕生日」「誤魔化す」「第三者の登場で事態がよりややこしく」と類似点が少なくない。それぞれ一本ずつでも良かったのではないかと思う。無論、あえて比較して、その違いを楽しむというのも悪くはないのだが……。

二つ目は、とてつもなく個人的な話になるのだが、『アンジャッシュ単独公演「五月晴れ」』に収録されているコントから、選ぶべきネタが選ばれていないように感じたこと。否、『借金取り』も、『名門学校でお笑いライブ』も、『浮気相手の誕生日サプライズ』も、決して悪いネタではない。しかし、コントの導入があまりにも鮮やかな『のぞき』、犯人たちの計画内容と実際に起きた事件のギャップが可笑しい『犯行計画と事件報告』、なにより近年のアンジャッシュコントの中でも名作中の名作と言わざるを得ない『家が燃えています』をスルーするとはどういうことなのか。「家が燃えている」という危機的状況下にあるにも関わらず、そんなことなど露知らず、居酒屋で部下と酒を呑んでいる男が「火事」に関連する言葉を口にしてしまう、この底意地の悪い偶然を描いたコントを無視するなんて、とてもじゃないが考えられない。どうしても外さなくてはならない、余程の理由があるのだろうか。

そんなアンジャッシュだが、2011年5月に行われた「アンジャッシュ単独公演「五月晴れ」」を最後に、単独ライブを開催していない。当時ですら“八年ぶりの単独ライブ”を銘打っていたが、この次はいつになるのだろう。今や、児嶋はイジられ芸人として、渡部はグルメ芸人として、様々なメディアで活躍しているが、根っこにあるのはコント職人の血だ。これを最後に……ということなく、まだまだ己のコントを追求し続けてもらいたい。

「キングオブコント2017」ファイナリスト・データ表

勝戦が行われる10月1日までの退屈しのぎにどーぞ。

【結成年】
00年:アンガールズ
04年:かまいたち
06年:GAG少年楽団ジャングルポケット
08年:さらば青春の光
10年:わらふぢなるお
12年:アキナ
14年:ゾフィーパーパー
17年:にゃんこスター

正直なところ、ゼロ年代のお笑いブームで“ジャンカジャンカ旋風”を体感した人間としては、ファイナリストの中で最もコンビ歴が長いのがアンガールズだという事態を受け入れにくい。ちなみに、昨年大会のファイナリスト・タイムマシーン3号も2000年結成。この辺の世代の芸人がここにきてやる気を出し始めている。うむ。頑張れ。

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「ベストネタシリーズ ラバーガール」(2017年8月23日)

ベストネタシリーズ ラバーガール [DVD]

ベストネタシリーズ ラバーガール [DVD]

 

人力舎所属の技巧派コント師ラバーガールが2007年から2016年までにリリースしてきたDVDから、十二本の珠玉のコントを収録したベストセレクション。収録内容は以下の通り。

◆本編【100分】(カッコ内は収録元のDVDタイトル)

「電報」(「ブラッシュバック・スピノーネイタリアーノ」)

「世界にはばたく日本人」(「メキシカンキャッシュボーイ」)

「誕生日」(「さよならインドの空に」)

猫カフェ」(「キャット」)

「バイトを辞めるヤツ」(「エマ」

「別れなさい」(「エマ」

「寿司屋」(「ジェイコブ」)

恋愛シミュレーションゲーム ラブリアル」(solo live+「GAME」)

「パワーポイント」(solo live+「GAME」)

「過去から来た男」(solo live+「T/V」)

「WAKE UP OHMIZU」(solo live+「GIRL」)

「聞いてくれよ」(「大水が出た!」)

なかなかに手堅い構成といえるのではないだろうか。初期の代表作『電報』に始まり、司会者とゲストの珍妙なやり取りを描いた彼らお得意の設定による『世界にはばたく日本人』、「キングオブコント2010」決勝の舞台で披露された『猫カフェ』、大水洋介演じるオカマの寿司屋がコミカルで笑えるのだが後味が少し切ない『寿司屋』など、活動時期ごとの代表作が適切に拾い上げられている。

その一方で、単独ライブならではの攻めたコントも、しっかりと押さえられている。偶然にも同じ誕生日だということが分かった二人が当日になってプレゼントを交換することを約束するのだが、その結果、とんでもない事態に発展してしまう『誕生日』。今日で辞めるというバイト仲間から貰ったカセットテープには、驚愕の音源が収められていた!『バイトを辞めるヤツ』。恋人の母親だという女性が彼女と別れるように要求し始めるのだが、ボケとツッコミが曖昧なやりとりが延々と続く『別れなさい』。いずれのコントも、一筋縄ではいかない危うさと、胸の奥をざわつかせる据わりの悪さがたまらなく面白い。当時は気が付かなかったが、『バイトを辞めるヤツ』の度を越えたヤバさには些か驚かされた。悪意や冗談を伴わない異常ぶりが恐ろしい。

この攻めの姿勢は、演出に細川徹を迎えたシリーズ“solo live+”に突入すると、より洗練されていく。先日、飲み会の最中に態度を一変させた大水が、その理由を飛永翼にパワーポイントを駆使して説明する『パワーポイント』。突如、轟音とともに現れた男性が、「私は過去のお前だ」と言い始めて……『過去から来た男』。街の荒くれたチンピラたちをOHMIZUが蹴散らしていく『WAKE UP OHMIZU』。以前よりも攻撃性が控え目になっているが、その分だけ、世界観が広がっているのがたまらない。より自由に、奔放に、バカバカしい笑いの世界へと広がっていく心地良さがある。

その意味では、オーラスのコント『聞いてくれよ』は、些かパンチに欠けるのだが、とはいえ、ラバーガール×細川徹の世界を堪能した後だと、その日常的なシチュエーションとシンプルで下らないボケの連発に安心感を覚えるのも確かだ。それはまさしく宴会の後のお茶漬けのよう。絶妙だ。

ひとつ、気になるところがあるとすれば、彼らの初単独ライブ「パットミベラルーシ」からのコントが収録されていないことぐらいだろうか。否、そもそも、「ジェイコブ」の特典映像としてソフト化された映像なので、収録されていなくても別に問題はないのだが、ここまで充実した内容になっているのであれば、それぐらいの対応があっても良かったような気がしないでもない。……こちらは初回限定特典ではないし。『ピザ屋』ぐらいは収録されても良かったような……いや、別にいいんだけれどね。

ところで、今年はもうラバーガールはソロライブを開催しないのだろうか。2007年の「ブラッシュバック・スピノーネイタリアーノ」以降、年に一度のペースで当たり前のように敢行していたが、その記録がとうとう途切れてしまうのだろうか。ソロライブを開催できないほどに他の仕事を貰えるようになってきた……ということなのだろうか。どうせなら、そうであってほしいものだが。

「第十九回 東京03単独公演「自己泥酔」」(2017年9月10日・岡山)

午前九時起床。

昨夜は遅くに帰宅したので、昼前まで眠っていようと思っていたのだが、このような時刻に目が覚めてしまった。累計五時間しか眠っていない。このままでは、公演の最中に居眠りを始めてしまうかもしれないので(私はこういう失敗をよくやらかす)、しばらく眠気が訪れるまで、横になる。

しかし、一向に眠たくならないので、録画した「タモリ倶楽部」(空耳アワード2017・後半戦)と「オー!!マイ神様!!」(サンシャイン池崎回・バイきんぐ小峠回)を見る。更にTVerで「ゴッドタン」を視聴。以前、若手芸人を特集した回でハネた川瀬名人(ゆにばーす)に着目した回で、どの企画で活躍できるかを検証していた。ウエストランドや曇天三男坊も登場し、無闇にアツい言葉が行き交う、とても楽しい回だった。

正午に愛車で家を出る。朝食を取らずにテレビばかりを見ていたので、遅ればせながらの朝食として「とりの助 丸亀店」でつけ麺を食べる。鶏の旨味を引き出したコラーゲンたっぷりのつけ汁がたまらなく美味しい。この店では以前、ラーメンの替え玉サービスを行っていた記憶があるのだが、今ではやっていないらしい。そこが魅力の一つだと感じていた身としては、ちょっと寂しい。

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午後二時、宇多津駅から岡山駅へと電車で一時間。

せっかく岡山まで来たので、今年オープンしたばかりの「とらのあな 岡山店」へ。広島で学生をやっていた頃は、よく当時のオタク仲間たちと通っていたものだが、地元に戻ってからはすっかり縁遠くなってしまった。店内を縦横無尽に歩き回るオタクのカップルに軽やかな殺意を抱きながら、ブログにもTwitterにも絶対に書けないようなギリギリアウトの同人誌を購入する。……18禁ではないからこそ、フェティッシュで人には見せられない……。

午後四時に「イオンモール岡山」。続いて遅めの昼食を取ろうと「ロンフーダイニング」で定番の味付けだという楊州チャーハンを食べる。ご飯がパラパラしていて美味しかったが、あまりの熱さに驚いた。一般的なチャーハンの熱さを凌駕している。他にも色々な種類のチャーハンが見受けられたので、次の機会には他の味付けも試してみたい。

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食後は「HMV」「未来屋書店」などをウロウロ。その流れで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー・リミックス』のサントラを購入。きっと良い。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス オーサム・ミックス・VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス オーサム・ミックス・VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)

 

午後五時、開場。エレベーター前からホールの入り口まで伸びている長ーい行列に参加する。その流れに沿ってロビーへと突入すると、これまでと行列のシステムが変わっていることに気が付いた。これまでは、チケットをもぎってもらう列が、そのまま物販コーナーへと繋がっていた。しかし今回は、ロビーが二分されており、チケットをもぎってもらう列はそのままホール内へと繋がっていて、反対側の出入り口からロビーに出ると、物販コーナーに繋がっているというシステムが採用されていた。なるほど、これならばチケットをもぎる列が過剰に滞らない。

実際、もぎりの列はあっという間に進んでいった。しかし、続けて物販の列に並んでみると、これが遅々として進まない。恐らく、後ろから急かされないため、一人一人の客が悠長に商品を選別していたのではないかと思われる。自分は早めに並んでいたので、開演前に購入することが出来たのだが、買えなかった人も少なくなかったのではないだろうか。更なる改善が必要だろう(まあ、終演後に買うことも出来るのだが)。ちなみに、私はパンフレットと劇中歌を収録したCDとタオルケットを購入した。昨年から、タオルのデザインはどんどん良くなっている気がする。デザイナーが替わったのだろうか。

午後五時半開演。具体的な内容は書けないのでざっくりと感想を箇条書き。

  • 大竹涼太によるオープニングテーマが超クール
  • 主題歌は有名曲二曲の掛け合わせパロディ
  • 例の件を扱ったコントのタイトル、「トヨモトのアレ」て
  • ていうか豊本が謝る設定のコントが多い気がする
  • 今回も角田のアドリブパートがハネるくだりアリ
  • ニイルセンによる幕間映像が更にパワーアップ
  • オークラ担当の長尺コント、今回も上々の出来

午後七時半ごろ終演。とっととロビーに移動して、物販購入者特典の握手会を待ち望む列に参加する。しばらく待った後に、三人と対面。豊本には多くの人が言っているであろう「(強めに)頑張ってください!」、角田には「オープニングテーマ最高でした!」「アドリブめっちゃ面白かったです! 長かったけど!」、飯塚には「ツッコミがキレキレでした!」と言った後でそっと私が書いたレビューの掲載されているフリーペーパーを渡し……ああっ、余計なことをしたなと今更ながらにちょっと後悔している。でも、まあ、たまにはそういうことをやってもいいじゃない。ねえ。

握手会後、同じく東京03の単独を観に来ていた資本主義さん(Twitterで相互フォローしている人)と遭遇、だべりながら駅へと向かう。03の単独公演を鑑賞するのは初めてだという資本さんは、飯塚の本格的な演技に驚かされたという。なるほど。東京03のファンにとって、演技担当といえば角田のイメージが強いのだが、確かに飯塚もちゃんと演技が出来る人なのである。もとい、そういった演技が出来るからこそ、日常に起こり得るようなシチュエーションのコントを成立させられるのだろう。

駅前で資本さんと別れて、小腹が空いたので「博多一幸舎 岡山駅店」へ。海鮮油を使用しているという赤ラーメンを食べる。美味いことは美味いのだが、個人的には一風堂の方が口に合うような気がする。あそこもしばらく行っていないので、次に岡山に来るときには是非とも行きたいところである。

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午後八時四十分、岡山駅から宇多津駅まで電車で一時間。それからおよそ一時間かけて愛車で自宅に帰る。お疲れさまでした。

「キングオブコント2017」ファイナリスト決定!

アキナ(よしもとクリエイティブ・エージェンシー

アンガールズワタナベエンターテインメント

かまいたちよしもとクリエイティブ・エージェンシー

さらば青春の光(ザ・森東)

GAG少年楽団よしもとクリエイティブ・エージェンシー

ジャングルポケットよしもとクリエイティブ・エージェンシー

ゾフィー(フリー)

にゃんこスター(フリー)

パーパーマセキ芸能社

わらふぢなるおサンミュージックプロダクション

ビックリし過ぎて、もう何も考えられなくなっている。とにかく「スゲェ! ヤベェ! マジで!?」としか言いようがない。昨年のファイナリストからジャングルポケットかまいたち、過去大会のファイナリストからの返り咲きとしてアキナさらば青春の光、ショートコントで知られるコンビがコント師としての手腕を見せつけられるかアンガールズ、関西発のトリオコント師として高く評価されていたユニットが遅すぎる決勝進出GAG少年楽団、無名無所属であるが故に無敵な存在感でライブ界隈を賑わせるゾフィーにゃんこスター、お笑いにまったく興味がないのにファイナリストになってしまったパーパー、事務所の垣根を越えた不思議な境遇の正統派わらふぢなるお。なんと濃厚な顔ぶれだろう。

こんな連中がコントで激しくぶつかり合う決勝戦の模様は、2017年10月1日(日)の19時から放送予定! ……あとは、決勝戦の審査がどうなってしまうのか、それだけだ!(どうなっても受け止めるしかないのですけどね)

「ベストネタシリーズ うしろシティ」(2017年8月23日)

ベストネタシリーズ うしろシティ [DVD]

ベストネタシリーズ うしろシティ [DVD]

 

松竹芸能所属の実力派コント師うしろシティが2011年から2014年までにリリースしてきたDVDより、十二本の珠玉のコントを収録したベストセレクション。収録内容は以下の通り。

◆本編【80分】(カッコ内は収録元のDVDタイトル)

「この一球」(「街のコント屋さん」)

「転校生」(「街のコント屋さん」)

「美容室」(うしろシティさらば青春の光「cafeと喫茶店」)

「太陽」うしろシティさらば青春の光「cafeと喫茶店」)

「マンガ」(単独ライブ「走ってるのかと思った」)

「寿司」(単独ライブ「走ってるのかと思った」)

「サッカー部」(単独ライブ「アメリカンショートヘア」)

「上京」(単独ライブ「アメリカンショートヘア」)

「バンドやろうぜ」(単独ライブ「うれしい人間」)

「娘さんを下さい」(単独ライブ「うれしい人間」)

「5分の遅刻」(単独ライブ「それにしてもへんな花」)

「喫茶店の常連」(単独ライブ「それにしてもへんな花」)

2015年にリリースされた「うしろシティ第6回単独ライブ「すごいじゃん」」が選考から漏れているのは、同作が何故かコンテンツリーグではなくポニーキャニオンからリリースされたという背景を思うと致し方の無さそうなところではあるのだが、2016年にリリースされた「うしろシティ単独ライブ「すばらしく眠い」」まで巻き添えを食うように無視されているのは解せない。キングオブコントの予選で披露されたクレイジーなコント『自転車』(「すばらしく眠い」収録)は、是非とも入れてもらいたかったのだが。

その一方で、「うれしい人間」の完全生産限定盤に特典ディスクとして付いている「うしろシティ 第2回単独ライブ「走ってるのかと思った」」から、映像が収録されていることについて、微かな疑問を覚えなくもない。確かに、『マンガ』も『寿司』もベストセレクションに選ばれるべき名作ではあるのだが、あくまでも限定ディスクに入っているネタを、こういうベスト盤に入れてしまってもいいものなのだろうか。限定盤ならではのプレミア感が薄れることはないのだろうか。もとい、完全生産限定盤を買った人間としては、ここで出されてしまうことに対するふわっとした違和感のようなものが……まあ、どうでもいいことではあるのだが。

長々と文句から始めてしまったが、肝心の内容はさほど悪くない。むしろ、前半に関しては、完璧と呼ぶべきラインナップといってもいい。御挨拶代わりの軽めのコント『この一球』に始まり、コントの中に出てくるアイテム“もぎぼっこり”がちょっとしたムーブメントを巻き起こした『転校生』、平成24年NHK新人演芸大賞 演芸部門大賞を受賞した名作『美容室』、金子学のイノセントなキャラクターを最大限に引き出した『太陽』、早朝の学校を舞台に作り手と送り手の関係性を端的に表してみせた『マンガ』、ナンセンスな設定の上で人間の底意地の悪さが滑走する『寿司』……と、うしろシティの魅力が存分に引き出されている。もしも、このテンションが最後まで続いていれば、本作は芸能史に名を遺すベスト盤になっていたかもしれない(とは言い過ぎか)。

この後の流れも、なかなかに悪くない。感動の涙を流せないことを糾弾される理不尽さがたまらない『サッカー部』、阿諏訪泰義のちょっとイタいところを煮詰めてコントへと昇華した『バンドやろうぜ』、キングオブコントの決勝戦でも披露されたコント『上京』『娘さんを下さい』……ここまでは良い。彼らのネタとしてはちょっとトリッキーな構成の『5分の遅刻』も受け入れよう。ただ、ただ最後に、どうして『喫茶店の常連』を持ってきたのか。これがよく分からない。いや、決して悪いネタではない。悪いネタではないのだが、最後に持ってくるにしては後味が良くないし、阿諏訪が演じているキャラクターの驚くべき行動を金子が解説するという捻った構図のコントではどうも締まらない。「それにしてもへんな花」には、『放課後』や『真面目な清掃員』のようなネタもあったのに、どうして『喫茶店の常連』がオーラスに選ばれたのか。なんだか解せない。

……なんだか最初から最後まで文句ばっかり言ってしまったが、別に本作は駄作ではない。むしろ、全体の構成を見ると、ベスト盤としてはかなり良い作品に仕上がっている。ただ、あと一歩のところで、チョイスに失敗しているからこそ悔しいのだ。否、『喫茶店の常連』をオーラスではないところに配置するだけでも、本作に対する印象はまったく変わっていたと思う。うーん……惜しい……。

ちなみに、うしろシティは11月に新作をリリースする予定だ。

うしろシティ単独ライブ「とはいえ外はサンダー」 [DVD]

うしろシティ単独ライブ「とはいえ外はサンダー」 [DVD]

 

前作「すばらしく眠い」も全体の構成を意識したなかなかの秀作だったので、本作にも期待を寄せたい。

「水曜日のダウンタウン」(2017年8月30日)

ちょっと興味深い企画があったので記録。

検証のため、番組では若手芸人200人に「コンビ名がダサいと思う芸人を3組挙げてください。また、その理由もお答えください」というアンケートを実施。それを元にランキングを作成した。

結果は以下の通り。

1位:NON STYLE(40票)

2位:X-GUN(20票)

3位:アリtoキリギリス(19票)

4位:コロコロチキチキペッパーズ(18票)

5位:フルーツポンチ(16票)

6位:ロンドンブーツ1号2号(15票)

7位:さらば青春の光(14票)

8位:うしろシティ(13票)

9位:雨上がり決死隊(12票)

10位:ANZEN漫才(10票)

ロンドンブーツ1号2号は6位だったため説の立証はならず。……それはそれとして、番組内では「カッコいいコンビ名ランキング」も発表。その結果は以下の通り。

1位:野性爆弾(23票)

2位:千鳥(18票)

3位:東京03(16票)

4位:シソンヌ(15票)

5位:極楽とんぼ(12票)

6位:ジャルジャル(11票)

7位:2700(10票)

8位:東京ダイナマイト(9票)

9位:さらば青春の光(8票)

10位:天竺鼠(7票)

これらの結果に対して、Twitter上では「若手芸人を対象としたアンケートなので、先輩たちに対する憧れも含まれているのではないか」との意見があちらこちらで見受けられた。なるほど。確かに、野性爆弾や千鳥のようにバラエティ番組でも決して自らの芸風を捻じ曲げない確固たるスタイル、東京03やシソンヌのように舞台上で魅せるコントに全力を注ぎこむ職人気質な生き様、極楽とんぼのように他の誰にも似てない自己流の道を突き進んでいく胆力の強さなど、どの芸人も若手から憧れられる要素が振り切れている。

……ということは、逆にいえば、「コンビ名がダサい」と思われている芸人は憧れられていないということになる。そのことを踏まえた上で、先のランキングを確認してみると、なにやら今の若手たちが抱いている色々な感情が想像されて、面白い。思えば、ダサいコンビ名の一位が「NON STYLE」で、カッコいいコンビ名のツートップが「野性爆弾」「千鳥」というのも、如何にも象徴的な結果ではないか。

無論、NON STYLEは確固たる実力派の漫才師である。どんな会場でも確実にウケるだけの術を持っている。それでも憧れられない。寂しい話である。とはいえ、こういった場で名前が出るということは、それだけ存在感を示せているという証明にもなる。問題は、彼らと同列に並べられがちなのに、ランキングに名前の挙がらなかったコンビの方で……。

まだ世に出ぬ若手芸人たちの本音を垣間見たような企画であった。

「ベストネタシリーズ バイきんぐ」(2017年8月23日)

ベストネタシリーズ バイきんぐ [DVD]

ベストネタシリーズ バイきんぐ [DVD]

 

キングオブコント2012」王者・バイきんぐが2012年から2016年の間にリリースしたDVDからセレクトされた、十四本の珠玉のコントを収録したベストセレクション。収録内容は以下の通り。

◆本編【65分】(カッコ内は収録元のDVDタイトル)

「卒業生」(「King」)

「オーダー」(単独ライブ「ハート」)

「マキガミ」(単独ライブ「クィーン」)

「処方せん」(「King」)

「クイズ」(単独ライブ「ハート」)

「ポイントカード」(単独ライブ「エース」)

「これを…」(単独ライブ「Jack」)

「BAR」(単独ライブ「エース」)

「交通量調査」(「King」)

「アパート」(単独ライブ「Jack」)

「コンビニ」(単独ライブ「Jack」)

「殺人現場」(単独ライブ「Jack」)

「セールスマン」(「King」)

「帰省」(「King」)

彼らの出世作である『卒業生』と『帰省』で挟み込んだ構成が味わい深い。

収録されているコントは、2012年にリリースされたベストライブ「King」からのネタが多い。既出のベスト盤に収録されている作品を中心に収録しているベスト盤というのは、どのようにしてアイデンティティが保たれるものなのだろうか……と思わなくもない。まあ、そこに文句を言い始めたら、今後レビューする予定のアレはどうなるんだという話になるので、あまり深くは考えない方が良いのだろう。面白いことには変わりないわけだし……。

通常の単独ライブからは「Jack」(2014年リリース)のネタが多く選ばれている。事実、数々の名作コントが演じられた傑作と呼ぶに相応しい公演なので、納得のチョイスといえるだろう(私も過去に「SHOW COM」の連載で「Jack」を取り上げている)。それらの中でも、小峠の住んでいるアパートの部屋に前の住人だった西村が押し掛けてくる『アパート』と、殺人事件現場となった部屋の環境の良さに刑事・西村のテンションが上がり始める『殺人現場』が選ばれていることが嬉しい。クレイジーなキャラクターが注目され始めた、西村瑞樹の狂気的な演技がギラギラと光り輝いている。

また、一つの発見として、それぞれの年代のコントを合わせて視聴することで、「King」の頃の小峠英二が今よりもずっとパッションに満ち溢れたツッコミを繰り出していることに気付かされた。「キングオブコント」での優勝直後、まだまだ世間には山のものとも海のものとも分からないコンビだったバイきんぐ。そんな状況を打破して、更なる高みを目指してやろうという気持ちが、小峠の演技に強く表れていたのだろうか。その意味では、今の小峠のツッコミは、ちょっと無理矢理に絞り出しているような印象を受ける。無理にキャラクターを演じようとせずに、もっと自らの現状に適した人物を演じるように変化すべき時期が来ているのかもしれない。もう、そろそろ「なんて日だ!」を超えていかなくては……。

とりあえずバイきんぐのコントを見てみようという人にとって、本作は最適といえるだろう。彼らの出世作『卒業生』『帰省』は入っているし、西村のヤバさが表出している『アパート』『殺人現場』もあるし、本来ならばツッコミであるべき小峠が西村と一緒にはしゃいでしまう変化球のコント『コンビニ』もある。ただ、彼らの単独ライブには欠かすことの出来ない、二人が遊びに出かける様子を撮影した幕間映像「はじめての○○」が入っていないことだけが惜しい。全力で楽しむために計画を立てる西村と、そんな西村に呆れながらもちょっとずつ楽しくなっていく小峠の、コントでは見られないほのぼのとした関係性が見られないというのは、なにやら画竜点睛を欠く。だからこそ、本作を鑑賞して、彼らのことをもっと知りたいと感じたならば、絶対に単独ライブを観ていただきたい。そうすれば、もっと濃厚で、バカバカしく、親しみやすい彼らの姿を見つけることが出来るだろう。

ちなみに、バイきんぐは10月に最新作をリリースする予定だ。

バイきんぐ単独ライブ「クローバー」 [DVD]

バイきんぐ単独ライブ「クローバー」 [DVD]

 

特典映像「はじめての西村プロデュース キャンプ」がとても気になる。