白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

ラーメンズ「読書対決」(002/100)

それぞれに持参した本のどちらの内容がより面白いかを競い合う。初期のラーメンズを代表するコントのひとつ。彼らの名を世に広めるきっかけとなった『爆笑オンエアバトル』では三タイプの「読書対決」が披露され、いずれも多くの支持を集めた。2001年8月には番組内で映像化され、それを偶然に目撃した当時の私は「なんだこれは?」と不思議にコーフンしたものである。どうでもいい話だけど。

基本的に「読書対決」は三回に渡って繰り広げられる。一回戦と二回戦でそれぞれが勝ち星をあげ、三回戦で決着がつくという筋書きだ。今回の場合、一回戦は「ロミオとジュリエットvs鼻」、二回戦は「山椒魚vs伊豆の踊り子」、三回戦は「レ・ミゼラブルvs罪と罰」が取り上げられている。

「読書対決」には二つのパターンがある。一つは「持ち寄った作品の内容を読み合っていく中で、あるシーンをきっかけにマウントの取り合いが始まる」パターン。もう一つは「小林が読み上げる内容に片桐が寄せていく」パターン。前者のパターンの場合は相手の隙を突いて言いくるめてしまうことが多く、後者のパターンの場合は片桐がオチとなる一言を口にして終わらせてしまうことが多い。今回でいえば、一回戦と二回戦が後者のパターン、三回戦が前者のパターンによる展開を取っている。……このことに、私は少なからず違和感を覚える。というのも、「読書対決」のテーマはあくまでも「どちらの本がより面白いかを競い合う」という点にあるので、基本的には前者のパターンが採用されるべきだからだ。否、もっと言ってしまえば、一本目の勝負「ロミオとジュリエットvs鼻」の結果が、あのようにあやふやで不明瞭なものにはなっている点も引っ掛かる。独自のフォーマットを採用したコントの場合、まず観客にシステムを理解してもらう必要性がある。だからこそ、最初は見本として、はっきり明確で分かりやすい流れを作らないといけない。このバージョンは、そこをすっ飛ばしてしまっている。

恐らく、これは既に「読書対決」のフォーマットが認知されていることを前提として作られた台本なのだろう。それはそれで構わない。そういうコントがあってもいい。ただ、これも「無用途人間」と同様、ラーメンズのベスト盤『Rahmens 0001 select』に選出されていることを思うと、もうちょっと初心者にも優しい内容にしても良かったのではないか、という気がしないでもない。というわけで、先にまだ初心者でも内容を理解しやすい「読書対決news篇」、或いは『爆笑オンエアバトル ラーメンズ』に収録されているバージョンを視聴してから、こちらのバージョンを鑑賞することをお薦めしたい。

まどろっこしい話を長々と繰り広げてしまったが、「読書対決」そのものは優秀なコントである。名作の知名度を利用しているにも関わらず、「対決」という大義名分の元に内容をナンセンスにバカバカしく塗り替えていく発想力も兼ね備えた、非常に優れたコントである。さんざん文句を言ってしまった本作のバージョンも、鼻と耳が惹かれあったり、伊豆の踊り子が変なキノコを食べたり(実際の「伊豆の踊り子」は女性なのに、完全に踊り子=片桐に見えてしまう表現力が素晴らしい!)、ジャンバルジャンが新宿思い出横丁の火事の容疑をかけられたり、とんでもない発想が惜しげもなく放り込まれている。でも、もうちょっと、その魅力的な表現を素直に楽しませられる方法があったのではないか、と感じてしまう。うーむ……。

ラーメンズ「無用途人間」(001/100)

【用途】を持ち合わせていないがために何も出来ずに俯いている“無用途人間”佐藤の元へ、伝達用人間の鈴木が新しい【用途】を伝えにやってくる。ファン投票によるベスト盤『Rahmens 0001 select』に選出されるほどの人気作だが、個人的にはあまり好きなネタではない。否、確かに美しいコントではある。独創的な導入、それなのに分かりやすい展開、それでいて意外性のある結末……その世界には一切の無駄がない。しかし、無駄がないからこそ、物足りなさを感じる。

このコントの肝は最後の台詞だ。「すいません、誰か、私たちに「しなきゃいけないこと」をください!」。この言葉を観客に投げかけることで、自らの【用途】について考えさせようという試みである。それ自体は悪くない。ただ、このオチへと繋がっている道筋があまりにも一直線で、メッセージありきの台本に見える。……むしろ、そのように見せることこそが、目的だったのかもしれないが。単独公演のオープニングを飾るコントとしては、あまりにも衝撃的に作られているのも、そのような意図があってのことだったのかもしれない。あくまで邪推だが。

しかし、冷静に考えてみると、終盤の展開のなんと物悲しいことか。お互いのことを思いやって、【用途】の領域を超えた二人は、結果としてどちらも【用途】を失ってしまう。まるで【用途】を逸脱した二人にバチが当たったかのように。実に恐ろしい。笑っている場合じゃないぞ、ホント。

無題。

昔、聴いていて、衝撃を受けた音源がある。

「この馬鹿野郎、娘一人さらわれたおかげでもって、両親楽で暮らせるように成りやがって……あの拉致太りめ。ええっ、横田某の夫婦の馬鹿野郎……」

これはヘイト・スピーチなどではない。立川流家元・立川談志のマクラである。もう少し、細かく説明すると、2007年12月8日に博品館劇場で高座にかけられた『やかん』のマクラである。死後、キントトレコードからリリースされた追悼盤に収録されている。この家元の発言には、それまで連発されていた上質のジョークで笑っていた観客たちも驚いたようで、この直後、客席はまるで凍り付いてしまったかのように静まり返っている。

家元自薦ベスト やかん/天災 立川談志公式追悼盤(2枚組CD/談志役場・キントトレコード)

家元自薦ベスト やかん/天災 立川談志公式追悼盤(2枚組CD/談志役場・キントトレコード)

 

無論、あの立川談志が言うことなので、何の脈絡もなくこのような暴言を吐いたわけではない。この発言の前後は、以下の流れとなっている。

(数々の猥雑なジョークで観客を笑わせる家元……)

あのね、元来ね、寄席というのはこういうところなんですよ。

この馬鹿野郎、娘一人さらわれたおかげでもって、両親楽で暮らせるように成りやがって……あの拉致太りめ。ええっ、横田某の夫婦の馬鹿野郎……。

これがここ(高座)で言うことなんですよ。

んなもの、あの親には悪いところなんか一つもないですよ、そんなの。可愛い娘がさらわれて、国が相手にしてくれないから、自分たちが立ち上がって、みんなの協力を得ながらやってきた……って、崇高な行為ですよ。

だけど、庶民の腹ん中にゃね、さっきの「あの丸坊主を人殺しにしなきゃ困る」と同じようにね、「あの野郎、拉致太りめ」っていう、この了見があるんですよ。これは一番……良い悪いの問題じゃないんですよね。この了見がね、国からテレビを通じて無くなっちゃったんだね。

昔はそれが寄席にあったしね。寄席に出てくるね、隠居さんとかね、和尚さんにそういう了見があったんだよ。

だから庶民はそこで永遠にガス抜きしてたかな。

実にどうも……べけんやで……。

かつての寄席が庶民から求められていたモノについて話していたのである。

ただ、私が衝撃を受けたのは、この暴言そのものではない。「丸坊主」の件である。ここでいう「丸坊主」とは、高座の音源が収録された時期に話題となっていた殺人事件の関係者のことである。当時、「丸坊主」はその胡散臭い風貌から、インターネット掲示板の書き込みやマスコミから「犯人なのではないか」と疑心暗鬼の目を向けられていたのである。その後、犯人は別の人物だと判明するのだが、この日の談志はマクラで「あれ、なんとか犯人に仕立て上げようじゃねえか」とネタにしていたのである。そして、それを聞いていた観客は、何の躊躇もなく文字通り爆笑している。

なんとも奇妙な話ではないか。横田某にしても、「丸坊主」にしても、まったく無実の人間であることには違いないのに、それぞれ切り口が違っているとはいえ、観客の反応もまるで違ってしまうのだ。同様に罪のない人間をネタにしても、その時その時の時代の流れによって、良しとされることもあれば、悪しとされることもあるということだ。それはまさに「笑い」というあやふやで危うい概念を実感させられた瞬間であった。

……という記憶が、某茂木健一郎の話について考えている最中に甦った。関連性があるかどうかは、知ったことではない。勝手にしやがれ

「サンドウィッチマンライブツアー2016」(2017年3月29日)

2016年8月から10月にかけて全国10ヶ所を巡ったライブツアーより、9月17日に開催された札幌公演の模様を収録。

2016年3月26日に開通した北海道新幹線。当時、その開業を報せる広告ポスターにサンドウィッチマンが採用されたことが、少なからず話題となった。それぞれエメラルドグリーンとパープルのコートを着た二人が楽しそうに各地を巡っている姿が、とても微笑ましかったからだ。それはまさに、友人や家族とはまた一線を画す、他の介入を許さない“相方”の距離感が生み出した愛おしい瞬間だった。当人たちもこの広告を気に入ったのか、本編のオープニングは「広告の二人」が担当している。観光地ではしゃいでいる二人は、広告で見せたような親密な距離感を感じさせることはなかったが、実になんとも楽しそうであった。……無論、ライブ本編ではいつものサンドウィッチマンが登場し、いつものようにネタをやっているわけだが。

前回の公演では非常に手堅いネタを披露していたサンドウィッチマンだが、本作でも確実で揺るぎない笑いを見せている。例えば、お見合い写真の撮影にやってきた伊達が、富澤扮する某戦場カメラマン風のカメラマンの言動に翻弄されるオープニングコント『写真館』は、彼ららしさが前面に表れたコントだ。「カメラ」を「キャメラ」と言ったり、写真撮影にタイマー機能を利用したり、ポーズを取っているのになかなかシャッターを下ろさなかったり……悪意を感じさせない天然だからこそ滲み出るタチの悪いボケの連打が非常に面白い。全体を通して悪ふざけが過ぎる印象を受けた『蜂の巣駆除』、M-1優勝前のサディスティックでブラックな笑いを演じていた時代のサンドウィッチマンがほのかに感じられた『保育園』も、それぞれ非常に面白かった。

しかし、やはり漫才の安定感は抜群だ。サンドウィッチマンライブの常連客として知られる小島さんイジりで幕を開ける『漫才(服屋)』は、Tシャツを買いに来た伊達が富澤演じる店員の慇懃無礼な態度に転がされる漫才コント。ちょっとした隙間を埋めるように、次から次へと繰り出されるボケとツッコミの応酬がたまらない。それでいて、「“人間山脈”アンドレ・ザ・ジャイアント仕様じゃねえか!」という一部にしか届かないであろうキラーワードをしれっと潜ませる場面も。大衆向けの漫才を作っているようでいて、こういった個を感じさせるワードを忘れないところが、彼らの良さである。オーラスの『漫才(犬の散歩)』も素晴らしい。犬を散歩させている伊達に富澤演じる通りすがりの人が話しかけてくる……という、自由度の高いシチュエーションであるが故に難しい設定を見事に乗りこなしている。浅く広い笑い、狭く深い笑い、両方を見せてくれた。

これらの本編に加え、特典映像として幕間映像やツアーのメイキング映像などを収録。テレビや映画でお馴染みのスターたちが富澤の出題するご当地クイズで競い合う「スター対抗!日本全国ご当地クイズスペシャル!!」、単独では定番となっている伊達がボケ役を演じるコントシリーズの是非が問われる「本当に必要?男シリーズ徹底討論!」、今回の単独ライブのチラシが某芸人によってパクられたのではないか問題を当事者を迎えて検証する「振り返りトークライブ」など、充実した内容となっている。その中でも驚いたのが、「サンドウィッチマンライブツアー2016 うちわコレクション」。ファンが持参した自作のうちわを振っている姿が、伊達による謎のオリジナルソングとともに淡々と流されていく。このファンからの愛を受け止める懐の広さ、優しさ。毎年、彼らが欠かさず、全国ツアーを敢行している理由が分かったような気がした。

ちなみに、表記されてはいないが、本編ではもう一本だけネタが披露されている。それがどのようなネタなのかは、実際に確認していただきたい。内容については触れられないが……北海道新幹線の広告ポスターが好きだったなら、見て損はないかもしれない。

■本編【61分】

「写真館」「漫才(服屋)」「蜂の巣駆除」「保育園」「漫才(犬の散歩)」

■特典映像【90分】

「スター対抗!日本全国ご当地クイズスペシャル!!」「本当に必要?男シリーズ徹底討論!」「ラジオ(ラジオDJ)」「ラジオ(老舗和菓子店)」「サンドウィッチマンライブツアー2016 うちわコレクション」「振り返りトークライブ」「ツアーメイキング」

「番組バカリズム3」(2015年11月25日)

番組バカリズム3 [DVD]

番組バカリズム3 [DVD]

 

2015年3月20日BSプレミアムで放送されたバラエティ番組「番組バカリズム3」を収録。バカリズムがこれまでにライブで演じてきたパフォーマンスの再演に加え、豪華ゲストを迎えた撮り下ろし映像を収録した、充実の内容となっている。演出は「戦国鳥獣戯画 乙」「住住」「架空OL日記」などの話題作を手掛けている住田崇が担当。その他、オークラ(脚本)、カンケ(音楽)、ニイルセン(イラスト)など、過去二回の番組制作にも関わってきたクリエイターたちが参加している。

演じられているコントは全六本。過去の放送回のボリュームを思うとやや少なめに感じられるが、それぞれじっくりと時間をかけた味わいある作品に仕上げられている。

若林正恭(オードリー)をゲストに招いた『TAKE-2』は、ドキュメンタリー番組の撮影が入ることになってテンションが上がってしまったスーパーの店長が、万引き主婦と店員のやり取りをテレビ受けするように演出するコント。視聴率を取れると判断されるような演出を考案する店長(バカリズム)もさることながら、ツッコミを入れつつもしっかり店長に巻き込まれてしまう店員(若林)がいい。日ごろ、春日俊彰という怪人を相手にしているだけあって、実に適切な態度を見せている。

一般の素人がテレビ的なるものに呑み込まれていく展開から、おそらくこのコントは『万引きGメンターテイメント』(テレビの密着取材が入っているのに万引き犯罪がまったく起こらないことに焦りを感じた万引きGメンが、一般客を万引き犯を仕立て上げてしまうコント。『バカリズムライブ「キックオフ!」』収録)をモチーフとしているのだろう。だが、徹底的に不条理な展開にすることでバカリズムが一人でボケを背負い込んでいた『万引きGメンターテイメント』に対し、『TAKE-2』は若林という受け手が存在することで、かなり見やすくなっていたように思う。

ピンとコンビの違いといえば、様々な角度から歴史上の出来事を考察する歴史番組において、バカリズム演じる大学教授が「“本能寺の変”をどっきり特番とした場合においける当日の収録スケジュール」について解説する映像コント『考える歴史』でも同様のことを感じた。元ネタは『バカリズムライブ番外編「バカリズム案7」』で披露された『歴史に関する案』である。元ネタでは、バカリズムが客席に向かって一方的に先述の解説を行うのだが、『考える歴史』では相手役としての伊藤綾子を配置することで、より重層的な笑いを生み出している。……というわけで、従来はボケもツッコミもそれ以外も全て一人で処理しなくてはならない、ピン芸人の立ち位置の難しさについて考えさせられてしまった。大変だな。

個人的に一番好きだったコントは、オーラスの『田口の恩返し』。一人暮らしの男の家に、何の前触れもなく美女(菜々緒)がやってくる。実は彼女の正体は、男が数日前に財布を拾って交番に届けてあげた中年男・田口だった。田口は美女に変身し、男の元を訪れたのである……。有名な童話「鶴の恩返し」を人間に置き換えたコント。人間(中年男)が人間(美女)に化けるという設定がとても異常に感じられるが、それでは鶴が女に化けて恩返しにやってくるというオリジナルの展開はどうなるのだということになる。この隙を突いてくる感じがとてもいい。ただ、なにより私が気に入っているのは、オチの描写だ。あまり細かいことは書けないが、とても鮮やかだが不思議な後味も残るオチとなっている。是非、ご確認いただきたい。

これら本編に加えて、本作にはバカリズム自身による副音声コメンタリーも収録されている。基本的にはコントで共演した芸人・役者たちについての話を展開しているのだが、唯一の舞台コント『女子と女子』のコメンタリーに入ると、途端に空気が変わる。なんと、あのシニカルなイメージの強いバカリズムが、かなりマジメなトーンで『女子と女子』が生み出された経緯について細かく語り始めるのである。当時、「ENGEIグランドスラム」(2015年5月30日放送)でこのコントを披露し、「女子への恨みが滲み出ている」云々と言われたことが、よっぽど本人にとって心外だったのだろう。クリエイターとしてのプライドが剥き出しになった、とても珍しいワンシーンだった。

……ところで、『番組バカリズム4』はもうやらないのだろうか。今や脚本家としても多忙を極めるバカリズムには、もはやこういった番組を手掛ける余裕は無いのかもしれないが……忘れた頃に戻ってきてもらいたいものである。

■本編【59分】

「TAKE-2」「歌う人生劇場」「女子と女子」「烈火の如く」「考える歴史」「田口の恩返し」

■特典

バカリズムによる音声解説

「ENGEIグランドスラム」(2017年5月6日)

中川家「漫才:新幹線」

陣内智則「コント:カラオケ」

COWCOW「うたの鬼ぃさん」

かまいたち「コント:受験」

ペナルティ「コント:ヒゲグリア」

U字工事「漫才:田舎への移住」

ゆりやんレトリィバァ「落ち着いていきや~」

バイきんぐ「コント:オーダー」

キャイ~ン「コント:ものまね芸人 鈴木三郎」

ミキ「漫才(寝かせたカレー)」

パンクブーブー「漫才:お化け屋敷」

銀シャリ「漫才:ハンバーグカレーライス」

アキラ100%「コント:まるごし刑事」

NON STYLE「漫才:ヒーローに変身」

スピードワゴン「漫才:四季 折々の恋」

トレンディエンジェル「漫才(アメリカ・飛行機に乗る)」

博多華丸・大吉「漫才:ミステリーハンター

友近×ロバート秋山「コント:夫婦タクシー」

柳原可奈子「コント:自称毒舌サバサバ女」

和牛「漫才:彼女の手料理」

ナイツ「漫才(ピンク)」

アンジャッシュ「コント:チカン裁判」

吉本新喜劇ユニット「座禅」

月亭方正「落語:天国か地獄か」

ウーマンラッシュアワー「漫才:ファンクラブ」

東京03「コント:角田の紹介」

シソンヌ「コント:ボクシング」

しずる「コント:立てこもり」

ダイアン「漫才:ひとりカラオケ」

爆笑問題「漫才(北朝鮮のミサイル、意識高い系、坂口杏里)」

フジテレビが誇る演芸番組の第八弾。司会はナインティナイン松岡茉優。初登場は、アキラ100%(「R-1ぐらんぷり2017」王者)、かまいたち、しずる、ダイアン、月亭方正友近ロバート秋山、ペナルティ、U字工事ゆりやんレトリィバァ。落語家の出演は、第二回放送に登場した桂三度、第六回放送に登場した三遊亭圓楽に続く三人目となる。

純粋にネタが面白かったのはスピードワゴン。小沢の妄想世界に井戸田が入り込んでしまう展開は、表現の自由度が高い漫才ならではの手法といえるだろう。その時、井戸田のファンだという妄想世界の住人が、ちゃんとファンとして井戸田に接していたのが、なんとも可笑しかった。こういうディティールの細かいところ、好きだ。そこから、「好きになった女がたまたま女優だったーっ!」という叫び、そして「あまーい!」「ハンバーグ!」と何故か井戸田のこれまでの芸能活動が一気に集約されていく謎の大団円的展開に、ちょっとだけグッときてしまったり。妄想と現実が合致した、スピードワゴンにしか出来ない見事な漫才だった。

その他、印象に残っているのは、例の一件を完全に井上のイジりネタの一つとして昇華させていたNON STYLE、タクシーという閉鎖的な空間の中で夫婦という濃密な関係性から生まれる狂気を押し付けられるというヤバすぎるシチュエーションをキャラクター演技で笑いに変えていた友近×ロバート秋山。まだまだ鮮度の落ちていないニュースを臆することなくネタに取り込むというアグレッシブな姿勢がたまらなかったウーマンラッシュアワー、池田の最高な演技をまざまざと見せつけたしずるも良かった。

でも、一番記憶に残ったのは、月亭方正の高座。見た目も話の内容も完全にタレントの山崎邦正なのに、語り口が完全に落語家のそれだった。しかも、演じたネタが、あの世を舞台とした新作落語である。上方落語の、それも米朝門下という立場から、あの世を舞台に時事ネタが飛び交う落語を演じるという行為の重みは、落語ファンであれば誰でも理解できるところであろう。正直、オチはちょっとしっくりこなかったが、実になんとも凄かった。

ところで、エンドロール中に、西村瑞樹(バイきんぐ)が目の腫れについてスタッフから質問されているところが映し出されたのは、何か意図があってのことだったのだろうか。いや、別に、どうでもいいことなんだけど。

死んだら飛び乗れ!『Hell Train』

いやー、申し訳ない。このところすっかり音楽脳なもので、お笑い芸人のDVDよりも動画サイトで面白い音楽を探してばかりの日々である。で、今更ながらハマッてしまったのが、こちらのstillichimiya。最初にハマッたのは、Twitterのタイムラインを流れてきた『ズンドコ節』だったのだが、今ではこっちばっかり聴いている。ご陽気なメロディで地獄が歌われている様が、なんだか古典落語の『地獄八景亡者戯』を彷彿とさせる。またリリックがたまらない。どれがどういいというのではなく、それぞれがそれぞれのリリックを駆使していて、固まりになって「地獄」が投げつけられてくる感じがとてもいい。それでいて最後は「ピャーン」である。なんだ「ピャーン」って。あんだけ攻撃的なリリックをかましておきながら、最後は「ピャーン」って。このバランス感もまた実にいい。その楽曲世界を完璧に近いカタチで表現しているプロモーションビデオも実にいい。いいとこ尽くしだ!

死んだらどうなる

死んだらどうなる

 

現在、こちらのアルバムを注文中。待ち遠しい。待ち遠しい。

踊る黄金週間(2017年5月3日~6日)の記録

【5月3日(水)】

午前六時半起床。もろもろの準備を済ませ、車で家を出る。途中、コンビニに立ち寄り、期間限定で安価になっていたおにぎりを三個食べる。宇多津駅付近の駐車場に車を停め、午前9時ごろ出発の電車に乗り込む。坂出駅で快速電車に乗り換えて、岡山方面へ。ゴールデンウィークということもあって、車内は激しく混雑しており、随分と身体を押されて腰を痛めるのではないかと不安を覚えた。午前10時に岡山駅へ到着。「イオンモール岡山」へ移動し、楽器を物色したり、フードコートで「豚蒲焼専門店 かばくろ」のぶたかば重を食べる。美味い。食後、「天満屋」へと向かい、中四国・九州の中古CDショップが出店している中古市を物色する。土岐麻子VOICE ~WORKS BEST~』を購入。店を出て、何かしらかのイベントで賑わっている商店街を抜け、以前よりTwitterでフォローしている資本主義氏と待ち合わせ。「串揚 山留」に入る。串揚げセットを食べる。味は良いのだが、かしこまった雰囲気が少し苦手である。その後、二人で公文庫カフェへ。割とプライベートな話やら私の自己顕示欲についての話やら(てれびのスキマ氏の文章は製品としてお店に出せるが、私の文章は業者向けの素材みたいだという指摘に「その通り!」と膝を打った)をした結果、精神的にやや疲弊する。午後2時半ごろに別れ、「シネマ・クレール」へ。映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』を鑑賞する。四時間に渡る超大作のため、終盤あたりで尻が限界を迎えた。ただ、映画そのものは、とてつもなくハードでタフだった。午後6時半、映画館を出て、「一風堂」でラーメンを食べながら、本場福岡に思いを馳せる。食後、岡山駅に向かい、午後8時ごろ出発の電車で坂出を経由して宇多津駅へと戻る。午後10時帰宅。「水曜日のダウンタウン」を見る。完全に地獄の軍団に見つかってしまった西村瑞樹(バイきんぐ)のサイコぶりに笑いが止まらない。強めの缶チューハイを買い込んでいたので、それを呑みながら、寝る。

 

【5月4日(木)】

午前八時半ごろ、電話の着信音で目を覚ます。電話の主は、今日は遠方まで出掛けている筈の家族からで、途中で車のタイヤがパンクしたから、修理に時間がかかりそうなので迎えに来てほしいとの旨。まだアルコールの抜けていない頭で出かける準備をしていると、再度電話がかかってきて、思ったよりも早く修理が済んだから、もう来なくて良いと言われる。電話を切り、直後に「なんやそれ!!!」と叫ぶ。この日は家で作業する予定だったのだが、早い時間に起こされたことと晴天なことが頭の中で合体し、週末に予定していた高知へのドライブを敢行することに。もろもろの準備を済ませ、午前十時に車に乗って家を出る。途中、近場のうどん屋へ立ち寄り、遅めの朝食を済ませる。この時、高知県の天候を確認すると【曇りのち雨】と表示され、少しだけ不安が募る。高速道路に入ると、とてつもない渋滞に遭遇する。とはいえ、愛媛県を貫く松山自動車道高知県を貫く高知自動車道の分岐点である川之江ジャンクションを抜ければ、また状況が変わってくるだろう……と想像していたのだが、高知自動車道に入っても変わらず渋滞は続く。やはりゴールデンウィーク中に近場へ出かけるのは正しい判断ではなかったな、と改めて反省する。

そのまま車は南下して、土佐インターチェンジで降りる。以前、車で高知県を訪れたときに見かけたウクレレショップがこの近辺にあった記憶があったからなのだが、今回は見つけられず。もしやあれはマボロシだったのであろうか。そのまま車は高知市内にあるひろめ市場を目指す。しかし、観光スポットとしても名高いひろめ市場近郊の駐車場は、どこもかしこも満車で停めることが出来ない。仕方がないので、ひろめ市場から幾らか離れた愛宕町の有料駐車場に停車する。歩いて数分、満を持してひろめ市場に入るが、あまりの人の多さに戸惑う。普段から数多くの人が出入りしているスポットではあるのだが、それにしても多い。とりあえず大好きな「吉岡精肉店」の唐揚げを購入する。バジル風味の唐揚げがとんでもなく美味しいのである。かつおのたたきも頂きたかったが、この人の数ではどうにもこうにも出来ず、早々に諦めて撤退。その足で「金高堂」へ移動、『ご本、出しときますね?』を購入する。番組本とは思えない分厚さに、「佐久間宣行(プロデューサー)、バカじゃないの?」と嬉しさと驚きの入り混じった感情から無礼なことを口走る。本と唐揚げをカバンに突っ込んだまま「製麺処 蔵木」でつけ麺を食べる。名物という牛モツつけ麺が思ったよりも美味かった。食後、「イオンモール高知」へ移動。何か面白そうなモノはないかと立ち寄ったが、特に見つからず。そのまま車を南国まで走らせ、道の駅に立ち寄る。お土産物になりそうな物を探し、なんだかんだでにんにく入りノンオイル梅ドレッシングを購入。南国インターチェンジから高速道に入り、何処へ立ち寄るでもなく午後六時ごろに帰宅。「くりぃむナントカ」(AbemaTV)、「おげんさんといっしょ」(NHK総合)、「クレイジージャーニー」(TBS)を見て、寝る。

 

【5月5日(金)】

午前十時半起床。郵送しなくてはならない文書があったので、出社して文書をまとめる。それを封筒に入れ、郵便局へと持っていき、ゆうゆう窓口で受け取ってもらう。途中、電器屋に立ち寄り、DVDをパッケージごと収納できるケースを探すのだが見つからず。スーパーに立ち寄り、家族に頼まれたチマキを購入。うどん屋で朝食兼昼食。帰宅後、部屋の掃除を始める。長年に渡って手つかずのままにしていたため、すっかり黴まみれになっていた窓周辺を雑巾で拭き掃除。BGM代わりにテレビで『ハリガネロック in 渋公爆発ロック』を垂れ流す。リリースされた当時は、「爆笑オンエアバトル」チャンピオンの単独公演ということもあって妙にハードルを上げて視聴してしまったのだが、そういった思い入れから脱却した今、フラットな姿勢で見るとごく普通に面白い。一枚観終わっても、掃除が終わらなかったので、続けて『風立ちぬ』を観る。飛行機、美少女、情熱たぎる技術者たち等等、宮崎駿の集大成と呼ぶに相応しい名作ぶりを再認識。途中、ブログを更新。最近よく聴いている土岐麻子の『PINK』について、軽めに。窓を拭いている間に日が暮れてしまったので、切り上げる。夕飯を終え、配信版「勇者ああああ」を見ながらだらだらと時間を過ごしているうちに、うっかり居眠りを始めてしまい、午後十時ごろに目が覚める。風呂に入り、『孤独のグルメ』を見る。井之頭五郎、回転寿司を訪れるの巻。二人で一万六千八百円分も食べた客が登場し、大いに驚く。続けて、なんとなく録画した『わらたまドッカ~ン!』を視聴。子どもを相手にした際の対応の変化がちょっとだけ面白い。先週の『オードリーのオールナイトニッポン』を聴きながら、寝る。

 

【5月6日(土)】

午前六時半起床。フォロワーさんから加藤一二三特集の『ノーナレ』再放送情報を頂き、即座に録画予約する。合わせて『ENGEIグランドスラム』も予約する。この日も部屋の掃除。午前中は雑誌を処分する。以前、購読していたコミックビームをビニール紐で縛り、部屋の外へと放り出していく(ちなみに今は電子書籍版を購入している)。しかし、奈良佳子(一時期同誌に読み切りを掲載していた漫画家)の作品が掲載された号を取っておいたはずなのに見つからず、首をひねる。うっかり処分してしまったか、或いは、違うところに除けてあるのか。途中、DVDを収納できるケースを探しに、ちょっとだけ遠めの電器屋へ出かける。無事に三十枚入りの目標物を発見したので、これを購入して戻る。『ゴッドタン(松丸代打オーディション)』やテレビゲームのTAS動画を見ながら、せっせせっせとケースの入れ替え作業を続ける。しかし、案の定すぐに足りなくなる。amazonで同製品を百五十枚分注文、残りは届いてから作業することに決める。暗くなってきたところで夕飯。風呂に入ってから、先週の『モヤモヤさまぁ~ず2』を延々と見続ける。三時間半スペシャルで過去の女子アナが大集合。改めて、初代・大江アナの太平洋のような雄大さ、二代目・狩野アナの存在感の大きさに気付かされる。途中で停止し『さんまのお笑い向上委員会』。向上ゲストに古坂大魔王、向上委員にテツandトモアキラ100%、モニター横にかねきよ勝則(新宿カウボーイ)という素晴らしい布陣。しかし、鬱陶しいほどに説明過多な演出がトークのテンポを妨げていて、非常に残念。放送開始時には、もっと引きの美学を理解した番組だったように思うのだが。宜しくない。再びゲーム動画を見て時間を潰し、『オードリーのオールナイトニッポン』を聴きながら就寝。若林が、近日中に発売される新しい本の宣伝に使われている写真について、ボヤいていたのが面白かった。

 

【5月7日(日)】

午前八時半起床。ニコニコ動画で配信版『ゴッドタン』を見る。第7回コンビ愛確かめ選手権。ゲストはロバート、アルコ&ピースメイプル超合金カズレーザーが語る安藤なつのエピソードがいちいち面白い。川谷絵音が出演する『ワイドナショー』を録画予約。『孤独のグルメ』の記憶が頭にこびりついていたので、スシローへ寿司を食べに行く。朝食兼昼食という塩梅の時間帯だったとはいえ、二十皿は食べ過ぎた。食後、大型スーパーへ立ち寄り、ポロシャツを探してみるが中年向けの雰囲気がみなぎっているものしか見つからず、結果的にパーカー付きのTシャツを二枚買う。本来、肌着などを着ずに着るべきなのだろうが、Tシャツ一枚だけだとお腹を下すことが想像に難くないので、上から腹回りを包み込むベスト的な何かを買いたい。帰宅後、「連休をどう過ごすべきか?」という旨のツイキャスを敢行するも、六人しか訪問せず。夕刻に昼寝を決め込むも、外へ出かけていた姪っ子に起こされ、二人でオセロをする。『ちびまる子ちゃん』を見ながら夕食。人類が増えたときの食糧難に備え、まる子たちが野草集めに奔走する……という話に、311以降のメッセージを感じたような気がした。続けて『サザエさん』。休みの日に子どもからも大人からも誘われるマスオの優しさを取り上げたエピソードに、平日も早めに帰ることが出来る時代だからこそ出来る休日の過ごし方だな……などと思う。『モヤモヤさまぁ~ず2』は浅草橋と先週の特番の未公開映像。チャンネルを替えると、ちょうどロシア人女性に夜の三冠王がお尻を棒のようなもので叩かれているシーンで、どういうお店だったのかが凄く気になる。番組終了後、またゲーム動画を視聴する。……疲れているのかもしれない。風呂に入り、この記事を仕上げて、連休も間もなく終わりである。