白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「第18回 東京03単独公演「明日の風に吹かれないで」」(2017年2月22日)

2016年7月から10月にかけて、全国15ヵ所(全33公演)を巡った単独ツアーより最終公演の模様を収録。結成十五周年を目前に控え、もはや円熟の粋に達している東京03の安定したパフォーマンスを楽しむことが出来る。結婚式の最中に花嫁を奪われてしまうという悲劇を笑いに変えようともがき苦しむ元新郎の姿を描いたオープニングコント『新郎と友人』、平社員の提案を突っぱねた主任が部長のまったく同じ内容の提案をあっさりと受け入れてしまうダブルスタンダードな態度を言及される……かと思いきや……『同意見』、漫画家になる夢を諦めて実家に帰ろうとしているのになかなか電車が来てくれない男が最後に残そうとした言葉にアシスタント仲間たちの批判が飛び交う『夢破れて』など、人間の見栄や建前などが複雑にこんがらがった状況を巧みに笑いへと昇華させている。

その中でも『蓄積』の展開には驚かされた。自宅でタコ焼きパーティを開く準備をしていた飯塚だったが、買い出しに出かけた角田はまったくケータイに出ようとしないし、ゆったりと遅れてやってきた豊本は「銀だこ」を買ってきてしまうし、誰もきちんとやってくれない。とうとう我慢の限界に達した飯塚は戻ってきた角田のことをビンタした挙句、突っ伏して号泣してしまう。豊本の証言から状況を把握した角田は、自分に手をあげた飯塚のことを言及し始める。しかし飯塚は「今日だけじゃない! 長年の蓄積だよ!!!」とこれまでにもさんざん苦労させられてきたことを訴え、二人に対して“怒りの蓄積”を理由に更なる暴力に打って出る……。共感せざるを得ない状況から巻き起こる不条理な展開に、笑いが止まらない。随所に見受けられるアドリブも最高だ。だが、なによりも目を見張ったのは、さんざん暴れ回った飯塚に角田が終盤で言い放つ、とんでもない台詞である。本当にとんでもない台詞なのだが、まったく理解できないわけではないニュアンスなところが、実に恐ろしい。なるほど、逆の立場からしてみれば、そのように捉えられなくもない。……だが、それでもやはり、とんでもない。

毎回、完成度にムラがあるオークラ担当の長尺コント『海の見えた家で』も、今回は上々の出来。会社を辞めて田舎にマンションを買ったという角田に、「海の見える家を買ったから、来いよ!」と誘われた飯塚と豊本の二人。ところが、わざわざ東京から二時間かけてやって来た二人が目の当たりにしたのは、海が見えていた筈の景色を塞いでいる工事中のマンションだった。それなのに角田は、まるで今でも家から海が見え続けているかのように振る舞おうとするので、その姿に飯塚は段々と恐怖心を抱き始める。これまでの東京03が長尺コントで見せていたような、複雑な三角関係が織り成すナンセンスな人間ドラマとは違い、うっすらと緊張感溢れる空気が漂う様がたまらない。普段はコメディアンとして着実に笑いを生み出している角田さえ、その本音をブチ撒ける場面で錯乱する姿は完全にシリアルキラーのそれであった(なのに笑えるところが角田のどうしようもないほどにコメディアンたるところ)。御都合主義的なキャラクターに仕立て上げられた豊本の扱いを惜しいと感じなくもなかったが、後味の悪くないスッキリとした秀作だった。……次の公演では、きっと豊本もイジられる対象になるのだろう。楽しみである。

これらの本編に加え、特典映像として10月7日から9日にかけて開催された東京での追加公演(全五回)の終演後に行われた“おまけ公演”の模様が収録されている。今回のおまけ公演は「千秋楽までに「東京03っぽくない」新作コントを一本完成させる」という企画モノ。三人が一本のコントを完成させるまでの行程を舞台上で再現しようという試みである。とはいえ、そこは芸人がやることなので、マジメなドキュメンタリーのようには進まない。飯塚と角田がファミレスでネタを考えている姿を再現している隣で豊本が自宅で愛犬と戯れている様子を再現したり、オークラが考えてきたネタ案を読みながら本気のトーンで笑い合ったり、豊本が過去にイベントのために書いたという台本を演じてみたり、素の状態に近い彼らの和気藹々とした姿を楽しむことが出来る。ショートネタブーム時に作った短い歌ネタ、飯塚の結婚式の披露宴で角田が熱唱したマジ歌など、彼らの歴史を感じさせられるワンシーンもあり、03ファンには垂涎の内容といえるだろう。角田とオークラによって語られる音楽担当・カンケとのエピソードも素晴らしい。

これまで数々の名作を世に送り出してきた東京03による、紛うことなき「最高傑作」である。是非、ご賞味を。

■本編【108分】

「キャスト紹介「明日のリコーダー」」「新郎と友人」「オープニング曲「明日は風が吹くみたい」」「同意見」「どこにでもある昔話」「夢破れて」「新設定」「後継者」「Life Of Many Colors」「蓄積」「チクセキマン 結婚式での出来事」「プロポーズの返事」「約束しよう。」「海の見えた家で」「エンディング曲「僕等が留まっている理由」」

■特典映像【87分】

「明日の風に吹かれないで」特別追加公演「愛を歌うミュージシャンの葛藤」

■音声特典

東京03によるコメンタリー(特典のみオークラが参加)」

では、また。シティボーイズ。

あまりに興奮し過ぎて、卒倒するかと思った。

興奮せざるを得ない要素が多いので、一つずつ解説する。

記事でも触れられているように、シティボーイズがライブを開催するのは、2015年6月に東京グローブ座で行われた『シティボーイズ ファイナル Part.1「燃えるゴミ」』以来、およそ二年ぶりとなる。二年という期間だけを見ると、「復活」という表現は些か大仰なのではないかと思われるかもしれない。ただ、この二年前に行われたライブが、単なるライブではなかった。当時の彼らはライブの“終了”を考えていたのである。ライブのDVDがリリースされた際に三人が受けたインタビュー記事を読むと、その頃の三人の心境がよく分かる。メンバーの大竹まことが「ただ衰えていく姿を晒すだけじゃ老害」「老いて情けない姿を見てお客さんが喜ぶとはあまり思えない」と老いによる身体の変化について悲観的に語っている姿を見せられたら、「ファイナル」の隣に冗談のように添えつけられた「Part.1」に僅かの希望を感じつつも、次のライブは有り得ないと考えても仕方がないことだろう。それが、まさかの復活である。いやほい。

記事中では「これまでもシティボーイズライブを手がけてきた三木聡が作、演出、構成を担当」と、あまりにもさらりと触れられているが、実はこれもとんでもない話なのである。というのも、三木聡シティボーイズライブの演出を担当していたのは、今から十七年も前のことだからだ。「これまでも」という一言で処理されるような長さではない。しかも、三木聡といえば、シティボーイズファンの間でも人気の高い公演を数多く手掛けてきた作家である。この十七年の間、数々の作家たちがシティボーイズの舞台を手掛けてきたが、今でも「三木聡時代がシティボーイズの最盛期」と語るファンは少なくない。むしろ多い。とりわけ、中村有志いとうせいこうがゲスト出演していた95年~98年の公演は、シティボーイズの黄金期として語り草となっている。

シティボーイズDVD-BOX RETROSPECTIVE-CITYBOYS LIVE! [BOX2]

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その三木聡シティボーイズの舞台に戻ってくるのである。とんでもないことである。無論、当時と同じくらいのパワーを感じられるとは考えていないが、今の彼ら(シティボーイズ三木聡)だからこそ出来る表現を見せてくれるに違いない。

  • ゲストがライス

ある意味、最も興奮したのはこの件である。シティボーイズのライブには、ゲストが呼ばれることも少なくないのだが、これまでに「よしもとクリエイティブ・エージェンシーの芸人」が出演したことは一度もない。そもそも若手芸人が呼ばれること自体、とても珍しいのである。以下、ゲストが頻繁に呼ばれるようになった、2001年以降のゲストをまとめておこう。なお、中村有志に関しては、ゲストといっておきながら毎回参加しているので、割愛する。

01年「ラ ハッスル きのこショー」
いとうせいこう

02年「パパ・センプリチータ」
犬山犬子

03年「NOTA ~恙無き限界ワルツ~」
YOU、五月女ケイ子

04年「だめな人の前をメザシを持って移動中」
チョップリン

05年「メンタル三兄弟の恋」
のろま会(まろま、ほくろちえ、森桃子、仲瀬甲羅、のろまみこ)

06年「マンドラゴラの降る沼」
いとうせいこう銀粉蝶

07年「モーゴの人々」
大森博史、ムロツヨシ

08年「オペレッタ ロータスとピエーレ」
ピエール瀧

09年「そこで黄金のキッス」
細川徹、ふじきみつ彦、春山優

10年「10月突然大豆のごとく」
THE GEESEラバーガール

11年「動かない蟻」
辺見えみり荒川良々

13年「西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を」
いとうせいこう戌井昭人笠木泉

14年「燃えるゴミ」
ゲスト無し

いわゆる若手芸人がゲスト出演した例としては、04年のチョップリン松竹芸能)、10年のTHE GEESE(ASH&Dコーポレーション)とラバーガール人力舎)が挙げられる。ただ、基本的には、俳優業で活躍している人物が選ばれる傾向が強い。シティボーイズ自身が劇団出身であることも影響しているのだろう。だからこそ、新しい公演に若手芸人が、それも芸人の事務所としては最大手であるよしもとの芸人が選ばれたことに、ただただ驚かされた。この仕事の依頼が来たライスも相当に驚いたことだろう。

また、ライスを選ぶというあたりが、実に味わい深い。演劇の度合いが強いシソンヌや、シティボーイズのファンであることを公言しているバッファロー吾郎などではなく、どうして彼らが選ばれたのか、そして誰が彼らを選んだのか(シティボーイズがゲストを選ぶ例も少なくない)、とても気になる。なにより、彼らがシティボーイズとどのようなコントを繰り広げてくれるのかが、気になる。今から楽しみで仕方がない。

……と、以上の理由から、大変に興奮していた私だったのだが、会場がよみうり大手町ホール(東京)、公演日が2017年6月12日~14日(平日)と聞いて、地方民としてひたすらに愕然とするのであった。あーっ、ソフト化されるといいなーっ!

追記。どうやらシティボーイズとライスがそれぞれコントを一本ずつ披露するライブで、いわゆる本公演ではないらしい。うーん、ちょっと残念。とはいえ、三木聡演出のコントをやること、対バン的なポジションにライスを招致したことは事実なので、やっぱりそこは素直に喜んでおこうと思う。わーい。

「だーりんずベストネタ集「カツライブ」」(2017年2月22日)

2017年11月20日にユーロライブで開催されたベストライブの模様を収録。

キングオブコント2016」決勝戦で彼らが披露していたコント『結婚前夜』のイメージがあまりにも強く残っていたため、視聴前は良くも悪くもライブの観客向けなコントを演じているコンビなのでは……と勘繰っていたのだが、いざ本編を鑑賞してみると正真正銘の正統派コント職人だったので驚いた。「娘さんをください」「就職面接」「母親を捨てた父親に実の息子が復讐」などといったオーソドックスなシチュエーションを、決して斜に構えることなく、新しい発想でもって真正面から笑いに変えている。それなのに斬新さを感じさせられないところが素晴らしい。比類なき発想に甘んじることなく、きちんとコントの設定として咀嚼し、更なる笑いへと昇華させている証拠だろう。

特に、その着想の素晴らしさと展開の下らなさに驚かされたのは、『自殺』というコント。自殺の名所から飛び降りようとしている松本をパトロールしている地元住民の小田が止めに入る……と、これまたありがちな設定なのだが、とにかく切り口が衝撃的。それでいて理に適っている。どのように説明してもネタバレになってしまう危険性があるので、ここでは具体的な内容については何も書くことが出来ないが(しいて書けるところを挙げるとすれば、小田の「リストラ、借金、別れ……よくあるパターンだ」という台詞くらいのものだろう)、一度は見ておいたほうがいい必見のコントである。

コントも面白いが、幕間映像も面白い。「緊急検証!だーりんずは自分の事をどれだけわかっているか?」と題し、お互いに相方の自宅を一人で訪れ、部屋のどこかしらかを三ヵ所変化させ、戻ってきた相方が何を変えられたのかを当てるという間違い探しゲームに興じている。シンプルなルールであるが故に、仕掛ける側も探す側もそれぞれに個性が出ていて、とても良い。小田の仕掛けに動揺する松本の姿に、コンビとしての関係性が伺えた。

特典映像は、それぞれのピンネタ『SAMURAI(小田)』『幸せだな(松本)』と、ゲストにマツモトクラブを招いて三人で過去のボツネタを視聴する様子を収録した「ボツネタのコーナー」。「ボツネタのコーナー」は“ボツネタ”という割には今でもさほど問題無く見られるコントが多く、普通にネタとして楽しめた。むしろ、その意味ではピンネタの方が、よほど危うい。あのレベルのネタをどうして映像ソフトに残そうと思ったのか……将来、売れっ子のコント師になるに違いないだーりんずの消せない黒歴史として、語り継がれること必至だろう。芸能界を追放されなければ、の話ではあるのだが。

最後に余談だが、ボケの方が「小田祐一郎」でツッコミの方が「松本りんす」って、見た目と芸名が逆のような気がしてならないのは私だけだろうか。そのチグハグさも、また味か。

 

■本編【66分】

「公園」「娘さんをください」「面接」「刑事」「自殺」「落語」「エージェント」

「復讐」「結婚前夜」+幕間映像「緊急検証!だーりんずは自分の事をどれだけわかっているか?」

 

■特典映像【44分】

【だーりんずピンネタ】

「SAMURAI(小田)」「幸せだな(松本)」

【「カツライブ」エンドトーク

【ボツネタのコーナー(ゲスト:マツモトクラブ)】

「彼女」「騎馬戦」「相席」「結婚前夜 初披露Ver.」

「KAJALLA #2 裸の王様」鑑賞における大阪旅行の記録(2017年4月7日~9日)

【4月7日(金)】

終業後、善通寺インターバスターミナルへと移動。観音寺発なんば行の高速バスが午後7時過ぎ(予定よりやや遅れる)に到着したので、これに乗り込む。道中は録音してあったラジオを聴きながら過ごす。聴いた番組は「東京ポッド許可局」「WE LOVE RADIO! ~山下達郎星野源のラジオ放談~」「古館伊知郎のオールナイトニッポンGOLD」など。しかし、数日前からやや風邪気味だったこともあってか、だんだんと気分が悪くなり始める。原因は空腹にあるのではないかと思い、途中のサービスエリアでサンドイッチを購入、食べてみるも体調は優れずず。

午後11時過ぎ、大阪駅に到着。御堂筋線の電車に乗って、予約したカプセルホテル「アムザ」があるなんば駅へと移動する(そのままバスに乗っていればなんばに行けたではないかと思われるだろうが、当初は梅田のカプセルホテルを予約する予定だったのである)。なんばには数分で到着。夜中とは思えぬ街の賑わいに、心なしか元気になったような気分になる。本来、このままカプセルホテルでチェックインを済ませるべきところだが、本日の体調を考慮するに、恐らく、カプセル内で横になってしまったら、そのまま眠ってしまうであろうことが予想されたので、ここは先に現地で何か食っておこうと思い(食べることしか考えていない)、ホテルの近場にある三田製麺所でつけめんを食べる。もう何度も食べている味だが、相変わらず美味い。

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食後、カプセルホテル「アムザ」へ移動。今回は事前にネット予約をしていたので、細かい手続きをせずにチェックインすることが出来た。荷物をロッカーに押し込み、館内着に着替える。「アムザ」の良いところは、私のように大柄な体型の人間向けの館内着をきちんと用意している点である(チェックイン時にカウンターへ申し出れば大きめの館内着を用意してくれる)。とても有り難い。着替えたら、財布を貴重品ボックスに預けて(暗証番号を入力するタイプのボックスがカウンター横に設置されている)、大浴場へと向かう。カプセル宿泊客用のロッカー(形状は棚に近い)に館内着を放り込み、まずは洗い場へ。垢と疲労感を洗い流しように、タオルで全身を強く擦る。それから湯船に向かう。「アムザ」には、大浴場の他にも、ジェットバス、サウナ風呂、露天風呂などの多種多様な風呂が設置されているので、どんなに客が入っていたとしても、それなりに余裕をもって入れることが出来る。広々とした湯船、それだけでとても嬉しい気持ちになれる。

入浴後、カプセルにて就寝。

 

【4月8日(土)】

午前8時起床。しかし、スマホを片手にカプセルの中でダラダラと過ごしているうちに、午前9時を過ぎる。このままでは午前10時のチェックアウト時間ギリギリまで居かねなかったので、強引に気持ちを切り替え、そそくさと出発の準備を始める。持参したT字カミソリで髭を剃り、館内着とタオルを回収用ボックスに放り込んで、ロッカーの前で服を着替え荷物をまとめる。一人旅ではお馴染みの行程なので、頭がぼんやりとしていても難なくこなすことが出来るようになった。

午前10時、ホテルを出る。空はどんより曇り空……どころか、ぽつぽつと雨が降っていたので、気持ちが萎える。そのままNGK近くにある金龍ラーメンへと向かい、朝食のラーメンを貪る。

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ただでさえ出来の良くないラーメンの味が、更に落ちていたような気がする。

この日は心斎橋のカプセルホテル「朝日プラザ心斎橋」を予約していたので(本当は「アムザ」に連泊するつもりだったのだが、予約しようとした時点で土曜の夜は満室になってしまっていた)、ホテルからほど近い場所にある心斎橋駅(御堂筋線)のコインロッカーにおおよその荷物を預ける。時刻は午前11時。朝食を取って間もないが、コインロッカーの近くにあったてんやで昼食。その日、特別価格の390円で振る舞われた天丼は、きちんと衣がサクサクッとしていて非常に美味しかった。地元にあったら、きっと通っていたに違いない。

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食後、表に出ると雨が上がっていたので、あちらこちらをブラブラと散策する。偶然通りがかったイシバシ楽器を冷やかそうと店内に入ると、なかなか良さそうなコンサート用ウクレレが安値で売られているのを見つけ、少しだけ購入を考える……が、予算の都合で断念。旅行をすると、こういう事態に遭遇することがあるから厄介だ。自宅の近所であれば、間違いなく購入していたのだが……。

その後も街中をウロウロしていると、雨の湿気と疲労感で汗がダラダラと流れ始めたので、これまた通りがかった「雪桜」というかき氷屋へ飛び込む。チョコレートを全体にブチ撒けたようなかき氷を注文、ふわふわとしたミルク100%の氷がとても美味しかった。食事中、店内の雰囲気に少しだけ違和感を覚えたのだが、後で調べてみたところ、どうやらここは韓国系のお店だったらしい。思わぬ文化交流である。

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午後2時、カプセルホテル「朝日プラザ心斎橋」でチェックイン。初めての場所だったため、ホテルに入る際に少しだけ緊張していたのだが、店員のフランクな笑顔についつい心を許してしまう。チェックインを済ませた後、館内着のサイズが気になったので、ロッカーへと向かい、中に入れられたそれを試着してみると、案の定入らない。恥ずかしながら大きめのサイズは無いのかと受付で訊ねてみたところ、浴衣を差し出される。大柄な体型の人間がこれを着たら、それはもう力士のコスプレではあるまいか……と思いながら装着してみるとピッタリと合った。見た目はどうあれ、合えば問題はない。ロッカーには、館内着の他にフェイスタオルが二枚とバスタオルが一枚備え付けられていた。館内の貼り紙によれば、これはあくまでレンタルタオルであって、新しいタオルが必要な場合は売店で購入しなくてはならないとのこと。宿泊費が千円近く違うがフェイスタオル取り放題な「アムザ」との明確な違いをはっきりと感じ取る。一応、カプセルにも入ってみる。布団はやや薄め。床の硬さを身体で感じられる。テレビは小さめ。画質は粗く、誰が映っているのかハッキリと確認できない。色々とグレートがダウンしている感は否めないが、却って味わいがあるといえなくもない。

ホテルを出て、四ツ橋線で梅田駅へと移動。到着してから何をしていたのかは、まったく記憶に残っていない。恐らく、梅田の街の巨大さに翻弄されて、心を奪われていたのだろう。途中、とあるサイトで紹介されていた、ヨドバシカメラの8階にある「ミートラッシュ」でステーキを食べる。見たところ、ジューシーな肉の旨味を感じられる料理だろうと想定していたのだが、予想していたよりも肉の主張が控え目で、やや肩透かし。

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食後、再び記憶を失う。

気が付くと、時刻は午後5時を過ぎていた。本来ならば、もう会場に向かっていなくてはならない頃合いである。しかし、この時点で私は何処に居るのかを完全に把握出来ない、迷子状態であった。これが噂に聞いた梅田ラビリンスか……! 慌ててスマホのナビ機能を立ち上げ、北と南、東と西の向きを勘違いしながら、なんとか会場であるサンケイホールブリーゼに到着したのは午後5時50分ごろのことだった。その後の様子に関しては前記事でまとめたので、そちらを参考にされたし。

午後6時開演。午後8時過ぎ閉演。

閉演後、兵庫県からやってきたイシダドウロ氏と、京都府からやってきたゴハ氏と落ち合い、三人で「フジヤマドラゴン 福島店」へ。さりげないタイミングでニクい相槌を打つイシダ氏、普段は物腰が柔らかいのにお笑いの話になると超早口で持論を展開するゴハ氏との楽しいようなそうでもないようなよくよく考えてみるとやっぱり楽しかったような時間を過ごす。主な話の内容は「後藤秀樹の現状」「関西女性芸人の枠を埋めるのは誰?」「関西に見切りをつけて上京する若手たち」「関西には売れない芸人を記録する演芸おじさんがいない」「神田松之丞はメチャクチャ面白い」「M-1グランプリの審査基準、キングオブコントの審査基準の変化」「コントを観るのに適した会場の大きさ」などなど。午後10時半ごろ、ゴハ氏の終電時刻に差し掛かったため、店を出る。……思えば、2時間の宴会の間に、話題がコロコロと変わり過ぎた気がする。もっと一つの話題に集中して掘り下げていくべきなのかもしれない。……そういった規制がないからこその居酒屋トークともいえるのだが。大阪駅で解散、それぞれ自分たちの棲み処へと戻る。

御堂筋線で心斎橋駅へ移動。コインロッカーから荷物を回収し、「朝日プラザ心斎橋」へ。ホテルのロッカーに荷物と衣服を預け、浴衣を装着し、フェイスタオルとバスタオルを持って大浴場へと向かう。大浴場の手前に鍵付きのロッカーが設置されていたので、そこへ浴衣と先程のロッカーのカギを放り込み、洗い場へと向かう。大浴場、サウナ、ジェットバス……施設としては及第点といったところだろうか。宿泊代を思えば妥当だが、個人的には「アムザ」の方が好きかもしれない。

風呂を出て、そのままカプセルに戻り、就寝。寝る前に喉が乾いたので、自販機でコーラを買って、一気に飲み干した。

 

【4月9日(日)】

午前9時半ごろ起床。チェックアウトの時刻を寝過ごしかねないほど眠り込んでいたことに驚く。

洗面台で髭を剃ろうと思うも、髭剃り用のクリームやアフターウォーターが備え付けられていなかったので諦める。午前10時にチェックアウト。荷物を抱えたまま、なんば方面へと移動する。……ここから先は、このブログでは書けないようなことをしっぽりとやっていたので省略する。どういうことをやっていたのかを知りたい方は、個人的に聞きに来ればいいと思う(話すかどうかは知らん)。

正午、御堂筋線で梅田へ移動。そのまま環状線で親類がやっている福島のラーメン屋へ向かう予定だったのだが、うっかり乗り換えとは反対方向の出口に出てしまう。どうしたものかと考えていたら、大丸梅田店の看板が目に留まる。この日、私は大丸ミュージアムで開催されている「追悼水木しげる ゲゲゲの人生展」を観に行く予定だったので、ならばこちらを先に済ませようと思い、大丸ミュージアムへと向かう。どのような内容だったのか言葉では説明のしようがないのだが、とにかく一度行ってみるといいと断言できるほどには優れた展覧会であった。水木翁のイラスト、写真、映像を堪能させていただいた。出口の物販コーナーでは、これまでに世に出た水木翁の著書やらなにやら、とにかく素晴らしいモノが大量に売り出されていたのだが、そのハクリキに押された私は公式図録のみを購入した。……美術館に行くたびに、なにかしらかの図録を購入している気がしないでもない(京都でサザエさん展を見たときも買ったような……)。

展示会場を出て、時刻を確認してみると、午後2時を過ぎていたので驚く。どれほど作品に見入っていたのだろうか。帰りの高速バスの発車時刻が午後3時なので、これでは福島に行く余裕がない。仕方がないので、今回は諦めることにして、「ルクア」10階にある「どうとんぼり神座 ルクア大阪店」で昼食を取る。チャーシューメンがとても美味しかった。

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食後は、ごく当たり前にお土産物を買い漁り、用便を済ませ、コンビニで飲み物を購入した。その姿、まさしく純然たる観光客そのものである。……そのもの、なのだが。

午後3時、なんば発観音寺着の高速バスが大阪駅を出発する。直後、うっかり待合用の席に、土曜日に購入したビニール傘を忘れていたことに気が付く。大した金額ではなかったし、それほど思い入れもないのだが……なにやら悪いことをしたような気分になる。最後の最後で、なにやらとても哀しい。道中は、つい先日放送されたばかりの「オードリーのオールナイトニッポン」を聴きながら過ごした。スペシャルウィークに、オードリーとは犬猿の仲だという市野瀬瞳(中京テレビアナウンサー)がゲストとして登場すると知り、ニヤニヤが止まらない。梅沢富美男、ビビる大木ときて、市野瀬アナとは……楽しみで仕方がない。

午後7時、善通寺インターバスターミナルに到着。二日ぶりに再会した愛車に乗り込み、なんとなしに丸亀のTSUTAYAへと立ち寄ったところ、矢野顕子+TIN PANのライブアルバムが何故か20%オフという罰当たりな金額で売られていたので、これを購入する。この価値が分からないとは、もはや罪よのう。

午後8時半ごろ帰宅。お疲れさまでした。

「CONTEMANSHIP KAJALLA #2 裸の王様」(2017年4月8日・大阪)

簡単な感想を記録。

“KAJALLA”とはラーメンズ小林賢太郎率いるコントユニットである。演者は毎回変動するようになっており、本公演には「久ヶ沢徹」「竹井亮介」「菅原永二」「辻本耕志」「小林賢太郎」の五人が出演している。竹井と辻本は二回連続の登板だ。小林にとって使い勝手の良い人材なのだろう。

会場はサンケイホールブリーゼ。前回の公演「#1 大人たるもの」と同じところである。オシャレで落ち着いた雰囲気の施設で、観客にもオシャレな人が多い印象を受ける。ロビーには物販コーナーが設置されており、前回の公演を収録したDVD・BD、小林賢太郎の単著、ボールペンなどの公演グッズ、そして前回の公演の上演台本が売られていた。文系の身としては、上演台本は手に入れたい所存だったので、物販コーナーへと続く行列に参加する。なかなかの人数が並んでいたが、スタッフの方が手慣れた態度で客をさばいていたので、さほど待たずに購入することが出来た。

購入後、席へと移動する。一応、指定された席は二階だったのだが、何故か四階へ上がらなくてはならないようだったので(どうやら二階と三階はバルコニー席のための階らしい)、エレベーターを利用した。同じホールの二階席から鑑賞するために、わざわざエレベーターを使わなくてはならないという事態に多少の違和感を覚えるが、恐らく、こういった状況に慣れていないだけである。ちょっと時間的にギリギリになってしまったため、些か慌ただしく着席して周囲の席に座っている人たちに少なからず迷惑をかけてしまった。申し訳ない。

18時開演。

具体的な内容には触れられないが、漠然とした印象として、前回よりもファンタジー寄りになっていたように思えた。否、前回の公演にしても、現実的には有り得ない設定が少なくなかったのだが、今回は明確にファンタジー色が強かった。まあ、そもそもの話、この公演タイトルからして童話をモチーフとしているのだから、当然といえば当然なのかもしれないが。ただ、それがダメというわけではなく、前回とはまた違ったベクトルの面白さがきちんと表現されていたように思う。とはいえ、あのキャラクターの再登場は、どうなのだろう。笑ったのは笑ったのだが、ちょっとファンサービスが過ぎるような気もした。前回の公演を観た限りでは、このライブはこれまでとはまた別の普遍的な笑いを志向しているように感じていただけに、予備知識を要するコントというのはやはり……。まあ、そういった考えを吹き飛ばすくらいに、笑っちゃったんだけれども。うむ。

それと、今回もシチュエーションコントを連発するくだりがあったのは嬉しかった。今回もベーシックな設定だったけれど、彼らが敬愛するコントユニットが得意とするシチュエーションということもあって、少なからず影響を感じた。あと、時たま、菅原さんが某03の某歌い手に見える瞬間があった。キャラ作りの上で、ちょっと参考にしたのだろうか。

エンディングは、アンコールのしつこさもあってか(舞台公演では割とよく見かける光景ではあるが、それにしても多かった!)、最後の最後に出演者たちから一言言ってもらう流れに。基本的にはコントの台詞を上手いこと使い回していくだけだったのだが、久ヶ沢の番になって、「筋肉見せてーっ!」という声が客席からあがると、隣に立っていた辻本が筋肉を見せ、更に小林がズボンを引っ張り上げて脚を見せるという流れが生まれ、やたらとコーフンしてしまった(小林の脚の細さにビックリ)。

なんだかんだで第三弾も楽しみである。あるよね?

「KAJALLA #1「大人たるもの」」(2017年3月15日)

2016年7月から9月にかけて、東京・大阪・横浜・豊橋の四か所で開催されたコントライブを収録。様々な方法でコント表現を模索してきた小林賢太郎による最新の不定形ユニット“KAJALLA”。その第一回公演の模様を収めた本作には、嘘偽りのない至極真っ当で誠実な「大人のコント」が演じられている。

あるモノを買うために並んでいた大人たちが、在庫の有無やバージョンの差異に踊らされるオープニングコント『ならんだ大人たち』、これまでに経験した不幸を埋め合わせる保険「バランス」を契約にやってきた男が、印象的な口癖の男たちからの接客を受ける『しあわせ保険バランス』、子どもたちに甘い飴を分け与える謎の男と甘いと思わせておいて奇妙な味の飴を配っている謎の男が公園で不明瞭な戦いを繰り広げる『味なやつら』、内向的な趣味の男たちが、社交的な友人を通じて苦手な女性と会話する機会を与えられそうになり困惑する『カドマツ君』など、どのネタもシンプルで分かりやすく、それでいて面倒臭さが滲み出ていて、清く正しく「大人のコント」として自立している。とりわけ、とある山小屋で起きた出来事を現在の視点と過去の視点を同時進行に展開するコント『山小屋における同ポジ多重コント』は、過去と現在の人々が入り乱れた小林賢太郎の演出力を堪能できる傑作だ(タイトルも説明もややこしいが、コントそのものは一目瞭然なのでご安心頂きたい)。

ただ、小林賢太郎のコント作家としての表現力が最も反映されていたのは、『頭蓋骨』を皮切りに繰り広げられるシチュエーションコントの数々だろう。「医者と患者」というコントとしては非常にオーソドックスなシチュエーションで統一された一連のネタ群は、その多くが、ちょっとした会話や動作で大きな笑いが生まれていくストロングスタイルになっていて、地味ながらも腹持ちが良い。インパクトよりも質で勝負しているあたり、これもまた「大人のコント」である。特に笑ったのは、安井順平竹井亮介の間に小林賢太郎が割って入る……これはタイトルがネタバレになってしまうところもあるので、どのコントのことを書いているのかは伏せておこう。そのバカバカしさ、下らなさは実際に鑑賞して楽しんでもらいたい。……この直後があのコントというのが、また……揺り戻しが強い……。

ところで、先程からやたらに取り上げている「大人のコント」というワードだが、そもそも「大人のコント」とは何なのか。正直なところ、書いている本人もよく分かっていない。ニュアンスで使っている。もっと掘り下げてしまうと、「大人」とはなんなのか。どういう状態の人間を「大人」と呼べるのか。正しく言語化できる人はいるのか。大きければいいのか。大きい人は大人なのか。では小さい人は大人じゃないのか。そもそも何の大きさの話をしているのか。……考え始めればキリがない。ただ、オープニングコント『ならんだ大人たち』の中で、在庫やバージョン違いに踊らされた小林が店員に訊ねた「あのー、普通のってないんですか? もう、こっから先、十年は変わりませんっていう定番」という台詞が、この勝手に生み出された問題の答えのような気がしないでもない。

「大人のコント」、それは思うに……。

■本編【128分】

「ならんだ大人たち」「しあわせ保険バランス」「味なやつら」「頭蓋骨」「オカルト先生」「もんしん」「BSドラマみたいな男たち」「野生のヤブ医者」「カドマツ君」「山小屋における同ポジ多重コント」「第二成人式」

「笑×演」(2017年3月30日)

芸人がネタを書き役者が演じるバラエティ特番第二弾。

ネタを提供したのは、岩井勇気(ハライチ)、森田哲矢さらば青春の光)、塙宣之(ナイツ)、ニッチェの四組。ネタを演じたのは、迫田孝也池田鉄洋前川泰之木村了不破万作・渡辺哲、西尾まり松井玲奈の八名。二人の役者がユニットを結成し、コンビとしてネタを披露していた。MCは山崎弘也アンタッチャブル)とバカリズム。ちなみに、第一弾は今年の1月5日に放送、石田明NON STYLE)、小峠英二(バイきんぐ)、富澤たけしサンドウィッチマン)、ライスがネタを提供していたらしい。

何年も会っていない友人のタナベに森の中に呼び出された男(池田)が、劇団四季を思わせる全身タイツの猫男(迫田)と遭遇、近況と願望を奇妙なメロディの曲に載せて聞かされる。法則性を認識させてから少しずつ崩していくスタイルは、まさにハライチの漫才そのもの。ただ、もしも迫田が演じている猫男を岩井が演じてみせたとしても、ここまで一定のリズムを保つことは出来なかっただろうし、なにより岩井が猫男に扮しているという背景が主張し過ぎて、ネタの本来の面白さは伝わらないだろう。「当人には出来ないタイプのネタを役者に演じてもらう」という、企画の魅力をきちんと反映したタイプのネタだった。

カフェで原稿を書いている小説家のヒガシノショウゴ(前川)の隣の席にやってきた彼のファンだという男(木村)が、さっき買ったばかりだというヒガシノの小説を速読で次々に読破していく。さらば青春の光の持ちネタ『速読』を思わせる設定だが、内容がまったく違っていたので驚いた。さらばの『速読』は、友人から本当に速読できるのかどうかを疑われている男が、官能小説を速読させられるという下ネタ寄りのコントだった。だが、ここで演じられているコントでは、自身が書き上げてきた小説を速読であっさりと読まれてしまう小説家の複雑な心境が笑いに昇華されている。使っている道具は同じなのに、ここまでまったく違った味わいのコントを完成させてしまう森田の技術力の高さに感心した。

ベテラン役者の二人によるしゃべくり漫才。二人の経歴を取り入れた内容になっていて、如何にもテレビの企画のためにこしらえた漫才という印象を受けた。しかし、それ以上に気になったのは、二人のリズム感の悪さ。いつまで経ってもしっくりこない。ただ、これは二人の演技に問題があるというよりも、むしろ、ナイツの情報をギチギチに詰め込んだ漫才が、如何に彼らの技術でもって成立しているかという証明であるように思う。もしも、他の漫才師が、例えば間をじっくりと使うようなタイプの漫才師がネタを書いていたとすれば、もうちょっとなんとかなっていたかもしれない。こういったズレもまた、企画の魅力である。

遠足が楽しみ過ぎて、三日前から眠れない娘(西尾)に戸惑いを隠せない母親(松井)のコント。事前のVTRで、江上が「マンパワーでなぎ倒していくタイプのコントしか書かない」と語っていたので、どのようなネタが作られたのだろうかと期待していたら、想像していたよりもずっとニッチェのコントだったのでビックリした。西尾が演じる娘も、松井が演じる母親も、キャラクターや言葉遣い、台詞のイントネーションから舞台上での動き方に至るまで、完全にニッチェのコントそのものだ。もはやトレースと言っても過言ではない。それは逆にいえば、ニッチェの個性的なビジュアルが無くても、彼女たちのコントは成立するということになる。それはそれで興味深い事実だ。ニッチェのコントの肝は、むしろ強烈な演技にあるのかもしれない。

番組内では観客投票を実施、ハライチ岩井×迫田孝也池田鉄洋のユニット「鹿児島学園」が優勝した。……どうでもいいけど、【優勝 鹿児島学園】というテロップの甲子園っぽさが、ちょっと面白かった。

なお、「笑×演」は四月からレギュラー放送を開始するらしい。見るかどうかは知らん。

「じわじわチャップリン チャンピオン大会後半戦」(2017年3月25日)

  • イヌコネクション【33】

「自動車学校」。路上教習の時間に遅れてきた生乾木が、教官に謝罪の言葉をかけることなく、ヘラヘラとした態度を取り続ける。感情の起伏が激しい“生乾木”というキョーレツなキャラクターに「平然と嘘をつくが、すぐに嘘であることをバラす」というトリッキーな性格を宿らせることで、絶妙なバランスのキャラクターに昇華させているコント。途中まではかなり面白かったのだが、車に乗り込んだあたりで、なんだか浮ついた空気に。これは憶測に過ぎないが、恐らくこの時、生乾木を演じている杉浦がネタを飛ばしている。だからこそ、戸川のあの強烈な一撃に、あのようなリアルな反応を示したのだろう。それはそれとして、ヤバいキャラクターが自動車教習を受けている姿を見ると、どうもキングオブコメディのことを思い出して仕方がない。よもや意識していたのだろうか。

  • マツモトクラブ【19】

「笑顔」。ラジオの生放送を終えたパーソナリティを出待ちしていたリスナーが、彼のことを許可も得ずにカメラで撮影し始める。設定そのものは面白い。「「チャーハン」と口にするたびに、カメラのシャッターが押される」というナンセンスなボケと、その行動が意味するものの説得力。自撮りの際には「オムライス」と言いながらシャッターを押すくだりもバカバカしくてとても面白かった。ただ、後半の人情ドラマのような展開と、それを裏切る哀愁漂うオチは、彼のコントにしてはあまりにもセオリー通りで、明らかな失速を見せていた。本来、このような安直な手段を取らずに、ちゃんとしたオチを用意できるタイプの芸人という認識だったのだが……実に残念。

  • プラス・マイナス44

「新しいゲーム」。提示されたお題から想定されるイメージを即座に返し合うオリジナルゲーム「イメージでパンパンゲーム」で遊ぶ。理不尽な暴力で始まるという衝撃的なツカミに始まり、兼光のモノマネ芸を挟み込みつつ、オリジナルゲームの枠内でフザケていくスタイルの漫才。『M-1グランプリ2016』の予選で観たネタなので、彼らの自信作なのかもしれないが、やはりリズムを崩していくスタイルがどうも合わない。また、オリジナルゲームそのものに関しても、そこまで興味を引かれない。もとい、むしろ単なる連想ゲームとしてやってくれた方が、もうちょっとネタに入り込めるような気がする。……と、色々と気になるところはあるが、終盤のさかなクンのくだりで笑ってしまった。兼光の演技をしっかりと確認する岩橋の後ろ姿の面白さたるや。

  • ハライチ

「奥さんの料理」。最終回ということで特別に。お馴染みのノリボケ漫才である。奥さんに出されたら困る料理の話をしていた筈が、だんだんと関係無くなっていく。過去に観たことのあるネタだったが、やはり別格に笑えた。「踏みつけた料理」「よく見たらジャージ」「アメリカはキューバ」「俺だけのキューリ」など、想像力をそそられるワードを上手く体現する澤部の表現力をご堪能。それはそれとして、「ここでハライチが漫才をやってもいいのなら、ピースも出るべきだ!」と思うのは私だけだろうか。忙しいから出られないというのは分かるのだが。

 

【今週のふきだまり芸人】

平野ノラ「バブリーな女の決断」

 

次回からは「にちようチャップリン」として日曜午後10時より放送を開始予定。感想を書くかどうかは知らん。